JR南武線の電車は、川崎駅(神奈川県)と立川駅(東京都)を南北に結ぶ本線と、尻手駅から分岐して浜川崎駅を結ぶ短い支線を走る。本線では7月からE233系が導入され、帯の色は現在の205系・209系を引き継ぎ、「黄色・オレンジ・茶色」の3色になる予定だ。

JR南武線を走る205系。帯色は「黄色・オレンジ・茶色」の3色

電車の車体はアルミやステンレスの銀色が多い。しかし乗り間違いを防ぐため、帯の色を変えている。とくにE233系は首都圏で大増殖中だから、帯色の役割は大きい。中央線快速はオレンジ、京浜東北線はスカイブルー、そして南武線は「黄色・オレンジ・茶色」の3色。……あれ!? なぜか南武線は3色も使われている。豪華だ。なぜこの3色が選ばれたのだろう?

戦後の電車はほとんどが茶色だった。しかし電車の運行区間が増えて、乗客も増えると乗り間違いも増えた。そこで、当時の国鉄は車体を色分けして乗り間違いを防いだ。山手線、京浜東北線、中央線……、というように、混雑する路線から色分けが始まっている。そして、乗り間違いが起きにくそうな郊外の路線は茶色のままだった。

南武線もしばらく茶色の電車が走っていた。しかし、都心の路線に新型車両が導入されると、押し出されるように南武線に回ってきた。各地の路線からの中古で、車体の色は変更なし。南武線では茶色、オレンジ、黄色、青など、さまざまな色の電車が走り始めた。

こうなると、都心の電車に乗り慣れた人はかえって迷う。「色の違いは行先の違いではないのか?」「どの電車に乗ればいいんだ?」となってしまった。そこで南武線にも……、というより、首都圏の各路線の色を決めた。南武線は黄色に決まり、101系・103系電車の車体はすべて黄色に塗られた。路線図のラインカラーも黄色になった。総武線・中央線の各駅停車と同じだけど、「2つの路線が接する駅はないから問題ない」と判断したようだ。

歴代の車両の色がラインカラーに

現在の「黄色・オレンジ・茶色」の3色は1989年に採用された。ステンレス車体の205系を新造して配備したときに、南武線にも独自の帯色を与えようとした。しかし、単色でわかりやすい色はすでに各路線で採用されている。ならば東海道本線や横須賀線のような2色の組み合わせでもよかった。しかし南武線は3色となった。

じつはこの色、南武線の歴代の電車の色に由来し、沿線の住民からのアンケートで決められたそうだ。ラインカラーだった黄色に加えて、その前に走っていた旧型国電の茶色、そして、黄色に決まる前に最も多かったオレンジ色が加わったという。

最新のE233系電車の帯に、かつて南武線で活躍した電車の色も継承される。沿線に住む人々の、それぞれの世代の思いを受け継いだ電車が走るというわけだ。

一方、尻手~浜川崎間を結ぶ支線の205系は、「クリーム色・緑・黄色」の3色。これも過去の電車の色を継承している。205系が導入される前に走っていた101系が、「クリーム色地に緑色の帯」だった。そこに南武線のラインカラーの黄色を加えて3色となった。