のんびりと旅行でき、リーズナブルな価格で絶大な支持を受けている「青春18きっぷ」が2019年も発売される。筆者もこどもの頃から何回も利用したきっぷだ。この冬は「青春18きっぷ」を利用し、山陽本線の普通列車を乗り継ぐ旅にチャレンジした。

  • 神戸~門司間を結ぶ山陽本線。山口県内では片側2ドアの車両115系3000番台の活躍も見られる(写真:マイナビニュース)

    神戸~門司間を結ぶ山陽本線。山口県内では片側2ドアの車両115系3000番台の活躍も見られる

そこで2回にわたり、山陽本線での鉄道旅行をレポートする。1回目は山口県の下関駅から広島県の糸崎駅までの行程を紹介したい。

■特急列車が乗り入れない下関駅

今回の旅の出発地は下関駅。かつて寝台特急「あさかぜ」をはじめ、九州へ向かう寝台特急「はやぶさ」「富士」「さくら」など、多くのブルートレインが停車した。下関駅で機関車の交代が行われ、発車までの間、乗客はホームで駅弁を購入したり、そばをすすったり、あるいは機関車の交代をじっくり眺めたりしたものだった。

しかし、2009年3月ダイヤ改正を最後に、下関駅に停車する特急列車は全廃。2019年1月現在、定期運転を行う列車は普通列車しか来なくなっている。

  • 「青春18きっぷ」での山陽本線の旅は下関駅からスタート

2010年には駅弁の販売も廃止されたので、駅ビル内にある商業施設で弁当を購入しなければならない。ホーム上には自動販売機があるだけで、売店も見当たらなかった。少し物寂しい駅構内だが、115系をはじめとするJR西日本所属の車両と、JR九州所属の415系がホームに停車している間は、かつての栄光をかすかに感じることができる。改めて、下関駅が本州と九州の境目にあることを実感した。

■異色の車両115系3000番台で山口県を駆け抜ける

今回の旅のトップバッターは下関駅11時47分発、岩国行の普通列車。使用車両は、かつて広島地区を中心に活躍した115系3000番台であった。

115系3000番台は115系の中でも異色の車両と言えよう。1両あたり片側2ドアで、車内には転換クロスシートが並ぶ。たとえるなら、新快速で活躍した117系と115系が合わさったような車両だった。なお、115系3000番台の中には117系を改造した3500番台を連結した編成も存在するという。

列車が下関駅を発車すると、最初に停車する駅は山陰本線が分岐する幡生駅。周辺にJR西日本の下関総合車両所があり、そこには227系の姿があった。山口県ではいまも国鉄時代の車両が幅を利かせているが、着実に世代交代の足音は聞こえてくる。

山口県内にある山陽本線の駅は、旧国鉄時代によく見られた2面3線の配線が多い。かつて山陽本線を走った長編成の列車に対応するため、ホームも長い。しかしホームの端に草が生え、中線が錆びている駅が目立った。

山陽新幹線の停車駅でもある厚狭駅や新山口駅を過ぎ、13時24分に防府駅を発車して、しばらく走ると右手に瀬戸内海が見えた。山陽本線は意外に瀬戸内海が見えるポイントは多いが、防府駅から富海駅までの区間は山陽本線上りにおける最初の絶景ポイントといえるかもしれない。堤防越しに見える穏やかな海と美しい島々の組み合わせが、なんとも瀬戸内海らしい。

ところで、筆者が乗車した列車は新山口駅で15分、徳山駅で14分も停車する。こうした長時間停車も旧国鉄時代をほうふつとさせる。新山口駅・徳山駅ともに山口県内における主要駅のため、大半の乗客が下車する。筆者は停車時間を利用してトイレ休憩を取った。

終点の岩国駅には15時11分に到着。下関駅を発車してから、すでに3時間24分が経過していた。

■227系でイメージが一新した広島地区

岩国駅で15時20分発の糸崎行に乗り換える。待っていたのは2015年にデビューした227系だった。近年、山陽本線を走る115系でも転換クロスシートの導入などが進められたが、やはり新車の227系は段違いに快適だ。なにより車内が明るいのがいい。また、和式トイレが多い山陽本線の普通列車において、車いす対応の洋式トイレが導入されたことは特筆に値する。

  • 広島地区の山陽本線(三原~岩国間)は3月16日のダイヤ改正後、すべての列車が227系による運転となる

筆者は車窓を観察するべく、窓側の座席に座った。227系では窓側座席に肘掛けを設置していないが、幅の広い窓の桟が肘掛けの代わりになる。227系は新車らしく、スムーズな走りで山陽本線を駆け抜けていく。

15時43分、宮島の玄関口にあたる宮島口駅に停車。ここで多数の観光客が乗車し、車内が一気に活気づいた。宮島口駅から横川駅まで、各駅で高校生をはじめ多くの乗客が乗り込んできて、3両編成の車内は大混雑となる。広島地区の115系が4両編成を基本としていたことを思うと、広島市中心部の混雑に対し、3両編成というのは輸送力が不足しているのではないかと感じる。16時11分に広島駅に到着し、帰宅客が一気に乗り込んできた。

16時34分に瀬野駅を発車すると、昨年発生した西日本豪雨(平成30年7月豪雨)により、徐行区間がある旨の車内放送があった。急にスピートが落ちたので、車窓を見るとえぐれた斜面が目の前に見える。山陽本線が長期間運休となるなど、甚大な影響を与えた西日本豪雨の爪あとは深いようだ。西条駅でまとまった降車があり、大混雑は解消された。

ちなみに、広島地区の各駅では、ホームのいすや表示板がリニューアルされていた。新車の227系と相まって、まるで大手私鉄の駅を利用しているような気分になった。

列車は西条駅から先も徐行運転を行いつつ、17時42分に終点の糸崎駅に到着。向かい側のホームに停車中の岡山行の普通列車に乗り換えた。

なお、西日本豪雨の影響により、広島地区・山口地区の山陽本線ではダイヤ改正前日の3月15日まで特別ダイヤが実施されている。糸崎発下関行の長距離普通列車として、鉄道ファンの間では知られた存在だった下り普通列車369Mも運転されていない。これに代わる列車として、白市駅18時20分発・下関駅23時50分着の普通列車が設定されている。