いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。
今回は、中野の喫茶店「A・ライセンス」をご紹介。
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ブロードウェイの穴場的オアシス「A・ライセンス」(中野)
天井の模様はいったい……？
中野ブロードウェイといえば、アニメ、フィギア、プラモデルなどのマニアックな専門店が集まったサブカルチャーの拠点として有名。しかしその一方、この古いビルには個性的な飲食店も少なくないのです。
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ご存じ中野のランドマーク
たとえばいい例が、以前紹介したことのある「喫茶 絵夢」。1階からエスカレーターに乗るとそのまま3階まで行ってしまうブロードウェイの、2階で静かに営業を続けている老舗です。
今回ご紹介する「A・ライセンス」は、そのはす向かい。外観はスッキリとイマドキのカフェ風ですが、創業はブロードウェイがオープンした1966年。つまり「喫茶 絵夢」と同じく、今年で56年目だというわけです。位置的には、中野駅側からだといちばん遠い早稲田通り側ですね。
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ご存じ中野のランドマーク
足を踏み入れると、女性の店員さんから「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」と声がかかります。有無をいわさず座席指定してくる店も少なくないなか、こういうちょっとした気づかいはうれしいところ。
大半の席はボックスシートになっており、厨房は右側。正面奥と左側にはガラスで仕切られた席があって喫煙席のようにも見えますが、そうではなく全席禁煙です。
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ボックスシートは居心地抜群
いずれにしても全体的に落ち着いた雰囲気で、どこに座ってもプライバシーを確保することが可能。ゆっくり過ごすには最適だといえるでしょうね。
ところで店名がちょっと変わっていますが、これが意味するのはJAF公認競技のレースに参加・出場できる、いわゆる“A級ライセンス”。数年前、とある雑誌で取材させていただいた際に伺ったところによると、マスターのお父様がレーサーだったためにこの名がついたのだそうです。
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天井を見上げると……
見上げると天井には変わった形をしたパイプがたくさん飾られているのですが、これらもサーキットの形状を表現したもの。たしかによく見れば、“Suzuka(鈴鹿)”“Daytona(デイトナ)”“Indianapolis(インディアナポリス)”などサーキット名もあしらわれています。
普通に見えるけれども、実は“レース愛”にあふれたお店なんですよ。
とはいえ過度にマニアックな方向に走るのではなく、基本的にはきわめて正統派の喫茶店。カフェではなくて、喫茶店。だから安心できるのです。
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フードメニューも充実
なおドリンクメニューはもちろんのこと、ハンバーグ、ナポリタン、サンドイッチなどなど、フードメニューも充実しまくっています。お昼になって次々とお客さんが入ってくるのも納得できるところ。
以前いただいたハンバーグがおいしかったことを覚えているのですが、この日はミックスサンドをいただきたかったんですよね。ハンバーグなどにくらべればいさかか地味なメニューかもしれませんけれど、ミックスサンドってたまに食べたくなりません？ なんとなく懐かしい感じがして。
ということで、アイスコーヒーとのセットでオーダー。なおセットドリンクのバリエーションも豊富で、セットサービスは営業時間中いつでもOKみたいです。
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まずはアイスコーヒーが登場
静かな音量で流れるジャズ聴きながら本を読んでいたら、数分して先にアイスコーヒーが、そののちミックスサンドが運ばれてきました。
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まさに正統派のミックスサンド
レモンのスライスとパセリが添えられたミックスサンドは、ハムとレタス、トマトとキュウリのオーソドックスなスタイル。昭和の喫茶店には必ずあった、イメージどおりのミックスサンドです。
当然のことながらその味も、基本を忠実に踏襲したもの。鮮度のいい具材と、ふんわりとしたパンの相性がとてもいい感じです。がっつり食べたい人には向いていないかもしれないけれど、お昼をちょっと軽めにすませたいというときには最適ですね。
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鮮度も抜群
そしてもちろん、アイスコーヒーもイメージどおりの味。ストレートでいただきましたが、シャキッとしたキレのある、これまた昔ながらのテイストです。
周辺のサブカル系店舗とは対極にある、いい意味での“普通”を守り通しているお店。まさにブロードウェイの穴場といえるのではないでしょうか？
個性の塊みたいな店舗群から少し距離を置いたビルの片隅で、静かに流れていく時間を楽しむのも悪くないですね。
●A・ライセンス
住所：東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ2F
営業時間：10:30〜18:30(L.O.18:00)
定休日：水曜
