新人社員を教育する係である「OJTトレーナー」。この春から任命された人も多いのではないでしょうか。とはいえ、初めての人の教育を任されるというのは緊張するもの。何をどう進めれば新入社員のためになるのか、不安になりますよね。
そこで今回、OJTトレーナーの役割や基本的な進め方について、マイナビで「OJTトレーナー研修」を開発・販売している同社・教育研修事業部の新山さんにお話をお聞きしました。これを読めば、明日からの指導にもきっと自信が持てるようになりますよ。
教え方の3ポイント
みなさんもご存じのとおり、OJTとは「On the Job Training」の略称です。つまりOJTトレーナーは、実際に仕事をしながら、仕事の仕方や態度について新入社員に教えるという役割を持っています。ただし、単に教えればいいというわけではなく、新入社員の仕事に寄り添い、「意図的・計画的・継続的」に教えながら、能力アップを図っていくことが大切です。
【意図的に教える】
「この人はどういった能力を身に付けるべきか?」「この会社で活躍するにはどのようなことを教えればよいか?」など、教えることを意図的に選び、掘り下げるなどして担当の新人社員に合った教育を行います。新人社員の仕事に寄り添いながらも、「現場の雰囲気を伝えるために自分の営業に同行してもらう」「覚えてもらうために一度教えたら次からは任せてみる」など、OJTトレーナー自身も常に考え、目的を持って教えることが重要です。
【計画的に教える】
最初に「いつまでに」「何を」「どのレベルまで」教えればよいかを決め、そこから逆算して計画的に進めましょう。そうすることで、教えるべき事項のヌケ・モレを防ぎ、必要な時期までに適切な事項を教えておくことができます。教える順番にも気をつけつつ、教えにくいことは数回に分けるといったように工夫をしながら、計画的に教えていきましょう。
【継続的に教える】
PDCAサイクルを意識し、継続的に学びのサイクルを進めていきましょう。教えっぱなしにするのではなく、できた時は褒め、できなかった時はその原因と改善策を考えます。1つ達成したら次の課題を与え、できなかった場合はもう1度同じ課題に挑戦させるなど、途切れることなく教育を続ける姿勢が必要です。
OJTの進め方―3つのポイントー
では、実際どのように教えていけばよいのでしょうか。OJTを進める際の3つのポイントを見ていきましょう。
1. OJT計画書の作成
OJT業務は基本的に約1年間という長丁場です。「意図的・計画的・継続的」に実行するためには、事前の計画書の作成が欠かせません。具体的には、
- 目指すべき姿(育成目標)の設定
- 実施項目の洗い出し・把握
- 育成計画書の作成
という3ステップを経て作成します。トレーナー業務が始まる前に作成するには、任命されてからすぐ取りかかるのが望ましいでしょう。
なお、OJTトレーナーだけで作成するのではなく、上司や同僚にも相談・報告しながら作成することで「会社や部署全体で新人社員を育てる」という雰囲気を作っておくことも非常に重要なポイントです。
2. PDCAサイクルにのっとり実行
作成した計画書をもとに、PDCAサイクルにのっとって業務を実行します。「必ず結果を報告させる」「失敗したら原因と改善策を共に考える」など、"投げっぱなし"にせず適度に関わることで、新入社員がPDCAサイクルを回せるよう手助けをします。最終的には、新入社員が1人でPDCAサイクルを回していけるようになることが理想です。
3.実行する時の5つの手順
実際に仕事を教える際の手順にもコツがあります。その手順とは、
- やって見せる(見本を示す)
- 言って聴かせる
- させてみる
- 成功させ褒める
- 継続させる(習慣化する)
の5ステップです。
まず、OJTトレーナーが見本を見せながら基本を教えることで大体のイメージを伝え、その作業の意味や目的を説明します。その上で実際に挑戦させてみます。
この時、細かいことは注意せず、全体の流れをつかんでもらうことに気を配りましょう。そして褒めることで達成感を持たせ、新入社員の自信につなげます。作業を忘れないうちに繰り返させ、習慣化させましょう。
OJTのコツは「自分にもメリットを感じること」
では、具体的に進めるにあたってのコツなどはあるのでしょうか。新山さんによると、「自分にもメリットを感じながら行うことが大事」なのだそうです。
「OJTトレーナーに任命された場合、自分の業務に加えてトレーナー業務が増えるので、時間的・精神的負担がかなり増えます。しかし、大変だからこそ自分の力になるのも事実です。人に何かを教えるためには、自分でそのことをよく理解する必要があります。OJTトレーナー業務は、自分の業務を『棚卸し』することにもなるので、そういったこともしっかりと意識しつつ進めていくことが大事です。そしていずれ自分が管理職になった時、その経験が活きてくるでしょう」
まとめ
今回の記事では、
OJTトレーナーの役割
新入社員の仕事に寄り添いながら「意図的・計画的・継続的」に教え、能力アップを図っていくこと
OJTの進め方
- 計画書の作成
- PDCAサイクルにのっとり実行
- 5つの手順にのっとり教える
OJTのコツ
「自分の力にもなる」というメリットを感じながら進めること
この3点をお伝えしました。OJTトレーナーは、人に教えることを通じて、教わることも多い役割です。ぜひ、「意図的・計画的・継続的」に進め、自身の成長にもつなげていってくださいね。