テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第217回は、27日に放送されたフジテレビ系バラエティ特番『爆さまネプナイン』(20:00~)をピックアップする。

今年元日の『第55回新春!爆笑ヒットパレード2022』で初共演を果たした爆笑問題、さまぁ~ず、ネプチューン、ナインティナインが再集結。フジテレビに眠る4組の初々しい映像や衝撃映像をもとにクイズを出題し、トークを繰り広げた。

4組のネームバリューが掛け算のように相乗効果を生んだのか。それとも、ただ大物を集めただけで、足し算にすらならず終わってしまったのか。

  • (左上から時計回りに)爆笑問題、さまぁ~ず、ナインティナイン、ネプチューン

    (左上から時計回りに)爆笑問題、さまぁ~ず、ナインティナイン、ネプチューン

■「心の弱い人しか集まっていない」

オープニングは、「爆笑問題、さまぁ~ず、ネプチューン、ナインティナイン。お笑い界のトップを突き進む4組が奇跡の大集結。30年分の超貴重、爆笑&懐かしい映像からクイズで対決。司会はそんな4組を見て育った、かまいたちとハライチ。二度と放送許可が下りないかもしれない。衝撃映像も今回限りの大放出」というナレーションからスタート。

進行役を務める濱家隆一が「クイズ番組です」と言い切っていたが、それでも番組の柱は、アーカイブ映像だろう。「二度と放送許可が下りない」「今夜限りの大放出」と最大限に上げたハードルを越えられるのか。

4組は「次に登場する芸人のギャグをリレーで見せる」という『夜のヒットスタジオ』形式でスタジオに登場。40代以上にとっては、古き良きフジテレビイズムを感じさせるものであり、若年層にとってもかえって新鮮だったのではないか。

登場からそのままトークタイムに突入。名倉潤、岡村隆史などに話を振られたあと、太田光が「ここには“心の弱い人”しか集まっていない」と話すなど、いきなり息の合った毒気たっぷりのトークで盛り上げた。自由にしゃべっているように見せながら、実は全員がオチに向けて話を進めていける話術は、MC経験の長いベテラン勢をそろえただけのことはある。

最初のVTRは、1998年6月放送の『家族そろってボキャブラ天国』。ネプチューンのホストコントをたっぷり披露しつつ、原田泰造が得意にしていた巴投げも見せていた。2番目は、92年12月の『新しい波』でナインティナインのコント。3番目は、93年4月の『大石恵三』でさまぁ~ずのコント。4番目は、97年6月の『新ボキャブラ天国』で爆笑問題のコントを立て続けに放送。

さらに5番目は、88年12月の『冗談画報II』で見せた爆笑問題のコントだったが、ここで「ネタ披露後のトークで見せた太田の意外な一面とは?」という最初のクイズが出題される。正解は「声が小さすぎる」で、太田は23歳の当時、「芸能界が怖かったんだよ」と話して笑わせた。

■夏菜の足指デコピンを受ける三村

さらに、トークは『大石恵三』の裏番組『電波少年』(日本テレビ系)、後番組の『料理の鉄人』などの懐かしい番組名や、「『ボキャブラ天国』は人気のあるコンビはオチまで長くても許された」などのウワサ話が飛び出すなど、ここでも大盛り上がり。

見かねた濱家が「すいません。クイズやっていいですか? 思い出話に花咲いてるとこ悪いんですけど……」と切り出すなど、9人は「楽しいから、どこまでも続けられる」というムードを醸し出していた。

この「仲良し」「楽しい」というムードは時代に合っている反面、「おじさんたちが昔話で盛り上がっているだけ」「成功した人の自慢話にしか聞こえない」というリスクもある。実際のところ、若年層には響きづらかったのではないか。

6番目は、04年9月の『爆笑問題の楽しい地球』で、太田と田中が熱湯に繰り返し落ちるコントを放送。7番目は、07年1月の『新春かくし芸大会』でネプチューンが中国雑技団の空中パフォーマンス。8番目は、04年7月の『FNS27時間テレビ』で岡村が具志堅用高とガチンコボクシング対決。9番目は、94年7月の『風まかせ 新・諸国漫遊記』で、三村マサカズが濁流に転落。

10番目は、15年5月の『さまぁ~ずのご自慢列島 ジマング』で「三村は何で体を張った?」という2問目のクイズを出題。正解は「夏菜の足指デコピンを額で受ける」だったが、現在なら「ハラスメントだ」「くだらないからやめろ」と批判を受けるのではないか。「7年前はまだこれほどバカバカしいくだりを放送できていたのか」と気づかされるという点で意義を感じさせられてしまう。

ここまで、最初の5本は若かりし日のコント、次の5本は身体を張った姿の映像を放送。ともに、分かりやすく瞬発的な笑いに直結するバランスのいい構成だった。

ただ、ここで唐突に3問目のクイズに突入。ゲームセンターのパンチングゲームで、「9人の中で一番パンチ力があるのは?」が出題され、正解は原田泰造だったが、何度か「ザッピングしようか」と思ってしまったくらい意味不明のコーナーだった。