元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな負債は「買掛金」です。

売れていない芸人のほとんどが借金をしています。程度の差はありますが、消費者金融を中心に、同期や家族からも借りています。それでも、みんな、安定した固定給のもらえる会社員より幸せそうに生きています。

ぼくには、借金が250万円ある同期がいます。芸人といえば、「飲む・打つ・買う」。彼も、酒を飲み、博打を打ち、女性にお金を使って借金をこさえたのかと言うと、決してそんなことはなく、酒は飲まず、パチンコもやったことがなく、彼女もいたことがなく、タバコも吸わないし、実家に住んでいて、両親も健在です。でも、借金を作ってしまいました。

彼は、圧倒的に買い物が好きだったのです。とにかく、物欲が抑えられない。最初に借金に気づいたのは、3年ほど前でした。当時、ぼくはファイナンシャル・プランニングという、いわゆる「ファイナンシャルプランナー」の資格を取り、自らの培った「ちょきん術」を試すべく、彼と会いました。

「ぼくの言うとおりに節約してお金を使ってくれれば、貯金できるよ」などと言うと、彼も快諾して、貯金することを決意しました。では、現段階でどのくらいの貯金があるのか確認したところ、逆に、借り入れが80万円あったのです。本人も気づいていない借金でした。クレジットカードの設定をリボ払いの5万円にしていたので、月の買い物が5万円以上になるたびに、借金が増えていったのです。とても、貯金をするような状況ではなく、ちょきん術の指南は諦めました。

それから、3年たち、よしもとさんで、借金がある芸人の負債を0にしようという企画が始まりました。彼の借金を返すべく、ぼくも尽力することになります。彼を推薦したのはぼくですが、あれから3年。借金を返し終わっている可能性もありました。でも、彼は借金を増やしてくれていた。企画は滞りなく始まりました。

最初に行ったのは、借金の金額と相手を正確に把握することです。彼は、銀行系カードローン3社、大手百貨店のカードローン、弁護士、そして親から、総額250万円を借りていました。重要なのは、それぞれの利率が異なることです。もっとも利率が高いのが弁護士、そもそも利息がないのが親なので、優先順位を設定して、返済計画を立てます。

現在の収入は月に20万円のアルバイトのみです。とても返しきれません。アルバイトを増やし、支出を抑えます。もともと、月の支出が30万円ほどで、収入が20万円なので借金はどんどん増えていく状況でした。しかし、彼は、そんな簡単なことも気づかなかった。

そこで、支出をすべて携帯のアプリに入力してもらうことにしました。さらに、週の予算を5000円に設定します。この予算で、食事をしたり、欲しいものを買ったりしてもらうと、交通費などを含めても、月に15万円は借金を返せる計算になります。

あとは、財布の中に入っていた100枚ほどのポイントカードをすべて処分して、すっきりさせます。ポイントカードを脳内で管理するコストは甚大なもので、会計ごとにそれを探して提示する時間も、割に合いません。彼のように、ファスナーが閉まらなくなり、財布の形が歪むくらいポイントカードを貯めていては一生貧乏です。

現金も、1万円をすべて千円札で持っていたので、壱万円札に変えてもらいました。千円札より壱万円札の方が、無駄遣いを抑制できるからです。何枚あるか把握しづらい千円札がたくさんあるより、壱万円札1枚の方が「使ってはいけない」という気持ちが生まれやすいのです。こういうのを「メンタルアカウンティング」といいます。

「月に5000円しか使えない」というルールを設けるのもメンタルアカウンティングです。何となく節約するというのは、しっかりものでも難しい。ましてや、借金がある人には、海を割り、空を泳ぎ、月を掴むより難しいことです。お金を貯めようと思ったら、計画を立て、そのための自分ルールを設けて、それを守っていくと良いと思います。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら