元国税職員さんきゅう倉田です。好きな国は「パナマ」です。

世の中のほとんどの商品やサービスは価格が明示されています。だから、「いくらですか」と聞く習慣がない。すると、価格を知らないまま取引が始まって、後の請求額に驚かされることがあります。

取引方法が法に触れていれば「ぼったくり」と称し、そうでない場合は「勉強代」などと言って自分を慰めた経験を持つ方がいるのではないでしょうか。

お金の話ばかりしているぼくも勉強代を支払ったことがあります。ただ、異国の地で支払った1万円は、その金額以上の学びを与えてくれました。

ベトナムで1万円を取られてしまう

大学4年生の2月、ぼくは同級生と共にベトナムのホーチミンに旅行しました。空港でタクシーを捕まえ(声をかけられたという意味では「捕まり」)、街の中心までタクシーで移動して降車すると、バイクに乗ったベトナム人4人が寄ってきました。

彼らは、「ゲッツ」「コマネチ」などギャグを連呼してから、「街案内スル、ホテルハ?」と聞いてきます。バックパッカー用の安ホテルを探すつもりだったぼくらは、案内とホテルの紹介を頼むことにしました。

おお、なんと未熟なさんきゅう一行。どうして、価格を聞かないのか。

早速、バイクの後ろに乗り、3分ほど移動してホテルに連れて行ってもらいます。案内された場所は「ホテル」というより、家でした。建坪はそんなに大きくないけれど、4階建ての立派な家。1階には家主一家が住んでいて、各階に1部屋ずつ個室があります。個室にはシャワーとトイレとベッドが二つ。悪くありませんでした。1日5ドルで価格も安い。

ホテルで3日分の料金を払い、新品のトイレットペーパーを受け取って、再びバイクに乗ります。案内人は、昼間からキャバクラを勧めてきました。日本で行ったことはなかったけれど、異国で高揚した大学生4人は行ってみることにしました。これがまた良くなかった。

バイクの後ろに乗って30分ほど移動します。当時はスマホもなく、道を調べる手段がありません。ホテルや中心市街地まで自力で戻ってくることはできないので、ガイドの提案や要請に逆らえなくなってしまいました。

キャバクラは、真っ暗でした。客は他にいませんでしたが、女性は20人くらいいて、半円形に並んでいます。「選ンデイイヨ」と言われたけれど、暗くて何も見えません。

適当に座ってもらい、1杯だけお酒を飲みました。フルーツの盛り合わせがでてきましたが、そういうものが別料金だという一般常識も持ちあわせていない。15分くらいしかいなかったのに、4人で4万円を請求されてしまいます。1万円は当時のベトナムの1~2ケ月分の月給だったと思います。

大学生であるぼくらにとっても大金です。でも、怖かった。ぼくは格闘技を本気でやっていたし、他の3人も運動神経に長けていたけれど、ベトナムのキャバクラで抵抗して何があるか予想できない。ベトナム人は比較的小さくても、匕首を出されたら終わりです。払うことにしました。

帰りもバイクに乗って、ホテルまで送ってもらいます。みんな元気がなかった。卒業旅行でぼったくられるなんて思っていなかった。しかし、それだけではありませんでした。ホテルに着くと、ガイドからガイド料を請求されました。

当然です。彼らは気のいいボランティアではありません。生活のために遠い日本のギャグを覚えたのです。料金はここでも1万円。4人で4万円を支払いました。

最初から4万円だと聞いていれば、依頼しなかった。あるいは、価格交渉をしていました。未熟でした。

それ以来、価格の明示がなかった場合は、必ず確認しています。これはお金を払うときだけでなく、仕事をしてお金をもらうときも同様です。そうでないと、トラブルが発生する。

昔、芸人さんが単独ライブのギャラが著しく低かったと不満をSNSに投稿していました。どうして事前に確認しないのでしょうか。SNSに投稿すれば、その人もその会社も、その会社に所属する他の芸人さんも損してしまうのに。とても残念に思ったのを覚えています。

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