日本のロープウェイは鉄道事業法の管轄だけど、その中では「鉄道」ではなく「索道」に区分されている。当連載は鉄道の話題をお届けしているけれど、今回は箱根ロープウェイの一部区間の運行再開を記念して、鉄道の仲間の索道の話だ。

神奈川県の箱根ロープウェイが4月23日12時から姥子~大涌谷間の運行を再開する。箱根ロープウェイは箱根登山鉄道と接続する早雲山駅と桃源台駅を結んでいる。運行は早雲山~大涌谷間と大涌谷~桃源台間の2組のロープウェーを接続する形になっている。

しかし、ほぼ1年前の2015年5月6日から全線で運行見合わせになってしまった。気象庁が箱根山を噴火警戒レベル2としたからだ。箱根ロープウェイの運休は噴火レベルに合わせた交通規制に沿った処置だった。約半年後の2015年10月30日から姥子~桃源台間の運行が再開された。4月23日の姥子~大涌谷間の運行再開で、大涌谷~桃源台間のロープウェーがフル稼働する。早雲山~大涌谷間は代行バスで連絡するという。

箱根ロープウェイは大涌谷駅で乗換えが必要とはいえ、路線全体では4,005mもある。日本最長のロープウェーだ。2009年には年間有料乗車人員206万4,241人でギネス公認記録「Busiest gondola lift(最も乗車しているロープウェイ)」を更新した。

ベトナムには長距離ロープウェーの世界1~3位がある

しかし、海外にはもっと長距離のロープウェー路線がある。世界一はベトナムにあり、標高3,143mのファンシーパン山にある。ふもとの街サパと山頂を結び、距離は6,293mだ。2016年2月2日に開業した。

ファンシーパン山はベトナム最高峰で、インドシナ半島の最高峰でもあることから「インドシナの屋根」と呼ばれているという。外国からの登山客も多く、標高1,500m付近に簡易宿泊施設や食堂を備えた山小屋がある。そこから山頂への往復は2日がかりとのこと。サパから山頂へは片道2日かかるというから、往復で最短4日間の登山行となる。

サパ~ムオンフォア谷~ファンシーパン山を結ぶロープウェーは、片道の所要時間が約15分。いままで片道2日、しかも険しいムオンフォア谷を経由するため、健康で体力のある人しか行けなかった。そこにロープウェーなら15分で行ける。いままでの登山客はがっかりしたかもしれない。ベトナム総合情報サイト「VIETJO」によると、きっぷ代は往復で40万~60万ドン。日本円で約2,000~3,000円だ。

ロープウェーの輸送力は1時間あたり2,000人。いままで体力のある限られた人しか行けなかった場所に、大勢の観光客が訪れる。ロープウェーを開発したファンシーパン・サパ・ケーブル観光サービスは、第2期整備事業として、山頂付近に高級ホテルや観光施設を建設するという。その資材輸送もロープウェーが活躍しそうだ。

このロープウェーは2013年11月2日に着工し、営業開始まで2年半かかった。ベトナムでは同じ企業グループが、さらに長いロープウェーを建設中だ。こちらは島を渡る路線で、ベトナム南部のフーコック島とアントイ諸島のホントム島を結ぶ。完成すれば全長約7,900mとなって、世界一長いロープウェー路線の記録を更新する。

ファンシーパン山のロープウェーが開業する前は、やはりベトナムのダナン市にあるバーナーヒルズが全長5,772mで世界最長だった。つまり、ベトナムには北部、中部、南部に世界1~3位のロープウェーがある。ベトナムのロープウェイ巡り、やってみたい。