インターネット上で見かける「これ、本当? 」などと感じる健康に関する「都市伝説」の真偽に迫る本連載。今回のテーマは「しゃっくりと体調の関係」だ。
横隔膜のけいれんとして知られているしゃっくり。ある日突然やってきて、「ヒック、ヒック」と私たちに言わせるだけ言わせ、いつの間にか去っていく。気になる人はほんの数分出ただけでもイライラするだろうから、自分なりの「止め方」を持っている人も多いはずだ。そうでなくても、大半は自然とおさまる。
ただ、感覚的に「もうそろそろ止まるだろう」と思っている頃になっても一向にやむ気配がないと、「いつ止まるのか」と不安にかられることも少なくない。そんなとき、ネット上に流れているこんな都市伝説を目にしたら不安な気分になるだろう。
「しゃっくりを100回すると死ぬ」。
仮にこの伝説が本当ならば、「岡崎さ、この間急逝しちゃったじゃん? 死因はしゃっくりらしいぜ。最後の1時間はなんとか止めようと、泣きながら必死にいろいろ試していたみたい」などと言われる可能性があるってこと? なんかそれ、悲しい……。というか、100回って意外とすぐにカウントできてしまうのでは?
いてもたってもいられなくなったので、高島平中央総合病院脳神経外科の福島崇夫医師に「このうわさ、本当なんですか? 」と直撃してみた。すると、「よほどのことがない限り、しゃっくりだけで死ぬというのはありえないですね」との回答があった。どうやら、この都市伝説は「嘘」らしい。ほっと一安心……。
「ただですね、吃逆(きつぎゃく: しゃっくりのこと)が脳幹の機能障害である可能性はあります」と続ける福島医師。うん? 脳幹??
「脳幹は脳の生命維持装置とも呼べる大切な場所です。吃逆が出ているだけで『脳の病気です』というのは乱暴ですが、嚥下(えんげ: 食べ物を飲み込む作業)障害や物が2重に見えるなどの眼球運動障害、さらにはろれつが回っていないといった症状を伴う場合は、脳梗塞や脳腫瘍が隠されている可能性があります」。
マ、マジ……!? ということは、あくまで脳の病気の複合要素の一つではあるものの、しゃっくりが何かしらの脳疾患の"サイン"という可能性があるということか……。
今後しゃっくりに襲われた場合は、すぐに止めようと躍起になる前に、その他に「いつもの自分」と違う点がないかをしっかりと見極めるようにしよう。
※写真と本文は関係ありません
記事監修: 福島崇夫(ふくしま たかお)
日本大学医学部・同大学院卒業、医学博士。日本脳神経外科学会専門医、日本癌治療学会認定医、日本脳卒中学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医。大学卒業後、日本大学医学部附属板橋病院、社会保険横浜中央病院や厚生連相模原協同病院などに勤務。2014年より高島平中央総合病院の脳神経外科部長を務める。