連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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アラサーの人たちって、何となく「国の年金はアテにならない」と思っていませんか? 実際に自分で調べたわけではないのに、国の年金に対してネガティブなイメージを持ったり、期待できないと思い込んだりしているのではないでしょうか。実は国の年金はとってもおトクなんです。

国の年金はとってもおトク(画像はイメージ)

国の年金は死ぬまで受け取れる

前回見たように、確かに現在の高齢者は国の年金だけでは生活費が足りない状態です。でも、国の年金には大きなメリットがあります。

その1つは"終身"受け取れること。終身とは死ぬまでということです。現在の平均寿命は男女とも80歳を超えています。平均ということは、もっと長生きする人もいるわけですが、90歳になっても100歳になっても、国の年金が途絶えることはありません。これは心強いですよね。

もし国の年金と同じ額の年金を生命保険会社の終身個人年金で受け取ろうとしたら、保険料がとんでもなく高くなってしまいます。国の年金の財源は半分が税金なので、保険会社には到底できないような高い給付ができるのです。

もちろん、国の年金は働かなくても病気になっても受け取れるので、ある意味で"不労所得"です。現役時代は働かないと収入が得られないのに比べて、とてもありがたい仕組みとだといえます。

国の年金には"障害""遺族"もある

"年金"というと"年をとったときにもらうもの"というイメージがありますが、国の年金には65歳以降に受け取る老齢年金のほかに、障害年金と遺族年金があるというのもメリットです。

障害年金は、ケガや病気などで高度障害を負ったときに受け取れます。民間の保険会社の保険でも高度障害を負ったときに保険金が受け取れるものがありますが、ほとんどの場合は1回支払われて終わりです。それに対して、国の障害年金は高度障害状態が続く限りずっと受け取れます。

国の年金は20歳から60歳までの人すべてが加入します。20歳以上であれば、学生でもアルバイトでもフリーターでも国民年金の保険料を払わなければなりません。でも、うっかり、あるいは意図的に、保険料を払っていない人もいます。そういう人が車やバイクの事故、スポーツをしているときの事故などで高度障害を負っても、障害年金は受け取れません。国民年金の障害年金は重度の障害の場合、年間約100万円。これがあるとないとでは、その後の生活が大きく違ってきます。

ですから、国民年金の保険料は必ず払うこと。学生の間は支払いを猶予する制度があるし、経済的に払えない場合は手続きをすれば保険料が免除される仕組みもあるので、払い漏れ、手続き漏れがないようにしてください。

国の年金には亡くなった人の遺族が受け取れる遺族年金もあります。国民年金の遺族基礎年金が受け取れるのは亡くなった人の配偶者で高校卒業前の子供がいる人。サラリーマンの場合は、それに遺族厚生年金が上乗せされます。シングルの人が亡くなって親が健在なら、親が遺族厚生年金を受け取れます。

理解して、足りない分は自分で補う

こうして見てみると、国の年金制度はかなり手厚いといえるでしょう。それを知らずに「国の年金は駄目だ」と思い込むのはよくありません。年金制度を理解した上で、それで不足する分を自分で備えることが大切です。

また、年金制度はこれから大きく変わっていくし、変わってもらわなければ困ります。ですから、年金制度がどうなっていくかをウォッチすることも必要です。 老後の生活を支える柱となるの国の年金。それをきちんと知ることが、老後破産の回避につながります。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。