本連載の第202回では「アジャイル開発で行われるスクラム手法のタスク管理で生産性を上げよう」という話をお伝えしました。今回は若手ビジネスパーソンにとって特に重要な「レジリエンス」についてお話します。

社会に出て日が浅い若手ビジネスパーソンは、当然ながらベテラン社員と比べて圧倒的に経験が不足しています。そのためこれから多くの失敗を経験することは避けられません。しかし、失敗する度に落ち込み、拗ねてしまうのでは上司や同僚などから「扱いづらい」と距離を置かれてしまいかねません。そこで、逆境に打ち勝つために必要なスキル「レジリエンス」を身に着けることが求められます。

レジリエンスとは、困難な状況から立ち直り、変化に適応する能力です。これは個人的特性だけでなく、環境的要因も含まれる多面的な概念です。つまり、自分自身だけでなく、人的リソースやサポートシステムの利用も含まれるのです。

レジリエンスには自己調整、自己効力感、ソーシャルサポート、適応の4つの要素があります。以下ではこれらの要素について説明します。

1. 自己調整

ストレスに対して感情や行動をコントロールする能力を指します。仕事をしていると、時として感情的に負担の大きい状況に直面することがあります。しかし、そのような時でも冷静さを維持し、集中力を保つことができれば問題の解決策を見つけ、効果的な意思決定をすることができます。

2. 自己効力感

自分が目標を達成できるという信念を指します。どのような時でも自分の能力に適度な自信を持ち、多少のリスクを取ることが重要です。自分自身を信じることで挑戦に取り組み、障害を乗り越えることができます。

3. ソーシャルサポート

家族、友人、メンター、同僚などの人的リソースやサポートシステムが重要です。これらの人達と強力なサポートネットワークを構築することができれば、自身が困難に陥った局面にも適切なアドバイスや励ましを受けて立ち直るきっかけを作ってくれます。

4. 適応

変化に適応する能力を指します。仕事では予期しない課題や挫折に直面することが多々あります。しかし、これらの変化に適応し、柔軟に対応することができれば長期的に成功するための土台を築くことができます。

それでは、どのようにレジリエンスを発展させることができるのでしょうか。具体的な対応例を見ていきましょう。

セルフケアを実践する: レジリエンスは自己の身体的、精神的健康をケアすることから始まります。最近は減ってきたかもしれませんが、人によっては毎日長時間の残業をして、睡眠を犠牲にし、運動や栄養をしているかもしれません。しかし、セルフケアを怠ることで疲弊し、生産性の低下や健康問題を引き起こす恐れがあります。レジリエンスを身に着けるためには昼休みに散歩したり、仕事前にヨガをしたり、瞑想や深呼吸のようなリラックス技術を実践することも有効です。

現実的な目標を設定する: 現実的な目標を設定することは、レジリエンスを発展させるための重要な要素です。あなたは野心的なキャリアの夢を持っているかもしれませんが、その目標を小さな、より管理しやすいステップに分けることが重要です。現実的な目標を設定することで進捗を測定し、小さな成功を祝うことができ、自信とモチベーションが生まれます。たとえば、会社の社長になることを5年以内に目指すのではなく、特定の部門で経験を積んだり、特定のスキルを習得したり、ある期限までにプロジェクトを完成させたりする目標を設定する方が現実的かもしれません。

サポートを求める: サポートネットワークを構築することは、レジリエンスにとって重要です。仕事では自分だけでは克服できない課題に直面することが珍しくありません。サポートネットワークを持つことで、困難な時期でも適切なアドバイスをくれたり、励ましたりしてくれる人々との繋がりを維持することができます。メンターを探したり、プロフェッショナルなネットワーキンググループに参加して、志を同じくする人々と関係を構築したりすることも期待できます。

失敗から学ぶ: 失敗から学ぶことは、レジリエンスの重要な要素です。若手のうちは失敗や挫折に直面することは日常茶飯事かもしれません。しかし、これらの経験を単純にマイナスなものと見なすのではなく、成長と学習の機会として捉えることができれば、そこでレジリエンスが生まれます。たとえば、マーケティングキャンペーンが思ったような結果を生まなかった場合は、次のキャンペーンのために何が間違っていたのか分析し、改善策を見出します。また、面接後に採用通知を受け取れなかった場合は、フィードバックを求めてスキルや面接への対処の仕方を改善することができます。

コーピング戦略を開発する: コーピング戦略とはストレス、不安、その他のネガティブな感情を管理するためのテクニックのことです。仕事においては高圧的な取引先との会議、締め切り、予期しない課題など、精神的な負荷がかかる状況に直面することはあるのではないでしょうか。コーピング戦略を取ることで、冷静さと集中力を維持し、ストレスに対処することができます。具体的な例としては、日記をつける、マインドフルネスを実践する、友人やセラピストと話をする、趣味や好きなアクティビティに参加する、などがあります。

ここまでの内容をまとめると、レジリエンスを発展させるためには、セルフケアを実践し、現実的な目標を設定し、サポートネットワークを構築し、失敗から学び、コーピング戦略を取ることが重要です。これらのスキルを習得することで、ビジネスの場で長期的に成功するための土台を築くことができます。また、レジリエンスを身に着けることは個人的な成功だけでなく、所属する組織にとってもプラスになります。ぜひ、ここで挙げた内容を実践に移してレジリエンスを身に着けましょう。