「中古車を買うときは、まずはココを見て、次にココの状態を確認して……」といった情報はたくさん出回っていますが、果たしてそのやり方で本当に「いい感じの中古車」は手に入るのでしょうか? 異色の中古車ジャーナリストがそのあたりの真実を報告します。
「1万時間」中古車を見続けたことで獲得した“霊感”
「中古車の状態を見極める」というのは、言葉にするのは簡単だが、実際に行うのはなかなか難しい。
もしも中古車を店頭でバラバラに分解することが許されるなら、あらかたのことは事前にわかる。だがもちろん、人様の売り物を勝手に分解するわけにもいかないため、「難しい」のだ。
とはいえ筆者の場合は、中古車専門誌の記者として1万時間ぐらいの取材経験を積んだ頃、突如として「霊感」を獲得した。そしてその霊感により、分解せずとも中古車のコンディションをあらかた判断できるようになってしまったのだ。
霊感はその後さらに進化し、獲得から1年後には、その販売店から半径100メートルぐらいの場所に近づいただけで、その店が扱う中古車の質をおおむね見極められようになった。今となっては家から一歩も出ることなく、ネットでその物件の情報を見ただけで「あ、なるほど」とわかるまで発達を遂げている。
ということで、「中古車店めぐりに1万時間を費やすことで霊感を獲得してください。それではさようなら!」と終わりたいところだが、そうもいかないため、筆者が1万時間以上を費やして獲得した霊感=中古車の見極めテクニックを、なるべく運用しやすい形にブレイクダウンしてお伝えしたいと思う。
初心者が「クルマそのもの」を見ても、わかることは少ない?
●霊感その1:クルマそのものより「店」と「人」を見る
中古車情報サイトなどで気になる1台が見つかると、多くの人は、問い合わせフォームやメールなどで「その中古車」についてお店に問い合わせる。
それが、間違いの第一歩だ。
わたしのような霊感保有者は、気になる中古車が見つかったとき、そのクルマではなく「それを販売しているお店や人」のことをまず最初に調べる。具体的には、その中古車情報サイトにある「販売店情報」的なコーナーをくまなく閲覧し、そのうえで、販売店の公式サイトも(あれば)必ず全ページを見る。
その際に何をどう見るのか……というのは職人芸の世界なのだが、ざっくり言うなら以下のような項目だ。
・話や写真、宣伝文句が妙に「大げさ」ではないか?
・写真掲載されている人物の服装に清潔感はあるか?
・「絶対」はあり得ない中古品販売の世界で、「絶対!」「完璧!」みたいなフレーズを多用していないか?
・その他、何かしら違和感はないか?
●霊感その2:お店に電話してみる
霊感その1をクリアしたら、多くの素人は次に、問い合わせフォームや電子メールで販売店に問い合わせを行う。
それが間違いのセカンドステップである。
デジタル時代ゆえ、メールやフォームを使いたくなる気持ちはよくわかる。だが、ここはまだまだ「電話」というクラシックな道具に分がある。電話で相手方の「肉声」を聞いてみるのだ。もちろん、それですべてがわかるわけではないが、メールよりは肉声のほうが、相手の人柄や姿勢のようなものは把握しやすい。
なお、これは絶対ではないのだが、参考として「ダメな店のスタッフは敬語と謙譲語の使い方を間違えている場合が多い」ということは、いちおうお知らせしておく。
●霊感その3:第一印象を重視する
霊感その1と2をクリアした物件と販売店に対しては、アポを取ったうえで現車および実際の販売店スタッフとご対面を果たすわけだが、まずは細部を見るのではなく「全体」をぼんやりと眺め、その際に感じた「第一印象」を頭のどこかにメモっておくようにする。店に対しても中古車そのものに対しても、この第一印象は良くも悪くも当たる場合が多いからだ。
なお、この「霊感その3」は文字どおり霊感というかオカルトであるため、今回はこれ以上の言及を避ける。
●霊感その4:あとは一般的な「中古車チェック」を粛々と行う
実のところを言えば、霊感その3までの行程で7割方の勝負はすでについている。1~3をクリアした中古車は、7割ぐらいの確率で「悪くない中古車」なのだ。
あとはそれを9割まで持っていくため(中古車で10割、つまり100%すべてが事前にわかるとは思わないほうがいい)、あちこちの情報サイトでよく書かれてる「中古車の一般的なチェック方法」に基づいて、各部のコンディションや整備記録簿の内容などを確認していくだけだ。
長くなったため、「中古車の一般的なチェック方法」に対しての伊達心眼流的補足は「また次回」ということにさせていただきたい。とりあえず今回は、「伊達心眼流は内装のコンディションと車内のにおい、あとは“伝票”を重視しています」とだけ申し上げておく。
それではまた、連載をクビにならなければ、次回。