映画化&イベント化も決定した『カメの甲羅はあばら骨』(SBクリエイティブ刊)で人気の古生物イラストレーター・川崎悟司さん。今年4月の新刊は、なんと「耳」だけにスポットを当てた動物図鑑です。

「人間がもし同じ耳の構造を持っていたら」というユニークな視点のイラストで楽しく読める動物図鑑『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)より一部を抜粋し、連載にて紹介します。

第5回のテーマは、「耳の形で感情表現! ネコは耳がイカになる」です。

ネコの気持ちは耳でわかる!

ネコは縄張りを作って暮らす単独生活者。とはいえ、仲間との社会生活のためのコミュニケーションも必須。聴覚(声)、嗅覚(臭)、視覚(表情)といった感覚器が頼りとなります。

ネコは感覚器が鋭敏ですが、中でも聴覚はかなり優れた働きをします。「ヒトの8倍」ともいわれているほど。

狩りをする必要のないイエネコでも、耳の良さはヒト以上です。一説によると、ヒトの8倍以上の聴力をもつともいわれています。また耳は表情豊かで、感情も現れます。耳が平らや後ろ向きになると、いわゆる「イカ耳」となり威嚇や攻撃のサインです。

  • 『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)より引用

「女性が好き」「抜群のバランス感覚」も耳のため

  • 『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)より引用

ネコの耳介(じかい)は多くの筋肉からなり、左右別々に約180度、自由自在に動きます。よく動くのに加え、効率よく音を集められる構造です。どれほどスゴいかといえば、20メートルほど先にいるネズミの出す音を聞き取れるほどともいわれます。

高い音は特に聞き取りやすいようです。「ネコは女性が好き」「(高い)ネコなで声が好き」といった話があり、「餌のネズミ類が高音で鳴くため」などと推測されています。さらに、音のする位置がわずか0.5度ほどの誤差でわかる(ヒトは4度以上)など、ネコ耳のスゴさには感嘆を禁じ得ません。

愛する飼い主さんの声は離れてもわかる

耳がいいネコも老化で耳が悪くなってしまいます。でも、ネコがすごいのは、「昔は耳がよく聞こえて幸せだった」などと過去を振り返らず、楽しそうなことです。高齢ネコを病院で預かることがありますが、耳が聞こえづらくなったネコでも、飼い主が面会に来ると遠くからでも足音を聞き取り、待っているそうです。

動物病院の獣医さんが高齢ネコを預かったとき、「もう耳が悪いはずなのに、飼い主さんが来るときだけはわかるみたい。足音で察しているのかも」と言っていました。

まだある! 語れる耳ネタ

耳の付け根のひらひらの正体は?

英語版Wikipediaに、「Henry’s pocket(ヘンリーのポケット)」という項目があり、「ネコ耳の付け根の皮膚のひだで、機能は不明。狩りのとき、高音を聞き取りやすいのでは」という説明があります。そのほか、風を逃がす、耳の可動域を増やすなどの機能はありそうです。日本語でも「縁皮嚢(えんぴのう)」や「耳袋(みみぶくろ)」など、さまざまな名前があります。

『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(宝島社刊)

動物が持つ驚異の能力は「耳」がカギ!

効率的にエサをとるため、敵が出す音をよく拾えるようにするため―― 厳しい自然界で生き残るために進化した動物の耳。さまざまな能力があり、それはコミュニケーションのあり方につながります。

【川崎悟司さんより】
生き物の耳にはさまざまな形と機能があり、人間が感じることができない音を聴くことができる生き物もいます。 また頭部に耳があるともかぎらない生き物や、そもそも耳はなく、体のどこかで音を感じとっている生き物もいます。 だから生き物によってそれぞれ感じる音の世界は異なるでしょう。「そんな生き物たちの耳を人間が持っていたら……」を、イラストで可視化してみました。

動物園・水族館の飼育員、獣医師など、現場のプロに取材し、その秘密を解き明かします。

『カメの甲羅はあばら骨』(SBクリエイティブ)で人気の古生物イラストレーター・川崎悟司さんが描く、「人間がもし同じ耳の構造を持っていたら」というユニークな視点のイラストで楽しく読める動物図鑑です。