いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

今回は、三鷹の喫茶店「茶房 ふれーず」をご紹介。

  • 41年目の老舗喫茶「茶房 ふれーず」(三鷹)

"ミートボール"じゃなくて"肉ボール"?

前に立ち寄ったとき、数組いたお客さんがランチを食べていたことが気になったんですよね。

その日の僕はお茶が目的だったのですけれど、たしかにメニューを確認してみれば食事のメニューがなかなか充実している。だから、「次回はお昼を食べてみよう」と決めていたのです。

  • 整頓されたエントランス

三鷹駅南口、駅を背にして三鷹通りを数分進むと右側に見えてくる「ふれーず」という喫茶店のこと。

茶色い格子ガラスのドアと窓が、いかにも昭和っぽく暖かいイメージ。それなりに年月を感じさせはするものの、しっかりと手入れされていることが外観からもわかります。

  • 広々とした店内

店内は右側にカウンターがあり、止まり木が5脚。そして左側に4人がけのテーブル席が3卓。天井近くの壁に設置された小さなスピーカーからは、軽めのジャズ・ボッサが流れています。カウンターの隅のほうにCDチューナーアンプが置いてあったので、有線ではなくご自身で選曲されているようですね。

1970年代後半のころ、こういう喫茶店はよくあったなー。

ゆったりとした空気が心地よく、どことなく懐かしさを感じます。現代風ではないけれど(いや、ないからこそ)落ち着くというか。お店を大切にされていることがわかるので、安心できるというか。

  • 格子の窓がいい感じ

さて、待望のランチを注文しましょう。表の看板に「人気メニュー 自家製ハンバーグサンド」とあったので、それをランチセットにできるのか尋ねてみたところ、どうやらランチセットは別の「日替わり」を指すようです。

それに、「きょうのランチセットは肉ボールですけど、どうしますか?」と、まったく予想していなかった返答が。"ミートボール"じゃなくて"肉ボール"というあたりがグッとくるじゃないですか。ってなわけで急遽変更し、肉ボールのランチセットとホットコーヒーをお願いしました。

ところでこのお店、いろいろ考えられている様子。テーブル上のスタンドに、変わったメニューを見つけたのです。

  • 珍しいメニューを発見

変わりメニュー ポテトセット
チョット小腹が空いたとき。
丸ごとのじゃがいもとフランクフルト・サラダ
そして
ブレンド珈琲か紅茶で
¥750(税込)
(アイス+¥30)

なるほどー、たしかに小腹が空いたときには最適かもしれませんね。"変わりメニュー"ってのも味わい深い。さっきの"肉ボール"しかり、独特の言語感覚に好感が持てます。これはいつか注文してみたいところだ。

  • こちらが肉ボールの日替わりランチ

さて、そんなことを考えているうちに、肉ボールのランチセットがお目見えです。手前のアルミホイルには、醤油ベースの味つけが施されたもやしとエノキのソテーの上に肉ボールが7個。大きさが微妙に違うところが、手づくりっぽくてこれまた魅力的。

トマト、きゅうり、キャベツ、ブロッコリーのサラダもついており、さらにはコンソメのスープも。ライスに塩昆布が添えられているところもグーですな。

  • ほどよいサイズの肉ボール

とてもバランスがとれているし、味も濃すぎず薄すぎず、適度にボリュームもあるから、いろいろな意味で完成度が高い印象。ランチを目当てに訪れるお客さんがいることにも、充分納得できます。

でね、ちょうど食べ終えたころ、絶妙のタイミングでコーヒーが出てくるわけですよ。しかも、梨が2切れついている。こういう配慮はなんだかうれしい。苦味や酸味は強すぎず、ほどよくやさしい味わいのコーヒーは、みずみずしい梨との相性もピッタリ。

  • コーヒーには梨のサービスが

コーヒーや料理の質の高さからアイデア、メンテナンスまで、いろいろなところにプロフェッショナルとしてのスキルを感じさせてくれるお店。ほどよく放っておいてくれるので、読書をするにも最適でした。

帰り際にお聞きしてみたら、今年で41年目なのだとか。ということは、僕が高校生だったころに開店したわけか。でも、細かくいろいろなところに配慮が行き届いているからこそ、それだけの歳月を乗り越えてこられたのかもしれませんね。

●茶房 ふれーず
住所:東京都三鷹市上連雀2-3-5
営業時間10:00~21:00
定休日:木曜日