北陸新幹線長野~金沢間開業まであと4カ月。金沢付近ではJR西日本やのと鉄道が新たな特急列車・観光列車の運行を発表するなど、在来線も楽しくなりそうだ。将来、北陸新幹線が延伸される予定の福井県も鉄道ファンには魅力的。福井鉄道やえちぜん鉄道があり、少し足を延ばせば越美北線もある。
JR西日本の越美北線は、福井県の福井市と大野市を結んでいる。北陸本線の越前花堂駅から分岐して九頭竜湖駅まで、営業距離は52.5km。景色の良いローカル線だ。現在は「九頭竜線」と呼ばれているようだけど、正式名称は越美北線だ。
ところで、「越美北線」というからには、「越美南線」があっても良さそうだけど、鉄道路線図にその名前は見当たらない。越美南線はどうしたのだろうか?
「越美南線」の名称はいまも残っている
「●●北線」「●●南線」の路線名は国鉄時代によく用いられた。将来は「●●線」あるいは「●●本線」とひとつになる路線について、北側と南側から建設する。線路がつながる前に一部区間を開業した場合、それぞれを「●●北線」「●●南線」と呼んだ。東北地方を縦貫する奥羽本線や、広島県の福山駅と塩町駅を結ぶ福塩線、岡山県の倉敷駅と鳥取県の伯耆大山駅を結ぶ伯備線なども、かつては「南線」「北線」として開業し、接続した路線だ。
では、「越美北線」に対する「越美南線」はどこにあったのか? じつは、現在の長良川鉄道が「越美南線」なのである。正式な路線名も「越美南線」のままだけど、長良川鉄道は越美南線のみ運行しており、地図上では他のローカル私鉄と同様、「会社名=路線名」のように表記されるため、「越美南線」の表記は目立たなくなっている。
「越美北線」「越美南線」はもともと、「越美線」になる予定で建設された。「越美線」の「越」は越前、「美」は美濃を表す。福井県と岐阜県を結び、太平洋と日本海を結ぶルートの一部となる予定だった。
「越美南線」側は大正時代から建設が始まり、1934(昭和9)年に現在の終点、北濃駅に達した。一方、「越美北線」側の着工は遅く、1960(昭和35)年に勝原駅まで開業し、1972(昭和47)年にやっと九頭竜湖駅まで達した。ここでモータリゼーションの影響を受けて工事は停滞。2つの路線は結ばれなかった。
その上、越美南線は赤字が大きく、路線の廃止も検討されていた。そこで岐阜県をはじめ、地元の自治体や企業が出資し、第3セクター「長良川鉄道」が設立され、現在に至っている。かつて、越美北線の九頭竜湖駅と越美南線の美濃白鳥駅を結ぶバス路線があったけれど、すでに廃止されているという。