元国税職員さんきゅう倉田です。好きなNISAは「積立NISA」です。

会社員として、個人事業者として、一消費者として、「社内の規則で決まっているので」ととりつく島もない対応をされたことがありませんか。ぼくは今年2回ありました。

「社内の規則」を執拗に繰り返すとき、相手はそれを絶対不可侵の法だと思っています。挙げ句、「あなただけを特別扱いするわけにはいかないんです。皆さまに社内の規則に従っていただいています」と平然と言います。

しかし、どうでしょう。その規則が誤っているかもしれない。

そもそもその規則は会社が従業員を縛るものであって、外部の人間を拘束するものではないはずです。そんなものが認められるのなら、ぼくだって“ぼくの規則”を作って、他人の行動に制限を加えたい。

社内の規則は自社内で完結する業務において適用されるものであり、対外的に効果が発揮されるわけがない。

規則の意義や射程について何も考えずに働いている人は、まるで「すべての人が当然に守るべき法」であるかのようにそれを振りかざす。そして、振りかざされた人も相手の勢いに飲まれて、権利の侵害を受け入れ議論を放棄してしまう。

そんなことはあってはならない。ぼくの事例を一つ紹介します。

振り込みは2年後になります

とある会社から動画制作の依頼がありました。1分の動画を40本依頼され、納期の指定はありませんでした。その会社からは月1回の講演会頼もあり、その開催までに40本すべてを納品することにしました。

依頼から1週間ほどで納品し、請求書を送り、決済日を担当者に確認します。すると、このような返事が返ってきました。

「月に2本ずつ動画を公開します。決済日は公開の翌月になります。」

ぼくは自分の目を疑いました。40本を2本ずつ公開すれば、1年と8ヶ月かかります。ぼくがこの日に納品した成果物の代金を全て受け取るまでに1年9ヶ月かかります。そんなことを受け入れる理由がない。

反対に受け入れない理由はいくつもあります。

まず、この連載で何度か述べましたが、現在のお金の価値と将来のお金の価値は異なります。今、10,000円もらうのと1年後に11,000円もらうのでは前者を選ぶ人が多いのではないでしょうか。

1年で10%なら金利よりはるかに高い。それでも現在の10,000円をより高く評価する。これには複合的な理由がありますが、例えば1年の間に何が起こるか分からない。互いに不幸があるかもしれない。物価が上昇して10,000円の価値が下がるかもしれない。

さらに、決済の基準が「納品」ではなく「動画の公開」だとこちらがリスクを背負うことになります。

相手の都合で動画の公開ペースが遅くなる場合や社内の決定で公開そのものをやめるような場合、ぼくは一方的に損害を被ります。

また納品から3ヶ月以内に決済しないことは下請法に違反する可能性があります。

上記のようなことをメールで述べて相手を説得したいところですが、急に長文を書いて送ったり、「法律違反ですよ」などと言ったりすれば、面倒な人間だと思われて今後の取引がなくなってしまうかもしれません。

ここは短く希望を述べることにしました。

「月に2本ずつ動画を公開します。決済日は公開の翌月になります。」
「承服し兼ねます。納品日を基準に決済をお願いいたします。」

するとここで、まるであらゆる物事に打ち勝つことができる魔法のアイテムのようにあの言葉を使われてしまいます。

「社内の規則で決まっておりますので、ご了承ください」

それはそちらの都合であって、納品後速やかに報酬を受け取るこちらの権利を侵害してまで優先するものではありません、と言わずに、断固たる決意だけ示します。

「申し訳ありません。承服できないので、速やかな決済をお願いいたします。」

ここで、承服できない理由を説明するべきだと思う方もいるかもしれません。それはこの世の中にある最も愚かな行為の一つです。

「話せばわかる」というのは幻想です。犬養毅じゃないんだから。

歴史を振り返れば、常に真理が勝つとは限りません。真理はいつだって誤った意見によって埋没してきました。

ぼくが尊重されるべき取引先なら意思だけで十分な対応してくれます。相手が納得したかはわかりませんが、今回は相手の上司が間に入って解決してくれました。

「規則だから」なんて安易に言ってはいけないし、言われたらその人の思考を疑った方がいい。

新刊『お金持ち 貧困芸人 両方見たから正解がわかる! 元国税職員のお笑い芸人がこっそり教える 世界一やさしいお金の貯め方 増やし方 たった22の黄金ルール』

東洋経済新報社/1,320円
【6000人の吉本芸人の中で「一番お金に詳しい芸人」が3年かけて書いた! 】【芸人になる前は、なんと元国家公務員の東京国税局職員! 】【たった1冊で、大人なら絶対知っておきたい「お金の黄金ルール」が全部わかる! 】【読みやすさ、わかりやすさNo1!こんなに平易な「お金の入門書」は他にありません! 】購入は コチラ