列車で旅をしたい。乗り鉄の達人になりたい。そんな人に贈る「乗り鉄入門」の第5回。旅の日程が決まったら、次はきっぷの手配だ。きっぷはどこで買うと有利か? 今回は希望の座席をゲットする方法や、窓口でスムーズに買うコツなどを紹介する。

きっぷはどこで買うの?

きっぷは駅で買える。当たり前のことだけど、駅の窓口にもいろいろある。JR各社の長距離きっぷは券売機でも購入できるし、「みどりの窓口」もある。ちなみにJRの指定席販売システムは全国ネットで結ばれており、どの駅の窓口からも同じデータベースを照会する。「始発駅のほうが指定席を取りやすい」「大きな駅のほうが有利」ということはない。むしろ並ぶ人が少ない窓口のほうが、スムーズに購入できるだろう。

JRの長距離きっぷといえば「みどりの窓口」。他に旅行代理店を活用する方法も

全国統一のシステムだから、JRのどの駅の窓口でも、JR各社の乗車券・指定券など購入可能だ。東京都内のみどりの窓口で、JR九州やJR北海道の乗車券や特急券も購入できる。きっぷを買うために、旅先の不慣れな駅で窓口を探すくらいなら、あらかじめ出発地で全行程のきっぷを用意したほうがスマートだ。ただし、これは定期列車や臨時列車の場合だ。運行本数の少ないイベント列車や企画乗車券など、発売駅が限られる場合もあるので注意しよう。

JRの指定券発行システムは、大手旅行代理店の端末機からも接続されている。定期券の更新時期などで、駅の券売機も「みどりの窓口」も行列ができているようなら、駅付近などにある旅行代理店もおすすめだ。旅行代理店は団体旅行や宿泊とセットのツアーなどがおもな商品だけど、きっぷだけの購入も可能だ。

ただし、大手旅行代理店でも小さな営業所や、独立系の旅行代理店の場合は、JRの指定券発行システムに接続する端末がないことがあり、この場合はすぐにきっぷを受け取れない。きっぷの希望を伝えて手配してもらい、後日、受取りに行くといい。複雑な行程でもていねいに対応するから、急ぎの旅でなければ活用したい。

旅行代理店はJRだけでなく、私鉄の特急券や定期観光バス、宿泊までまとめて手配してもらえる点でも便利だ。JR東海エージェンシーの「ぷらっとこだま」のように、旅行会社が独自にお得なチケットを販売するケースもある。旅行代理店によっては、インターネットで注文後、チケットを届けるサービスもあり、忙しくて窓口に並べないときに助かりそうだ。

希望の指定席を手に入れるには?

JRの列車の指定席は、おおむね列車運行日の1カ月前にあたる日の10時から販売開始される。寝台特急「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」の展望スイートなど、人気の高い列車の指定席券を取る場合、みどりの窓口で1カ月前の10時ぴったりに端末機を操作してもらう方法がある。これを鉄道ファンは「10時打ち」と呼ぶ。

ただし、利用者がたくさん並ぶ窓口では、「10時打ち」を頼みにくい。日頃から「10時打ち」を頼みやすそうな窓口を探しておくといいかもしれない。あるいはJRの指定券発券システムを持つ旅行代理店と懇意になって、「10時打ち」を依頼してもいい。確約はしてくれないけれど、努力はしてくれるだろう。

もし「10時打ち」で希望の座席や寝台が入手できなくても、あきらめてはいけない。販売開始から出発日までの間にキャンセルが出るかもしれない。日程を動かせないなら、とりあえず第2希望、第3希望の指定席を確保しておく。その後は駅の窓口に立ち寄るたびに希望を伝えよう。JRの乗車券、特急券、指定席券などは、出発日までに1回だけ無料で変更できる。希望の列車には通路側の席しかなくても、後日、窓際に空席ができるかもしれない。

キャンセル待ちの狙い目は、「出発日の2日前」といわれる。なぜかというと、JRの特急券や指定席券をキャンセルする場合、2日前までは手数料が210円だけど、出発前日からは値上がりして、料金の3割(最低でも320円)となるから。たとえば東北新幹線「はやぶさ」の東京~新青森間の指定席特急料金は7,000円(通常期)で、この3割だと2,100円となる。2日前までのキャンセル手数料は210円だから、たった1日の違いで10倍になってしまう。ゆえに2日前にキャンセルする人が多い。キャンセル待ちはここを狙うというわけだ。

窓口で説明するメモを持って行こう

目的地が1カ所だけの往復きっぷなら、窓口の係員にもすぐに伝わる。しかし、数カ所を周遊したり、複数の特急列車を乗り継いだりする場合は、口頭では伝わりにくい。そこで、あらかじめ乗車券の経由ルートや希望の列車、座席の位置などをメモして持っていくといい。メモを見せれば相手に伝わるし、窓口が混んでいる場合など、メモを渡してきっぷを作ってもらい、後で取りに行くとほうがスムーズだ。

筆者が実際に使ったメモの例。寝台特急「トワイライトエクスプレス」「日本海」に乗るため、東京~新大阪間の新幹線往復を組み合わせた。いまは廃止となった「周遊きっぷ」を使い、「ゆき券」「かえり券」のルートを設定。ルートから外れる部分の乗車券も短距離ながらあらかじめ用意しておく。これで新幹線で大阪まで直行でき、「トワイライトエクスプレス」を始発駅の大阪駅から、「日本海」を終着駅の大阪駅まで乗れる

東京駅から山陰方面へ「サンライズ出雲」で向かい、馬路の鳴き砂海岸と仁摩サンドミュージアムを訪ねて、トロッコ列車「奥出雲おろち」に乗るプラン。乗車券を安く済ませるために、なるべく長距離の片道乗車券を作り、それ以外の区間の乗車券と組み合わせた。「サンライズ出雲」には出雲市駅まで乗るため、長距離片道きっぷのルートから外れる宍道~馬路間のきっぷをあらかじめ手配する。馬路駅から宍道駅までのきっぷは現地調達予定

こうしたメモは、旅を計画するとき、行程表と一緒に作っておく。本人にとっても行程がわかりやすくなり、旅のイメージが膨らむ。面倒に見えて、じつは楽しい作業だ。なお、みどりの窓口などに、乗車券や指定席券の申込用紙がある。窓口で記入すると時間がかかるし落ち着かないから、1枚いただき、家であらかじめ記入しておくといいかもしれない。

窓口の係員と仲良くなるのもひとつの手!?

窓口の担当者との相性も重要だ。図でも紹介した寝台特急「トワイライトエクスプレス」の旅は、同行する友人が乗車券、特急券や寝台券など一式を手配した。実際に旅に出てみると、景色の良い席、乗換えのしやすい車両など、満足度の高い指定席ばかりだった。友人の話では、会社の出張などをすべて手がける旅行代理店に依頼したところ、担当者が鉄道ファンのようで、こちらの意を汲み取ってくれたらしい。

筆者の最寄り駅のみどりの窓口に、親身になって手配する女性係員がいる。あるとき、母とふたりの鉄道旅行を計画し、トロッコ列車やSL列車、寝台特急などの手配を頼んだところ、「列車編成表」「座席表」など鉄道ファン向けの資料本を調べつつ、景色の良い席をそろえてくれた。こういう担当者に出会えるとうれしい。次も同じ人に頼みたいと思った。