元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな投資は「自己研鑽」です。
昨年は仮想通貨が大ブームになりました。靴磨きの少年も、買い物かごを持った主婦も、若手芸人も、こぞって仮想通貨を買い、あるいは買おうかどうか検討していました。
仮想通貨と税金
値動きが激しく、その値動きに経済合理性のない仮想通貨が、投資商品であるかどうかは、疑問を挟む余地がありますが、売買をして利益が出れば、税金がかかります。例えば、100万円分のビットコインを買って、300万円に上がったときに売れば、差額の200万円に税金がかかります。
税率は「総合課税」なので、他の収入と合わせて計算されます。あなたが会社員ならば給与収入、個人事業者なら事業収入と合わせて計算されます。すべての収入から計算された所得の金額に応じて所得税率が変わります。これが「累進課税制度」ですが、もちろん、所得が多ければ多いほど、税率が上がり、最大で45%になります。昨年、仮想通貨で利益を出した方の中には「税金が高いから」という理由だけで、日本円に替えることを控える方が多くいます。
投資をする上で、手数料や税は重要なコストですが、それだけを理由に、売却のタイミングを先延ばしにするのは、問題があります。税を気にしたために、1年後に値が半分になれば、税を納める以上にトータルの収入を減らしてしまうからです。投資の知識を得ず、仮想通貨の取引のみを行っていると、そのような判断をしてしまう方が多いように思います。
税金の仕組み
株やFXは税率が異なります。ほとんどの場合「分離課税」になっていて、それ単独で税金を計算しますが、税率が20%です。いまは復興特別所得税があるので、若干上がっていますが、おおむね所得税と住民税を合わせて20%です。
これを累進課税と比較すると、所得が489万2,300円以上なら、分離課税の恩恵を受けることができます。その金額以上なら、所得税と住民税を合わせた税率が20%を超えるためです。逆に、株やFXがその金額以下の利益ならば、他の所得であれば納めなくて良い税金も納めることになります。だから、ちびちび投資するのではなくて、大きく投資するべきです。あるいは、NISAのような非課税の制度を利用すると良いでしょう。
FXって何?
FXがよく分からない方のために、簡単に説明しておきます。FXとは「外国為替証拠金取引」のことです。言葉を聞いてもよく分かりませんが、外貨、つまり外国のお金を買ったり売ったりすることです。
現在1ドル110円程度なので、あなたが110円出せば1ドル買うことができます。これが、1ドル120円になったときに、持っていたドルを円に替えれば、120円が手に入るので、10円の利益が出ます。FXではそういった取引を、証券会社を通じて、レバレッジをかけて行うことができます。
レバレッジというのは、「てこ」のことなのですが、FXでは、例えば10円しかなくても、100円分の取引を行うことができます。持っているお金より、大きな金額を取引できるのです。何年も前に、FXで数億円の利益を出して、脱税で逮捕された主婦がいました。その主婦もきっと、もともとお金持ちだったのではなく、レバレッジを効かせて資金を増やし、億のお金を稼いだのだと思います。
投資と税金の関係
投資と税金の関係について、何となくお分かりいただけましたでしょうか。株とFXと仮想通貨では、税制面が異なります。投資において、税は重要なコストで、税率との兼ね合いを考えて取引すると良いと思います。
所得の計算に当たっては、仮想通貨の場合、円に替える以外にも、仮想通貨を決済に用いたり、仮想通貨を違う仮想通貨に交換したりしても、あなたの所得になることを覚えておく必要があります。
労せずして高額な所得を得た方は、納税忌避する気持ちが強くなる傾向がありますが、正しく納税することをお勧めします。「バレない」と思っていても、数年後に税務署から連絡が来ますよ。
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