2018年は副業元年と言われているが、実際には副業をしたくても、何をどうすればいいのか分からないという人が多い。そこでオススメなのが「自分の得意なことを仕事にしてしまう」というパターン。この連載では、これまで起業の相談に応じてきたクライアントの中から、スキマ時間とこれまでの経験を活かし、自分の得意なことでそこそこの収入を生み出している人を紹介していく。

釣りが好きすぎて副業にしてしまったエンジニア、きっかけは会社の経営危機

エンジニアとして働きながら「ボート釣り」のガイドを行っているTOMOさん(仮名、30代)

第11回は、エンジニアとして働きながら、釣りが好きすぎて「ボート釣り」のガイドを行っているTOMOさん(仮名、30代)をご紹介する。

TOMOさんは、勤めていた会社が経営危機に陥ったことから「どこにも安定はない」と感じ、お金の勉強をスタート。すでにアーリーリタイアを実現している人から「お金だけあっても暇。好きなことで社会と繋がっているのが幸せ」と言われたことが、副業を考えるきっかけになったのだという。

このサービスをとにかく人に知ってほしい

現在はボートで釣りのポイントに出かけてその場で釣りを教えたり、釣りたての魚を調理して振る舞ったりすることを副業にして、月に8万円前後の収入を得ているTOMOさん。しかしスタートの段階では、いかに集客するかが大変だったそうだ。

「やったことはとにかくサービス(いくらで釣りを教えます)を決めて、人に知ってもらうことです。相手の反応はなるべく気にしないようにして、そういうサービスを提供し始めたということを、会った人にどんどん伝えていきました。少しずつ人が来てくれるようになり、やがてリピーターになってくれる人も現れ、今では口コミでいろんなお客様を呼んできてくれます」と、とにかく人に伝えることを頑張ったとTOMOさんは言う。

お金は感謝が形になったもの

さらにもうひとつ、TOMOさんに大変な思いをさせたのが「お金を受け取ることへの罪悪感」だ。

「私は田舎育ちで、お金は汚いものという印象を植え付けられてきました。しかしお金に対してプラスのイメージを持つ人たちに会っていく中で、『お金は感謝が形になったもの』など、自分の中のイメージも少しずつ変えていくことができ、ようやく自信を持ってお金を受け取ることができるようになりました」という。

釣りが好きすぎて副業にしてしまったエンジニア、きっかけは会社の経営危機

釣りのサービスを提供するなかで、自分の中のお金のイメージも少しずつ変わっていったという

そうしてひとつひとつ乗り越えてきたTOMOさんだが、今でも本業とのバランスを取ることには常に注意を払っているという。とくに時間管理。これはどんな副業をする人にも共通の課題だ。TOMOさんは「時間を作ること」に意識を置いていて、「テレビを見ない」「早起きをする」「仕事を早く終わらせる」など、「やらないことを決める」のも効果的なのだそうだ。

そんなことをしてまで「釣り」の副業を頑張る理由は何なのか。ただ好きだからというだけでなく、「来てくれた皆さんが笑顔になって、楽しかったと言ってくれること。そして感謝までしてもらえること」がやりがいになっているとTOMOさんは言う。

自然を相手にどう工夫するかが勝負

とはいえ、いつもそう上手くいくわけではない。以前、釣りイベントを主催して船で沖へ出たものの、荒波に揉まれて9人中7人が船酔いでダウンし、地獄絵図になってしまったこともあるそうだ。「辛い思いを買わせてしまいました……」とTOMOさんは反省するが、天候に関しては難しい部分もあるだろう。

「自然が相手なので、たくさん釣れることもあれば、全然釣れないこともあります。それでもいかに楽しんでいただくかを考えていますし、天候で売り上げも不安定になるのでどうすれば安定的なサービスを提供できるかも考えています」

また、新規顧客を獲得するにはどうすればいいか、どのように釣りの楽しさを伝えれば、サービスを買いたいと思ってもらえるかなど、常にトライ・アンド・エラーでいろいろ試していると言うTOMOさん。この向上心が副業を軌道に乗せたことは間違いない。

現状に満足しないこと

そんなTOMOさんに今後の展望を聞いてみた。

「ここまで来られたのは、お客様に喜んでいただくことだけに集中したからだと思います。ですので、さらに釣り好きの人たちが幸せになれる、そんなコミュニティとリゾートを作りたいと思います」

  • TOMOさんが追い求めるのは人々の笑顔。釣りの楽しさを伝えたいという向上心に終わりはない

好きなことに取り組んでいる時は苦労を感じないと言うが、TOMOさんの行動もまさにそのパターンだ。自分を含め「釣り好き同士がいかに楽しく過ごせるか」、そこだけに集中しつつ、どれだけ多くの人にこの楽しさを伝えられるかという向上心も持ち合わせていることが成功の要因だと筆者は見ている。

たとえ副業であっても現状に満足せず、常に今より楽しく、その楽しさを今より多くの人に、という気持ちで取り組みたい。

筆者プロフィール: 戸田充広

趣味起業コンサルタント。全日本趣味起業協会代表理事。
趣味起業のパイオニアとしてこれまで300名以上の趣味起業家を育て、現在は全国でのセミナー、講演活動のほか、数々の講座でさらに趣味起業家を育て続けている。著書に『稼げる! 自分に合った副業が必ず見つかる! 副業図鑑』(総合法令出版)、『決定版! 趣味起業の教科書』(マガジンランド)、『消費税率アップから家計を守る! サラリーマンのための安全「副業」のススメ』(すばる舎)などがある。「全日本趣味起業協会