元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きなジャイアンのセリフは「甲のものは乙のもの 乙のものも乙のもの」です。

「囚人のジレンマ」という理論というか、考え方があります。二人の人がいて、お互いに協力した方が良い結果になることが分かっていて、一人が裏切ると裏切った人だけが利益を得るよう場合、なぜか二人とも裏切ってしまうというジレンマです。おおむね、二人の囚人を例に紹介されます。

銀行強盗をしたと思われる二人組が逮捕されました。二人はまだ刑務所に入っていないので囚人ではないですが、二人はどこかの偉い人からこんな話を別々に持ちかけられました。
偉い人「自白しろ。もし、片方だけ自白したらそいつは無罪、もう一人は懲役20年だ。二人とも自白した場合は、二人とも懲役10年で済む」
囚人A「二人とも黙秘した場合はどうなるんですか?」
偉い人「その場合は、二人とも懲役2年になる」
囚人Bも同じ話を持ちかけられました。AとBは相談することはできず、それぞれが判断しなければいけません。みなさんだったら、どのような選択をしますか。囚人A,Bにとって、お互いに黙秘することが最良の選択です。しかし、相手が自白して、自分が黙秘した最悪の場合を考えると、二人とも自白してしまいます。 Aの立場になって考えると、Aが裏切りを選ぶのは猜疑心からではなく、合理的な理由によるものです。

Bが自白したとき、Aは自白すると懲役10年、黙秘すると懲役20年。
Bが黙秘したとき、Aは自白すると無罪、黙秘すると懲役2年。

つまり、Aは、Bの選択に関係なく自白を選んだ方が、刑が軽くなるのです。Bも同じように考えるため、自白を選びます。AとBが偉い人から話を持ちかけられた後に相談できたとしても、二人は裏切って自白することになります。

黙秘を「協調」、自白を「裏切り」として考えると、仕事においても、囚人のジレンマのような場面がやってきます。もし、あなたが誰かと取引をして商品を納品したのに、相手が代金を支払わないような場合、あなたは「協調」で、相手は「裏切り」を選択したので、あなたは最も損をして、相手は最も得をします。

ぼくも個人事業をしていて、報酬を受け取れないことがありますし、所属する芸能事務所を通して仕事をした場合は、報酬の金額は振り込まれるまで分かりません。いわゆる、事務所:タレント=9:1といわれるような著しく虐げられた割合で報酬が振り込まれることもあります。これらは、自分が「協調」で相手が「裏切り」を選択したといえます。

裏切られないためにはどうすればいいか?

では、裏切られないためにどうすればいいかというと「裏切った場合は次の取引をしない」と伝えることです。すると、あなたと取引先の取引が複数回続くとき、互いに「協調」を選択する可能性が高くなります。

あなたが裏切ると、納品がなく、それ以降の取引が行われないので、互いに損をします。相手が一回でも裏切ると、次はあなたも裏切るので、それ以降の取引が行われず、互いに損をします。一度どちらかが裏切ると、次の取引が行われないような場合、互いに「協調」を選ぶ可能性は高くなります。

しかし、一回で終わるような取引やあなたの代替が簡単に見つかるような場合、相手は「裏切り」を選択する可能性があります。あなたの価値や有用性を、取引先に明確に伝えることが裏切られないために重要です。

相手が裏切ったときに、それ以降、あなたがどのような選択をするかは、いくつかの戦略から考えることができます。

初回は「協調」を選択し2回目以降は前回に相手が出した手と同じ手を出す「しっぺ返し戦略」や、初回は「協調」を選択し相手が2回連続で裏切りを選んでから裏切りを出す「堪忍袋戦略」、常に「協調」を選択する「善人戦略」など、あなたの状況や能力に合った戦略を取ると良いでしょう。

芸人は、よしもとさんがずっと「裏切り」を選択しても、いつだって「善人戦略」を取っています。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら