今回は、東急線「自由が丘」駅北口降りて1分のところにある、そば屋「そば新」(東京都目黒区)を紹介したい。自由が丘と言えば、「おしゃれな街」「スイーツの有名店も多い」など華やかなイメージをまといがちだが、我らが庶民の味も、ちゃんと駅前に構えているのだ。しかも24時間営業で。
メニューを決めてから入店しよう
プリントされた看板には、「石臼挽き蕎麦とこだわりのだし」「立ちそば」とある。入ってみると分かるが、店内は着席カウンターのみ。実はこの「そば新」、蒲田や新宿にも店舗があって、看板デザインはそちらと共用だ。
また店頭には、この手の店には珍しく、食品サンプルでのメニューが。これも中に入ってから気づくのだが、とても狭く人がすれ違うことすら難しい店内なので、外であらかじめ決めておいた方がいい。
右側の自動扉から入る。奥に細長く、左側の厨房に沿って、着席カウンターが並ぶ。座席は10席程度だろうか。ラジオのチューニングはNHKだ。入り口左手に券売機がある。よその店ではあまり見られないようなそばにしよう、という思いから「にしんそば」(税込480円)を購入した。
細く打たれた麺もやわらかく
訪問は平日の13時頃だったが、狭い店内はお客さんでぎゅうぎゅう。先客9人ほどで、偶然に1席のみスペースを見つけた。食券を渡し、背側に置かれた給水機で水をくみ、待つ。
厨房には店員さんが4人ほど。キャパを考えると多い気もするが、みなキビキビと動いていた。丼ものやカレーライス、焼肉ライスなどのご飯メニューもあり、セットメニューも豊富なので細かく分業されているのかもしれない。
待つこと2分ほど。にしんそば到着。そうそう、これこれ。実家で食べていた年越しそばみたい。年越しそばににしんそば、って地域性だろうか。季節外れなことには間違いないけど。甘く煮付けたにしんはホロッとくずれる。ワンポイントのナルトも彩り面でいい仕事をしている。細く打たれた麺は小麦4割とのことで、独特のやわらかさ。ツユは濃いめだが、やさしい甘い味。
その後もひっきりなしにお客は回転。なるほど、自由が丘ってオフィスのイメージはなかったが、働く人がいないわけはない。オシャレな街を支えているのは、意外にもこんな味なのかもしれない。
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。