社会に出たばかりの新入社員に対し、「うまく褒めたり叱ったりできているだろうか……」「変に傷つけてしまっていないといいけど……」と不安な人も多いのではないでしょうか。前回に引き続き、マイナビで「OJTトレーナー研修」を開発・販売している同社・教育研修事業部の新山さんにお話をお聞きしました。新入社員を傷つけない褒め方、叱り方について具体的にご紹介していきます。

  • 傷つけない褒め方、叱り方

傷つけない褒め方とは?

まずは、「傷つけない褒め方」の3つのポイントについてご紹介します。

1. 本当にいいと思ったことを褒める

新山さんによると、「新入社員だからといって、適当に思ってもいないことを褒めると、その気持ちも一緒に相手に伝わります。すると逆に自尊心を傷つけてしまうので、タイミングも考えつつ本当に思ったことを褒めるようにしましょう」とのこと。口では褒めたつもりでいても、目線や声色、しぐさなどでつい本心が出てしまうことも多くあります。

新入社員を普段からよく見ておき、本当に「いい」と思ったことについて褒めるようにしましょう。また、本当にいいと思ったことでも、後で思い出したように褒めると「本当にそう思っているのかな……」と疑われてしまいます。いいと思ったらすぐその場で褒めると、気持ちがきちんと伝わります。本人が「本当に褒められている」と実感できる形で褒めてあげましょう。

2. 小さな成功体験を積み重ねる

新入社員が大きな成果を出すことはなかなかないので、小さなことからどんどん褒めてあげましょう。本当にいいと思うことが「大成功」しかないとしたら、褒める機会がほとんどなくなってしまいます。そしてまったく褒められないと、そのこと自体に傷ついてしまう新入社員もいます。失敗することや間違えることが多い新入社員のうちは、小さな成功体験を積み上げて、やる気を引き出すのが得策です。「前回よりもうまくできた」「一度で覚えた」など些細なことでもかまいません。

新山さんによると、最近の新入社員は「自分はできる! 」という自信を持って入社してくる傾向にあるとのこと。なるべくその自信を否定せず、その都度褒めて喜べるようにすると、うまく新入社員の能力を伸ばしてあげることができます。

3. 褒めるときはみんなの前で

とくに褒めたいことがあるときは、職場のみんなの前で褒めましょう。周囲にも聞こえるように褒められるのは、「他の人にも聞いてもらえている」と思えてうれしいものです。そして、それを聞いた周りの社員が新入社員に話しかけるなど、「褒めの輪」が広がっていくこともあります。「他の先輩にも認めてもらいたい」と思っている新入社員と、「新入社員と話すきっかけが欲しい」と思っている先輩職員の橋渡しになることもあるので、いいことは積極的にみんなの前で褒めるようにしましょう。

傷つけない叱り方のポイント

では、次は傷つけない叱り方のポイントについて見ていきましょう。以下で3点ご紹介します。

1. 「怒る」のではなく「叱る」

「叱る」ことと「怒る」ことは違います。「怒る」のではなく「叱る」のが、効果的に指導を行うコツです。この2つの違いは、「叱る=理性的・相手のため・相手が理解できるように伝えること」、「怒る=感情的・自分のために・自分の言いたいことを言う形で伝えること」です。ミスを叱るときは、感情に任せて怒るのではなく、落ち着いて認めるべき点は認めながら、理性的に伝えるのがコツです。

2. プロセスについて叱る

注意する必要があるときは、「結果」ではなくその「プロセス」について叱りましょう。新山さんによると、「結果には、取引先の都合やタイミングなど、実力ではコントロールしにくい要因が多数関わってきます。そのため、結果について叱ると、実力というより人格の否定につながってしまうこともあります。自分でコントロールできる範囲の内容で叱ってあげるとよいでしょう」とのこと。新入社員が改善できる「プロセス」の部分について言及することで、素直に納得し改善に努めるよう導くことができます。

3. 誰もいないところで叱る

叱るときは、そっと個室に呼ぶなどしてなるべく他の人がいないところで叱りましょう。叱る内容は本来、新入社員本人にだけ伝わればいいものです。みんなの前で叱ると、本人も「他の人にもダメな奴だと思われただろうな……」「そんなにいけないことをしてしまったのか……」と余計に落ち込んでしまい、プライドも傷ついてしまいます。新入社員の積極性や自信を奪うことにもなりかねないので、叱る場所はなるべく誰もいないところを選びましょう。

まとめ

傷つけない褒め方のポイントとして

  1. 本当にいいと思ったことを褒める
  2. 小さな成功体験を積み重ねる
  3. 褒めるときはみんなの前で

傷つけない叱り方のポイントとして

  1. 「怒る」のではなく「叱る」
  2. プロセスについて叱る
  3. 誰もいないところで叱る

の計6点をご紹介しました。

どれも、「新入社員の気持ちを考えて行う」ということが大事です。そのためには、普段からよく新入社員のことを見ておくことが必要です。普段の様子から、「この子ならどう思うか」「どう言ってあげるのが適切だろうか」と考え、その人に合った褒め方・叱り方を見つけていきましょう。