結婚式のケーキカットでは、「新郎新婦、初めての共同作業です」とか言う。おっさん臭い意見を言ってみるとすると、「え~、ふたりはまだ結ばれてないんですか」ていうか。夜の共同作業……なんちて。いやいや、でも真面目な話、式の準備やらなにやら、もうすでにいろんな共同作業はしてると思うが、どうだろう。そんなお菓子なことが初の共同作業でなくても。

いきなりおかしな話で始まって申しわけないが、共同作業というと、やはりこれに勝るものはない、というのがある。「ふたりで大変な場所から脱出する」だ。『風の谷のナウシカ』で言えば、腐海の底に落ちたアスベルとナウシカとか。『紅い牙 ブルーソネット』で、ソネットとバードが富士山の内部でウロウロするところとか。

一見密室で、なんとかそこを抜け出さなければいけなくて、ふたりで知恵を絞りあって、ちょっと危険な目にあったりしながら、その場を脱出するっていうのは、まー日常生活ではまずないだろうけど、できたらふたりの絆がしっかり結ばれそうで、いいな。ふたり一緒に困難を乗り越えたら、しばらく浮気はなさそうだ。

ちなみに今、携帯の乙女ゲームのシナリオ執筆をちょっとやらしてもらっているのだが、「修学旅行先で、夜の巡回に来る先生の目を盗んで、男女が逢い引きをする」というシーンを作ってみた。ハラハラのドキドキと恋愛のドキドキって、割とそっくりで脳みそも大いに勘違いしてくれそうだよな。

さて『シュガシュガルーン』にも、クールな中学生で悪の魔法使いピエールと、元気な魔法少女ショコラが、「忘れられた通路」という大変危険な異世界に迷い込むシーンがある。しかもショコラは海水浴中だったので、水着を着ており、ショコラにシャツを貸したピエールは半裸なのである。やらしいなあ、はあはあ。

当たり前の話だけど、自分の危機を救ってくれた男というのは、女の永遠の萌えである。小さなところでは、痴漢を撃退してくれたとか、酔っぱらいに絡まれたところを助けてくれたとか。車に轢かれそうになったところを、マッハで飛び出し、ゴロゴロと抱きかかえて助けてくれたりしたら、その場で結婚を申し込んじゃいそうだ。

『シュガシュガルーン』の「大変な場所から大脱出共同作業」のきっかけは、ショコラが魔法で作られた海を泳いでいるときに、力尽きて溺れたところを、高見の見物していたピエールが急いで飛び込み、引き上げようとしてくれたところから始まる。結局、魔法が消滅(?)して、海が消えてしまい、ピエールとショコラはそれに巻き込まれて、「忘れられた通路」に迷い込むことになった。ピエールは、あんまりたいしてショコラを助けてはないんだけど、「ここは忘れられた通路だ」とか「ネアンだ」とか、まあ危機になるたびにいろいろ教えてくれるし、助けるところまでいってないけど、誘導はしてくれている。ええじゃないか、ええじゃないか。

そんなところで、クマほどもでっかい蜘蛛が現れたり、宇宙空間みたいなところをさまよったりする。そのたびに、ふたりで初の共同作業を行い、その場から抜け出すのだ。ああ、そうそう、ふたりはそれまで魔界の王国の後継者候補であるショコラと、王国と敵対するオグルの王子という立場から、敵同士だったのだ。それまでの話は「お互い敵同士なんだけど、すごく気になっちゃう」という萌え萌えで進んでいたのだが、この半裸で異世界萌えの後は、急激にふたりの仲が深まり、「お互い敵同士なんだけど、めちゃくちゃ好きあってる」という、ロミジュリ萌えへと移行する。

ふたりがめちゃくちゃ好きあうきっかけは、間違いなくこの「共同作業」だ。「忘れられた通路」から脱出するため、力を合わせる必要があり、力を合わせるためには、心を通わせる必要があった。好きな男とは、心を通わせたいのが女という生き物。「大変な場所から大脱出共同作業」シーンが萌えなのは、そんな願いが叶えられるからなのだ。

実は今、プチ片思いをしているのだが、普通にしていたらゼッタイうまくいかない相手である。今度会ったら、無理矢理マンホールかなんかにふたりで入り込んで、努力とガッツと共同作業で、そこから脱出してみようかな。少女漫画的には、それでガッチリうまくいくはずである。
<つづく>