前回に引き続き、江戸川橋から立ち食いそばを探した。駅、目の前の目白通りを西に進めば早稲田方面へ。東に進んで行くと、やがて飯田橋駅にぶつかる。第43回で、同じ通り沿いの飯田橋・肉そば「豊しま」をご紹介したが、さほど距離の離れていないここ江戸川橋にも「豊しま」がある。東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅より徒歩1分。「豊しま 江戸川橋店」ののれんをくぐった。

  • 「元祖厚切り肉そば」(680円)(写真:マイナビニュース)

    「元祖厚切り肉そば」(680円)

威勢のよい大将が営む、居心地のいい一軒

店の戸は開けっ放し。冷暖房不要で外の風が心地よい、貴重な季節だ。早朝から営業している店だが、伺った午前10時前では先客1名と、落ち着いていた。

店内にはラジオが鳴り響き、広くとられた厨房。その縁と壁側に立ち食い用のカウンターが並ぶ格好となっている。大将は威勢がよい方で、客との距離も程よく近い。居心地は悪くない。メニューに移ろう。壁に短冊が掛かっているのは、飯田橋の方と同じ。天ぷらそばやきつねそば、たぬきそばなどが並ぶが、やはり「豊しま」といえば、肉そばだろう。よし、久しぶりにこちらを、と思ったところ「元祖厚切り肉そば」(680円)の文字を見つける。少々値は張るが、せっかくの機会なのでバリエーションを出してレポートしていきたい。こちらを口頭で注文する。

厚切り肉のインパクトが絶大!

そばは1分程で完成。真っ黒なツユに、丼を270度覆うその厚切り肉は、インパクト絶大。ラーメン界隈では、厚切りチャーシューは珍しくないが、立ち食いそばではこの手の品はなかなかお目にかかれない。まさにオンリーワンな一杯だ。残りの90度には天かすがたっぷり、中央には細かく刻まれたネギが盛られている。

肉をかじれば、ホロリとやわらかく甘い脂が口の中に広がる。通常の肉そばの方と比べて、やはり「肉を喰らっている」感覚は強い。もちろん味は濃いが、ラーメンと違い、そば自体があっさりしているので、胃にもたれる心配は意外にも少ない。ネギも新鮮でさっぱりとした香りを感じる。具材に隠れてしまっているが、麺もなかなかのボリュームで、食べごたえは十分。天かすも相まってコッテリ系の一杯、十分に堪能させて頂いた。

  • 東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅より徒歩1分の「豊しま 江戸川橋店」

食べている間、また別のお客が。「娘が出産で帰ってきていて、ここの厚切り肉そばが食べたいって言うんだよ」とテイクアウトのオーダー。飯田橋店に比べ、ゆったりした時間が流れている。良店のひとつだ。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。