テレワーク元年とも言われている2020年。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、図らずも多くの企業で制度の導入が進んでいます。そこでこの連載では、テレワーク生活を送っている一会社員にインタビュー。テレワークを活用したさまざまな働き方を紹介していきます。

今回登場していただくのは、マニュライフ生命 コーポレート・コミュニケーションズ部マネージャーの麦谷英理子さん(40)。去年の春、初めてのお子さんを出産され、今年の5月に在宅勤務で育休から復帰されたご経験の持ち主です。

コロナ禍において、職場のメンバーと直接顔を合わせる機会もなく、仕事に関しては浦島太郎状態で臨んだ復帰……どのようにキャッチアップされたのか、苦労や工夫について伺いました。

  • 麦谷英理子さん(40)/マニュライフ生命 コーポレート・コミュニケーションズ部マネージャー。2019年4月に男の子を出産、今年春には新型コロナウイルスの影響で保育園が休園の中、ベビーシッターや家族に頼りながらの復職を果たした※写真は麦谷さん提供

保育園休園、慣らし保育に苦戦……在宅勤務に助けられた日々

当初は、今年の4月に子どもを保育園に入れ、その後すぐに復職するつもりでいたという麦谷さん。そこに、新型コロナウイルスの感染拡大という予期せぬ事態が起こります。

「復帰予定が近づくにつれ、新型コロナの感染拡大が急速に進んで、あれよあれよという間に保育園が休園となってしまいました。そのような状況もあり、1カ月育休を延長させてもらったのですが……」。

"それでもやっぱり働きたい、チームに迷惑をかけたくない"という思いから、保育園の休園が続く5月、復帰を決断。復帰後2週間ほどは、ベビーシッターや近所に住む実母の助けをもらいながら、業務を行っていました。

6月には保育園も開園しましたが、慣らし保育に大苦戦。ことあるごとに保育園から呼び出しがかかる日々でも、在宅勤務だったことで、なんとか乗り越えられたといいます。

「息子の慣らし保育には本当にてこずりました。ご飯を食べない、水を飲まない、寝ない……保育園からは、息子のお世話で問題が起こるたびに呼び出しがあったので、合間に保育園に行き、戻って仕事をして、の繰り返し。弊社ではフルフレックスタイム制度が導入されていて、規定の勤務時間を満たせば、7~22時の間、いつ働いてもオッケーなので、在宅勤務の制度を併用して、どうにか乗り越えることができました」。

「復帰は少し早かったかな‥‥…と若干後悔もしたのですが(笑)チームに助けていただいたのと、上司の理解が大きかったので、メンタル的には安定して仕事をすることが出来たと思います。ベビーシッターも、こんな事態にならなければ、利用する機会がなかったと思うので、大変な状況の時、助けになる手段を活用できたことは、良い経験になっています」。

夫婦で在宅だったからこそ実現できた"仕事と子育ての両立"

「幸いにも広報業務は在宅勤務で出来ることが多いので、業務で必要な時は出社し、基本的には家で仕事をしています」と麦谷さん。

初めての"仕事と子育ての両立"に不安を感じていましたが、新型コロナの流行によって旦那さまも在宅勤務になったことで、意外にもスムーズに日々を回せているのだとか。

「正直、コロナでテレワークが本格導入される前は、どうしたら1日を無事に回すことができるのか、心配していました。でも、夫婦で在宅勤務をしていると、どちらかが会議に出ている間に、どちらかがご飯を炊く、などの連携プレーが可能です。都度コミュニケーションを取りながら家事・育児を進められるので、日々のルーティーンを効率よく回せている気がします。通勤時間がなくなって時間の余裕も生まれ、子育てでイライラすることが減ったのも、良かったですね」。

旦那さまは半年間の育休を取得されており、もともとお二人の育休中には家事・育児の分担がスムーズに行えていたとのこと。在宅勤務により、これまでの連携プレーを継続しやすくなったことは、麦谷さんにとって大きなメリットだったようです。

  • 慣らし保育時、現在、それぞれの1日のスケジュール。慣れない保育園の送迎も、通勤がないので余裕を持ってできているそうです

大切なのは、臆せずにどんどん質問すること

ここで気になるのが、在宅勤務下において、仕事のキャッチアップをどのように行っていたのかということ。実際に出勤して、顔を見てコミュニケーションをはかるのが難しい環境の中、苦労はなかったのでしょうか。

