• 一人暮らしを味わい尽くす新生活術。愛着がわくモノしか置かない「部屋づくり」/YouTuber・奥平眞司

暮らし系ユーチューバーとして多くの人から支持を集める奥平眞司さん。誰しも一人暮らしを始めるときには「自分だけの城で、日々の暮らしを大切に過ごしたい」と理想を思い描くが、現実はままならないもの。生活リズムはいつのまにか乱れ、部屋には不用なモノがあふれている。一人暮らしの達人は、いったいどんなことに気をつけているのだろうか。一日の過ごし方や片付け方、モノ選びのコツを奥平さんがつづった。

早寝早起きがルーティン。生活習慣を崩さない

朝は5時に起きて、ゆっくりと朝食をつくる。和食が食べたいときは、前の晩から水に浸した昆布と、たっぷりのカツオで一番出汁をとるところから始めます。パンの気分のときは、前夜からホームベーカリーに材料をセット。気合を入れて手ごねパンにすることもあります。寝る前に「明日のおかずは何にしよう」と、あれこれ考えるひと時も楽しいですね。片付けを終えてコーヒーを淹れたら、仕事モードにオン。YouTubeの動画編集の作業などを中心に、7時から夕方5時まで、ちょこちょこ気分転換を図って、集中力を高めながら作業をしています。

仕事を終えると、ランニングや夕食の買い出し。夕食もリラックスしながら時間をかけてつくります。食後に配信の映画などを見て寛いだ後、10時には就寝。体調管理のため睡眠7時間はマストです。休日は週2回、火曜日と水曜日と決めています。平日を休みにするのは、カフェや美術館などが空いているから。最近はコロナの影響で「おうち時間」がさらに増えましたが、基本的にはこんな毎日を過ごしています。

規則正しい生活を心がけるのも、時間をかけて食事をつくるのも、「暮らし」をとことん楽しむため。よく「丁寧な暮らしですね」と言われますが、自分ではニュアンスがちょっと違うと感じています。「楽しい」「心地良い」を追い求めていったら、自然と今のスタイルになった。もちろん今も完璧ではなく、ひょっとしたら永遠に完成する時はないかもしれないけど、それも含めて楽しんでいます。

テレビなし。片付けも部屋づくりも「引き算」で

「丁寧な暮らし」のほかに、「ミニマリストですか?」という質問もよくされますが、これはちょっと違います。確かに僕の部屋はすっきりしていますが、キッチンには大好きな調理道具がいっぱい。フライパンも7つあります。ただ、一つひとつのモノを丁寧に選んで、見せ方も工夫することで、結果的にモノが減り、すっきりした感じになりました。好きなモノだけに囲まれた空間はストレスもなく快適です。

僕は決して几帳面な性格ではありません。大学時代の一人暮らしのアパートはごちゃごちゃとモノがあふれ、ろくに掃除もできない、典型的な「男の子の部屋」でした。それが少しずつ変わっていったのは、上京してデザインの専門学校に通ったことがきっかけです。なぜ、なんのためにモノがあるか、どこに置くべきかなど、デザインの本質を突き詰めて学ぶなかで、無駄なものを徹底して省く「引き算」の発想を教わりました。これは暮らし方につながる学びです。おのずと自分の部屋にも意識が向き、不用品をなくす整理整頓を心がけるようになりました。

だから僕の部屋には、テレビもありません。もっとも、テレビを手放したのは不用というより「好き過ぎる」からです。家にいるとついついテレビをつけて見入ってしまうため、やるべきことができず、時間を無駄にしてしまいます。テレビをなくしてからは、計画通りに時間を使うことができ、趣味も増えました。自分の暮らしを思うようにデザインし、コントロールできる。テレビというエンタメの代わりにそんな「豊かさ」が得られました。

高くてもずっと愛用できるモノを選び抜く

部屋にモノがあふれていた頃は、今思えば、生活の道具も「これでいいか」と妥協して買っていました。妥協して選んだモノには愛着が湧きません。ほぼ使わないことに気づいて処分し、それからは一つひとつの道具をしっかりと吟味して購入しています。「本当にほしいモノ」を買うポイントは、対象に愛着が抱けるかどうか。衝動買いはまったくせず、性能・手触り・デザインなどあらゆる情報を集めて慎重に検討しています。高価なモノでも「好きになれそう」なら思いきって購入。使えば使うほど味わいが出て、愛着も増すので、長い目で見るとおトクです。

たとえばご飯は土鍋で炊いています。以前から“土鍋ご飯”に憧れていたものの、「難しそう」とためらっていたのですが、炊飯用の土鍋があると知り、吟味したうえで購入しました。意外と簡単で、ふたを開け、美味しく炊けたサインの「かに穴」が見えたときは毎回感動しています。微妙な出来上がりのときもありますが、それも一興。今では自分のコンディションやその日の好みに応じて、柔らかめ・硬めにしようと、自在にガスの火を調整できるようになりました。

好きなモノに囲まれて楽しく暮らしたいから、自然とDIYにも熱中するようになりました。初めてのDIYは、一人暮らしを始めた大学時代です。浜辺を散歩していたとき、面白い形の流木を見つけ、オブジェとして部屋に飾ったのが始まりでした。そこから流木を探してはサイドテーブルや照明スタンドをつくるようになり、次第にDIYにハマっていきました。当時住んでいた場所が海と山しかないところだったことが大きかったかもしれません。自分の部屋で過ごす時間がたっぷりあったことで、暮らしの大切さを意識するようになりました。まずは自分の生活空間と向き合ってみる。それが「楽しい暮らし」の出発点だと思います。