今回は笹塚の立ち食いそばを紹介したい。笹塚駅は京王線で新宿駅から一駅。甲州街道沿いに歩いても1時間もかからないので、散歩コースにもよい。店はというと、駅を降り、甲州街道を北側に渡って「十号通り商店街」という商店街の入口にある「柳屋そば店」だ。
ちなみに「十号通り」と言うのは、その昔、西新宿にあった淀橋浄水場に流れ込む水道路に架かった橋を、新宿から数えて10番目を10号橋と呼んだことからきているらしい。気どらない古き良き商店街で、安くてうまい刺盛りをつくってくれる鮮魚店なんかもあるので、一度遊びに行くのもオススメしたい。
天ぷらは眺めるだけでも何だか楽しい
こちらのそば屋もいい感じ。地味な茶色の看板の中で、派手な黄色の短冊がよく映える。ガラス戸からは中が丸見え。店内は着席カウンターの5席のみだ。入って右手に給水機があるので、セルフで水をくみつつ口頭注文。頼んだのは「キーマカレーそば」(税込450円)。この店の名物メニューをチョイスした。
キーマカレーそばは他の天ぷらメニューより少し時間がかかる。と言っても2分くらいだ。その間、ショーケースに並ぶ天ぷらを見ると、ソーセージ、きのこ、茄子、春菊、ごぼう……じゃがいも天なんていうのもあり、見た目は完全に「まとまったフライドポテト」だったが、こぢんまりした店にしては大変豊富な取りそろえだった。カウンターに置かれた生玉子は50円。何度か通っていろいろと組み合わせてみると楽しいだろうな、と思う。
細い麺にひき肉たっぷりなカレーが絡む
そんなことを考えている内に着丼。真っ黒なツユの上に、たっぷりとかけられたキーマカレー。脇には、まるで髪飾りのように刻みネギが添えられている。
キーマカレーというと、スパイスが効いていて辛い部類のカレーをイメージされるかもしれないが、こちらのは、こっくりとした甘みにほんの少しピリ辛を効かせた、という印象。ひき肉もたっぷり使われており、とろっとしたルーは細めの麺によく絡んでおいしい。さすがそば屋のカレー、ひと味違う。
柳屋そば店は土日祝はお休み。加えて、夕方には店は閉めてしまうそうなので実食は結構ハードルが高いのだが、機会があればぜひチャレンジしてみてほしい。
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。