2010年代後半から、ジャパニーズウイスキーの人気が急上昇し「国産ウイスキーバブル」とも呼ばれるほどの価格高騰が続いていました。ところが、2024年に入ってから「山崎」をはじめとする人気銘柄も値を下げるようになり、一部で「国産ウイスキーが大暴落か」との報道もあります。

国産ウイスキーバブルの崩壊は本当なのでしょうか。大手買取専門店「買取大吉」の鑑定士である木村健一さんに実際のところを聞きました。

  • ジャパニーズウイスキーの相場はどうなっている?

「山崎25年」の二次流通価格が約15%下落

――一部で「山崎」をはじめとする国産ウイスキーが暴落かという報道もありますが、実際のところはどうなのでしょうか?

確かに、ジャパニーズウイスキー相場が一時期よりも落ち着きを見せているのは事実です。「山崎25年」を例に挙げると、2015年9月頃の二次流通価格は21万円でしたが、その後急激に需要が高まり、品薄になった結果、2022年6月頃には125万円まで価格が高騰しました。ところが、2024年8月には105万円程度になっています。

ただ、価格が下がったとはいえ、メーカー希望小売価格が36万円(税別・2024年10月現在)であることを考えると、今も相当高い水準を維持しているので「暴落」は言いすぎではないでしょうか。「山崎」に限らず、「響」や「白州」も似たような値動きをしていますね。

値下がりの背景に中国の不景気

――まだまだ高い水準を維持しているとはいえ、ジャパニーズウイスキーの相場が下がっている背景には何があるのでしょうか。

中国経済の影響が非常に大きいといわれています。ジャパニーズウイスキーは中国でのニーズが大きく、中国の方が買い占めることによって日本国内の在庫がなくなるという状況が見られましたが、最近は中国の景気悪化やロックダウンの影響で中国人の購入量が減少傾向にあります。相場のピーク時は輸出分だけでなく国内流通分も中国のバイヤーに流れていましたが、中国人の購入量が減ったぶん、一時期よりは国内で入手しやすくなっています。

――中国経済の影響が大きいということは、スコットランドなど海外産ウイスキーの相場も下落しているのでしょうか?

有名どころでいうと「ザ・マッカラン」などがありますが、海外産ウイスキーの相場も多少下がっています。とはいえ、一番大きく影響を受けているのはジャパニーズウイスキーですね。

少量生産メーカーは値下がりしにくい

――国産ウイスキーで値下がりをしていないメーカーはありますか?

秩父蒸溜所の「イチローズモルト」でしょうか。「イチローズモルト」は100本限定など、少量生産かつジャケットのデザイン性が高く、インテリアとしての需要も高いため、値下がりがしにくい傾向にあります。

「山崎」のように大手メーカーが作っているウイスキーは比較的生産数が多いため、お金さえ出せば手に入ります。一方、生産数が少ない銘柄はめったに市場に出回らないため、市場に出てきたときは取り合いになります。「イチローズモルト」のように、お金を出してもなかなか買えない銘柄は値下がりしにくいですね。

多少の値下がりはあっても暴落は考えにくい

――今後のジャパニーズウイスキー相場の見通しを教えてください。

最近は、ウイスキーに限らず、物価全般が上がっている中、物価水準に合わせてさまざまな商品の値上げが行われています。そして、ブランドが一旦値上げした商品を値下げすることはめったにありません。

今の傾向を見る限り、ジャパニーズウイスキー相場がもう少し下がる可能性はありますが、そもそも定価が上がり続けることを考えると、二次流通価格が大幅に下落することはないでしょう。

――ジャパニーズウイスキーを売りたい場合、売りどきはいつでしょうか?

もう少し値下がりする可能性があるので、今売りたいと考えているなら早いほうがいいのではないでしょうか。特に、値上がりを見越して投資目的で購入された方は今のうちに売却したほうがいいかもしれません。

ピーク時に比べて落ち着きを見せたとはいえ、まだまだ高い相場を維持していることに変わりはないので、ずっと家に置いてあって整理したいという方も早く売却を検討されたほうがいいと思います。

人気銘柄は依然として入手困難

――ピーク時よりも相場が下がったとはいえ、依然として「山崎」などの人気銘柄は入手困難な状況が続いているそうですね。

はい。今も需要が供給を上回っていることに変わりはないので、人気銘柄が定価で小売店に並ぶことはほとんどありません。百貨店などで販売される際は抽選が当たり前になっています。

先日訪れた飲食店では、「山崎」を使ったハイボールを1杯5,000円で提供していました。昔は1杯600~700円程度だったことを考えると驚きの値段ですが、裏を返せば5,000円払っても飲みたい方がいるということです。

それだけジャパニーズウイスキーの人気が高いということ、ウイスキーに限らず、今ハイブランドはどこも値上げが続いていることを考えると、「山崎」をはじめとする人気銘柄が大幅に値を下げる可能性は低いでしょう