新年度、新しい春の幕開けとともに張り切っていきたいところだが、如何せん、まだ寒い日が続く。こういう時、力になるのは温かいそばだ。花冷えの今日、訪れたのは三軒茶屋。趣味の「銭湯巡り」で、何度か訪れているものの、いまだに地上に上がった瞬間に東西南北がわからなくなるし、交通量のわりに道幅が狭いので、個人的には少し苦手な街だ。

  • 「菜の花天そば」(430円)

平日の午前中に渋谷駅から向かったが、下り方面といえども人・人・人は変わらず。少し閉口してしまったが、なんとか目的地の「かしわや」に到着。東急世田谷線「三軒茶屋」駅改札目の前にある"駅そば"だ。

単身者の胃袋を満たす、バリエーション豊かなメニュー

到着は9時頃。行き交う人の数は多かれど、一歩店内に入れば先客は2人。厨房でさばいているのは旦那1人で、店内は静かだ。外の忙しない空気とは一変、まあゆったり腰を下ろしてそばでもすすろうやと言わんばかりに、立ち食い席は一部のみ。2人がけのテーブル席が多い。

自動ドア出入口の左手に食券機が2台。おなじみのそば・うどんメニューと並び、カレーや豚丼などのご飯物。ラーメンもあるようだった。さらに商品は全品テイクアウト可とのこと。ここから2ブロックも離れると単身者向け風のアパートも少なくないので、需要も高そうだ。

注文は、店に入る前から決めていた「菜の花天そば」(430円)に決定。何を隠そう、菜の花は、自分の好きな野菜ナンバーワンでもあるからである。茹でてよし、炒めてよし。鮮やかな緑と青々しい香り。じゅわっと水分を多く含んだ甘みの中に、ぴりりと感じる春の苦み。この季節にしかスーパーに並ばないのも良い。もちろん、このそばも期間限定商品である。

丼からはみ出さんばかりの大振り天ぷら

水をくみ、イスにかばんを置いたくらいのタイミングで完成。丼からはみ出すほどの大きな天ぷらだ。衣は薄めでサクサク、菜の花のやわらかい茎から甘みが広がる。味わいとしては、春菊天そばにも似ているが(この店にもある)、やはりこの季節は菜の花を選びたい。細めのそばはモッチリした食感で、ツユの色は薄めだが、味は濃いめ。ネギも多めに盛られているのも嬉しい。大きめの天ぷらなので、後半は天かすがたくさん溶け出して、たぬきそば状態になったりもした。

  • 東急世田谷線「三軒茶屋」駅改札目の前にある「かしわや」

余談だがこちらの「かしわや」、この連載でも過去に紹介した学芸大店のほか、武蔵小杉や武蔵新城などにも店舗があり、鹿島田店のオープンは50年以上前からだとか。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。