実際の職場のように『ちょっとここ教えてほしいんだけど』と気軽に声をかけにくい環境ではあると思います。でも分からないことがあれば躊躇せず、メールでも電話でもすぐに質問しよう、と心がけています。些細なことでも疑問を残してしまうと、キャッチアップできなくなってしまうので……幸い、快く教えてくれる同僚や上司に恵まれていて、助かっていますね」

さらに全社的に在宅勤務が行われていることで、オンラインでの情報共有が積極的に行われるようになり、他の社員との情報ギャップも早く埋まったと感じているそうです。

「社内の全体会議がオンラインで活発に行われるようになり、社長からのメッセージも頻繁に聞けるようになりました。商品やサービス、部署紹介などもオンラインで実施されるようになったので、以前より、会社のことを知る機会が増えたと感じています」。

チーム全員が在宅勤務前提の働き方をしていることで、ITスキルの格差も少なく、SkypeやTeamsなどを使ったチーム内のコミュニケーションも円滑にできているとのこと。

「中途入社の方で一度しかお会いしていない同僚もいるのですが、オンラインで頻繁にコミュニケーションをとっていますし、必要な時には画面をつないでやりとりもしているので、何度もお会いしているように感じることもあります」。

そんな風にお話されているのも印象的でした。

仕事に慣れてきたからこそ、感じ始めている課題

とはいえ、仕事に慣れ始めてきた今だからこそ、リアルなやりとりが恋しくなることもあるそう。

広報という職業柄、アイデアを出すとか、面白い仕掛けを考える、という点ではもう少し、色々な方にお会いして刺激をいただく機会も作りたいですね」。

また、社内でのコミュニケーションでも、違う部署の一度もお会いしたことのない方に、何か協力を依頼するときは、オンラインならではの難しさを感じます。実際に職場にお伺いして直接お会いして、声をかけて話が始まるのと比べて、垣根があるので。そのあたりは、もう少し改善していけたらいいなと思っています」。

テレワークでの育休復帰は"バリアがない"のが魅力

育休から復帰してすぐの頃は、ただでさえ環境の変化が大きく、精神的にも肉体的にも負荷がかかるもの。最後は麦谷さんに、この数カ月間の振り返りと、今後の展望についてお聞きしました。

職場に通勤しての復帰と比べて、テレワークでの復帰は、物理的なバリアもなければ、ネットワークのバリアもなく、ある意味すんなりとチームの中に入っていけた印象です。私だけでなく、チーム全体がテレワークをしていたというのも大きかったと思います。自分がまだ働くということに慣れていない時期、子育てと両立していけるのかという不安を払しょくしてくれたのもテレワークだったので、案外テレワークでの復帰は悪くないなと思っています」。

「ただ久しぶりにみんなに会いたいなという思いもありますし、通勤しないと運動が少なくなるので、太るのが嫌だな(笑)。また、涼しくなったら我が家のウッドデッキに椅子と机と並べて仕事をしてみようかなと思っています。新型コロナの流行が収まる頃には、ガイドラインの範囲内で自宅以外の場所でもテレワークをしてみたいですね」。

【テレワークData/マニュライフ生命】


◆導入開始
2015年(現在の初台のオフィスへ移転時に、社員が個々にデスクを持たない勤務スタイル「フリーアドレス」を導入。それに伴い、在宅勤務の利用促進を行った)
◆対象者
内勤職員、契約職員、営業職員(ただし、コロナの影響により、派遣社員においても派遣元と合意の上、対応可能としている)
◆実施者数
2020年4・5月は約75%の在宅率。なお、当初より「年間利用率30%」を目標として設定している
◆実施可能日数/回数
回数制限はなし
◆実施場所
ガイドライン(業務に集中できる環境、情報保護ができる環境など)に基づき、許可できる場所であれば可能
◆特筆すべき制度
・政府が主催する「テレワーク・デイズ」には、2017年から特別協力団体として参加。2019年は553名の役職員が自宅やサテライトオフィスでの勤務を行った
・「フルフレックスタイム制度」を導入しており、7~22時の間で勤務時間を選択することができる(毎日のコアタイムはなく、月間での規定時間を確保すれば、日々の時間は柔軟に設定できる)