本連載の第67回では「できる人たち」に囲まれて失った自信を取り戻すための2つの問い」と題し、自分より遥かに仕事ができる人たちに囲まれて失った自信を取り戻すための方法をお伝えしました。今回は面倒くさがりの人が生産性向上に寄与するというお話をします。

ご自身の職場に「面倒くさがりな人」はいませんか。或いはご自身が面倒くさがりだという方もいるかもしれません。顧客に見せる資料を作成するためにいろいろな人に話を聴いて情報収集するのが面倒くさい、毎週集まっているが何のためにやっているのか分からない会議に参加するのが面倒くさい、毎月の交通費精算が面倒くさいなど、何かにつけて面倒くさがる人です。

面倒くさがりであることは一般的には良くない印象があるのではないでしょうか。どんなにつまらない仕事や地味な仕事でも眉一つ動かさずに黙々とこなすことが美徳とされる職場が多いのではないかと推察します。

確かに面倒くさがりな人は周囲から疎まれることがあるかもしれません。その一方で、そういう人は仕事を効率化して生産性を上げる可能性を秘めています。なぜなら、面倒くささが高じて不当に長い会議の時間を圧縮できないか模索したり、冗長な申請承認プロセスを簡素化できないか検討したり、或いは所定のフォームに情報入力する作業を自動化したりといった業務の効率化を行う動機につながるからです。

ただし、面倒くさがりな人が一律に仕事の効率化を進めてくれるかといえば、決してそういうわけでもなさそうです。そこで面倒くさがりな人を業務における2つの特性それぞれの軸でタイプ分けして考察してみます。

新しいことが面倒くさい人 vs. 今までと同じことが面倒くさい人

これまでに自分が経験したことがない新しい仕事にチャレンジするのが面倒な人はこれまでのやり方に固執するので、そもそもこれまでやってきた仕事を見直そうという気になることは稀でしょう。従って、こういう人には効率化の仕事はあまり向いていないと言えます。

その一方、これまで長く続けてきたことに飽きて面倒くさいと感じる人は、既存の業務をゼロベースで見直して「やらなくて済むこと」を探したり、これまでの慣習で長年続けてはいるが何のために行っているか分からない資料作成をなくしたりといった、自分の仕事を楽にしようという動機付けが働きます。そのため、こういう人に業務の見直しをさせると率先してやってくれることが期待できます。

不規則なことをやるのが面倒くさい人 vs. 定型的なことが面倒くさい人

仕事の内容やルール、フォーマットやマニュアルなどが整理されておらず、その都度自分で考えなければならないような仕事が面倒くさい人は、できれば仕事を定型化したいと思っているはずです。

そこで、そういう人には仕事のルールの曖昧さを排除するよう見直したり、それまで各々の社員が勝手気ままに記述していた資料にフォーマットを導入したり、マニュアルを整備したりといった仕事を任せるとジブンゴトとして捉えて前向きに進めてくれるでしょう。

その反対に、細部に渡って内容や手順、フォーマットが決められた仕事が面倒くさい人は、そのような仕事が苦痛で仕方がないので極力やりたくないと思っています。

そういう人にはルールやマニュアルを見直して無駄な部分や冗長な部分がないかを精査したり、手順やルールが明確に定められた仕事についてはExcelのマクロなどの機能を使って自動化したりといった仕事を任せるとよいでしょう。本人が面倒でやりたくない仕事の手間を減らせるので喜んでやってくれることでしょう。

ここまでの話をまとめると、面倒くさがりな人は仕事の生産性を上げるためのキーパーソンかもしれませんが、それはどのような仕事を面倒くさいと感じるかによって向き不向きが分かれるということです。どのタイプの面倒くさがりかを見極めて、その人のタイプに合った効率化の取り組みを任せるとよいでしょう。

なお、余談ですが筆者は定型的なことが面倒くさい人間なので、そのような仕事の中でも作業量が多いものについてはExcelやAccess(Windowsのデータベースソフト)のマクロ機能やWindowsのコマンドを扱うバッチファイルなどを駆使して徹底的に自動化してきました。自動化するための仕組みを作るのは少々骨が折れますが、一度できてしまえばものによっては数時間かかる作業が数分で終えられることもありますし、手作業でのミスをなくす効果もあるのでお勧めです。

ぜひ、職場で面倒くさがりな人を見つけて仕事の効率化を任せてみてください。きっと良い働きをしてくれることでしょう。