「地下鉄」の定義はいろいろあって、広い意味では「地下を通る鉄道」だけど、意味が広すぎて、ほとんどのトンネルは地下鉄になってしまう。都市の地下に限ると、東京では京王新線の新線新宿~笹塚間、東急田園都市線の渋谷~二子玉川間なども地下鉄になる。ただし、普段私たちが日常会話で使う「地下鉄」は、会社名や事業の名として「地下鉄」と明記される鉄道路線。東京地下鉄(東京メトロ)や都営地下鉄、他都市の「●●市営地下鉄」などである。

  • 昨年12月に開催された「都営フェスタ 2017 in 浅草線」では、地上で見る機会の少ない都営大江戸線の車両の展示も

東京都内には2つの地下鉄事業者がある。東京メトロ(東京地下鉄)は9路線。都営地下鉄は4路線。合わせて13の地下鉄路線がある。しかし、地下鉄を名乗っても、その路線の全区間が地下にある路線は意外と少ない。全部わかったら「東京の地下鉄通」、いや「東京通」と自信を持っていいかもしれない。

地下鉄なのに地上、しかも高架という事例で最もよく知られている路線は東京メトロ銀座線だろう。渋谷駅ホームは周辺の地形の影響でデパートの3階部分にあり、高架線で明治通りをまたぐ。高架駅のJR渋谷駅よりも高いところにある。次に知られている路線としては、東京メトロ東西線や都営地下鉄三田線だろうか。都心から離れた区間は高架である。「これでも地下鉄だっけ」なんて疑問に感じるかもしれない。

地下鉄なら地下鉄らしく、全区間地下のほうが潔いと思う。しかし、全区間地下は13路線の中で4路線だけだった。東京メトロ南北線。半蔵門線、都営大江戸線・浅草線だ。

その他の路線を検証してみよう。東京メトロ日比谷線は中目黒駅が地上にあるほか、南千住駅付近から北千住駅までが高架区間だ。どちらも相互直通運転(中目黒駅から東急東横線への直通運転は2013年3月終了)のために、乗入れ先の駅付近で地上に出ていた。銀座線は前述の通り、渋谷駅が高い位置にある。渋谷駅付近の地形が谷のため、地下路線の高さを維持すると地上に出てしまう。

丸ノ内線は四ツ谷駅、後楽園駅、茗荷谷駅が地上にあり、御茶ノ水駅付近の神田川と交差する区間も地上にある。こちらも起伏のある地形が影響している。東西線は南砂町駅の先から西船橋駅までが高架区間だ。かなり長い。鉄橋も多いため、川の下にトンネルを掘るよりも高架方式を選択したようだ。千代田線は代々木上原駅が高架駅。また、北千住駅付近から綾瀬駅にかけての高架線は、もともと国鉄の常磐線として建設され、営団地下鉄(当時)に移管されたという経緯がある。支線の綾瀬~北綾瀬間はすべて高架だ。

有楽町線は和光市駅と新木場駅が高架駅。和光市駅は相互直通運転のため、新木場駅は地上にある車庫との兼ね合い。副都心線は渋谷~池袋間、あるいは渋谷~小竹向原間の全区間地下路線……と思ってしまいそうだけど、実際は小竹向原~和光市間も副都心線で、有楽町線と線路を共用する形。つまり、高架の和光市駅は副都心線の駅でもある。

都営三田線は志村坂上駅付近から西高島平駅までが高架区間。この高架区間も長い。都営新宿線は東大島~船堀間が高架区間。この付近は海抜ゼロメートル地帯だ。東大島駅は地上どころか、川の上にプラットホームがある。

地下鉄なのに地上区間があるなんて……と思うかもしれないけれど、地下鉄の地上区間は高架が多く、見晴らしが良い。そろそろ桜が咲き誇る時期でもある。春の行楽シーズンに「東京メトロ24時間券」「東京メトロ・都営地下鉄共通一日乗車券」「都営地下鉄ワンデーパス」などを使い、地下鉄の車窓を訪ねよう。