クリエイターと読者をつなぐプラットフォームとして知られる「cakes」。運営元のピースオブケイクは、写真やテキスト、映像などを公開・販売する「note」というサービスも展開しています。
そのcakesから、その名も「cakesの手帳」「noteのノート」という文房具が登場しました。また、「自分への取材手帳」は、同時に発売されたスマート新書の一冊『自分への取材が人生を変える』(はあちゅう著)専用のワークブックです。
cakesの文具が既存のそれとどこが同じでどう違うのかを概観してみました。
スマホサイズの文具
サイズは、iPhoneなどのスマートフォンとほぼ同じサイズ感。これは、ある種文房具の文法にかなっていると思われます。
ほぼ日手帳が文庫サイズなのは、文庫本というメディアが作り手にとって最も身近なポータブルメディアだったからです。だからスマートフォンサイズの本、文具というのは実は作り手の必然に裏付けられているわけです。
「cakesの手帳」はオーソドックスな月間タイプ
「cakesの手帳」はサイズ感もふくめ、よくある形のように思えます。月曜始まりの月間ブロックタイプです。
見開きの下部には方眼の、右部には横罫のメモ欄がそれぞれあり、更にToDoリスト用と思われる、チェックボックスが6つある点がやや個性的といえるでしょうか。また元号はなく西暦表示のみですが、反面睦月、如月、弥生といった月の異名は記載があります。後半のメモページは4mm方眼で35ページの構成です。
表紙の裏には年間予定や目標を書く欄もあります。自己啓発書でよく推奨されている1年の目標を書く欄としても利用できそうです。そのほか年間予定表や3年分のカレンダーもついています。
「noteのノート」は4mm方眼のページが64ページあります。こちらは取り立てて個性は感じられません。強いて言えば、「cakesの手帳」と同じサイズなので合わせて使うのには便利だという点でしょうか。
この2冊はセットとして使うと便利そうです。できれば専用のカバーがあるといいのではないかと思います。
自分に取材するノート
cakesのこのシリーズは、文具と書籍がスマホサイズで出てきたことが新しい点です。
そしてもうひとつ。自己啓発書とそのためのワークブックが同時に発売されている点にも注目です。それは、スマート新書の『自分への取材が人生を変える』(はあちゅう著)とそのための「自分への取材手帳」です。
前者は、自身の好きなことや苦手なことを把握してそれをもとに行動しようという主張の本です。詳しい内容は同書を参照ください。そして「自分への取材手帳」は専用のワークブックとして用意されています。
自己啓発書には、読者に問いかけをしてそのための答えが求められるものがめずらしくありません。ただ、答えは別途ノートに書くかあるいは、本の中に用意された記入欄に書くなどするしかありませんでした。筆者の『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)でもこの形式で手帳の使い方記入シートを書籍の中に用意してあります。
このやり方には決定的な限界があります。書籍用の紙は必ずしも筆記に適していないのです。だから自己啓発書はそのための専用ノートがあってもおかしくないと考えていました。
その点、今回のスマート新書とそのためのワークブックはまさに理想的な形です。ワークブックは12カ月分の記入欄があります。また、年が変わったらワークブックだけ購入し、そこに書かれることが去年とどう違うかを見比べるのも面白そうです。
スマートフォンサイズの手帳とノートの真価とは
このように、オーソドックスな機能が新しいメディアのサイズに収まったスマート新書と手帳、ノートですが、注文をつけるとすれば、機能面での個性でしょうか。
少しでも文具にはまった人ならば、世の中には(日本には)無数の文具メーカーがあり、手帳一つ、ノート一つとっても、個性的で機能的なものが多数あることは知っています。そして例えば、このcakesの文具を手に取った人が、文具の便利さに気がつき、その後に様々なメモ帳を探して雑貨量販店などを渉猟することは想像に難くありません。
ただし、その場合、cakesの文具は、いわば道案内であり入門編としての役割にとどまってしまう恐れがあるのです。そうではなく、cakesのこのシリーズを使い続けたいと強烈に思わせるだけの、デザイン、機能などのなんらかの個性がほしいところです。その答えの一つは、図らずも「自分への取材手帳」が示しているように思えます。
舘神龍彦
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