10月も終盤となり、親しい人やお世話になった人にお歳暮を贈ろうと考えている人もいるだろう。
近年はお歳暮を巡って、「若者はお歳暮を贈らない」「儀礼的な性質から企業も廃止した」という話も聞く。しかし、富裕層の間では、プレミアムな「冬の贈り物」としての新たなトレンドが生まれているらしい。
今回は大丸松坂屋百貨店本社営業本部でギフト企画運営を担当する田中直毅氏に、近年のお歳暮トレンドや今年おすすめのプレミアムギフトについて話を伺った。
■「お歳暮」ではなく「冬の贈り物」に扱いをチェンジ
現在、個人間のお歳暮売り上げを担うメイン層は70代。20年前の主な購買層が50代であると考えると、もともとお歳暮を贈る習慣があった層が現在も、購買の中心を担っていることがわかる。
しかし、団塊世代と呼ばれる70代も消費活動からは撤退していく。さらに儀礼的な性質から、お歳暮を贈りあう習慣のない若者層には支持されず、結果としてお歳暮やお中元ジャンルは縮小傾向にある。
そのため、近年の大丸・松坂屋では「お歳暮」という言葉を使わず「冬の贈り物」と題した取り扱いをしているとのことだ。
「人と人がモノやサービスを通じてコミュニケーションを取るという文化は絶えません。『あの人はこれが好きだから、これを贈ろう』『この商品を食べて美味しかったから、これを』といった、相手の顔を思い浮かべたコミュニケーションとしての需要が高まっています。」
「この傾向は通年ありますが、もともと弊社がお歳暮やお中元の季節に商品やコンテンツを提供していることもあり、贈答の機会も冬と夏に集中しています。」と現在のお歳暮市場を語った。
■ニューリッチのギフトトレンドは「お気に入りのお取り寄せを大切な人に」
縮小傾向にあるお歳暮市場だが、「相手を思うコミュケーション」が生まれた結果、顧客のとある傾向が見えてきたそうだ。
「お客様の中で顕著な行動に『自分が食べてみておいしかった商品を贈ろう』という動きがあります。ECサイトでは、ご自宅に送付した商品と同じものを、ギフトとして贈る場合があることに注目しています。」
その動きを狙って展開しているのが「GOHOUBI」。自宅用にもギフトとしても、主に若年層が好むスイーツを中心に、お取り寄せにオススメの商品がまとまっている。
今年で発行5回目を迎えたカタログはもちろん、特にECサイト上での展開に注力しており、仕事やプライベートで忙しい毎日でも上質な暮らしを楽しみたい、若い世代の顧客をターゲットの中心に据えているとのこと。いわゆる“ニューリッチ”と呼ばれる層だ。
「まずはお取り寄せとして楽しんで、気に入ったらお歳暮として差し上げる。特別に何もせずにコミュニケーションとして贈るというコンセプトで提案しています。」
「ニューリッチの方々はちょっとした手土産のように、お歳暮やお中元といった感覚に関係なく良いものを贈りたいという感覚があります。そこで興味をもってくださるのが、特定の地域で人気があるがあまり有名ではない商品や、人気はあるもののポップアップストアでしか出店しない商品といった、知る人ぞ知るギフトです。」
相手に喜んでほしいという気持ちがあるからこそ、高価格帯の商品にはこだわらず、入手自体がプレミアムな商品にも注目が集まっている。
■富裕層に愛されるのは"レアさ"が売りのプレミアム商品
このような新トレンドを踏まえて、富裕層の間で話題を呼ぶであろう商品を田中氏に聞いた。
1つめは北海道発のスイーツ「SNOWS」のスノーサンド。ギフトカタログに掲載して販売できるのは限られた店舗、販売数も少ないため希少さが売りの商品だ。
続いて、もともと外商顧客限定で紹介していた商品をラインナップした「ザ・プレミアム・セレクト」の中から、「クロッサム モリタ」の「もりたなか牛」。
「クロッサム モリタ」は肉好きの間で話題だが、予約が取れないお店。素材と生産者に真摯に向き合って、至高の肉料理体験を提供している観点から、田中氏は「富裕層が贈りたいと思う商品」と胸を張る。
さらに「旅行してでも食べたい」という声が富裕層からあがる名店監修の生ハンバーグも登場。ミシュランの一つ星を獲得した、能登の人気店「一本杉川嶋」のあらびきハンバーグのセットが百貨店ギフトとして初の展開となる。
今年は「想いを、つなぐ」というテーマでお歳暮ギフトを提供している大丸・松坂屋。
最後に田中氏は「人と人とを繋いでくれる商品を、富裕層の方々は百貨店に期待しています。百貨店のオリジナル商品や限定品、老舗とのコラボ商品など、これからのトレンドに合わせて力を入れて展開していく予定です。」と今後の展望を明らかにしている。
※画像を含め、紹介している商品は販売終了の場合があります。