海外にいると、日本の姿が違って見えてくる。日本食、カルチャー、トレンド、価値観……世界各地の目線から見える“ニッポンの今”とは? 現地在住ライターが、海外から“逆照射”される日本の面白さをお届けする連載、第10回のテーマは、「オーストラリアの進化系カレー」。
海外で日本料理店に入るのはなかなかチャレンジングであることが多い。日本人以外が経営している通称「なんちゃってジャパニーズレストラン」では妙なものに出くわすことがときおりあるからだ。
たとえば具はおろか、ダシすら入っていないピュアすぎる味噌汁。そういえばかつてヨーロッパの某国で「トンカツ定食」を頼んだとき、筆者の目の前にポンと味噌汁の碗だけボンジュールされたこともあった。それを飲み干すと出てきたのがキャベツの千切り。それを牛になった気分で平らげてから、ようやくトンカツと白米にありつけた。つまり、トンカツ定食がトレビアンなフレンチフルコースとして提供されたのだ。
その一方で、ことオーストラリアのカレーにかけては「なるほど、その手があったか!」と思わず膝ポンしたくなる進化がよく見られる。それらをまとめて紹介したい。
まず「オーストラリアにおける日本風カレー」の基本をおさらいしておこう。「ジャパニーズカレー・ウィズ・ポーク」とか「ジャパニーズカレー・ウィズ・チキン」と聞くと「豚肉または鶏肉が野菜とともに煮込まれたカレー」を想像する人がほとんどだろう。だがオーストラリアでは通常これらは「カツカレー」と「チキンカツカレー」を指す。「カツ」と書かれていなくてもカツカレーだ。
ちなみに日本の家庭料理のカレーライスとは異なり、スープの中にジャガイモやニンジンやタマネギといった野菜がゴロゴロと入っていることもない。だがこれは日本最大級のカレーライスチェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」と同じパターンだ。
ではそろそろオーストラリアの「ジャパニーズカレー」における「思わず膝ポン」の進化を紹介していこう。
■膝ポンその1:カツカレーに味噌汁がついてくる店がある
これは「はあ? どこが膝ポン?」と疑問に思われる人もいるだろう。私自身、わが家で家族とともにカレーライスを食べるときも、自分だけインスタント味噌汁を飲む。カレーを味わう最中、ときおりダシの利いた味噌汁を口に運ぶことで、「ああ、日本人に生まれてよかった」と実感するのだ。
ダシは日本人のDNA。ときおり「おそば屋さんのカレーうどん」が妙に食べたくなるのも、めんつゆのダシが利いているからだ。
だからこんなふうに味噌汁付きで出てくると、カレーの上に福神漬けだけでなくベビーリーフやガリ(甘酢ショウガ)が添えられていても、とがめる気にはまったくならない。
千切りキャベツやプチサラダはまだしも、カレーライスに味噌汁がデフォルトで付く店は、日本ではあまりないのではないだろうか。我らが「カレーハウスCoCo壱番屋」のメニューも調べてみたが「スープ」はあっても「味噌汁」はなかった。「そこ違うだろ、ココイチ!」と思わず叫びたくなった。
ちなみに「海外旅行で恋しくなるから」と手荷物の日本茶のティーバックを忍ばせる人も多いと思うが、ここ数年、年間70日くらいは自宅があるオーストラリアでも日本でもない海外で過ごしている私の経験からすると、本当にカラダと脳が渇望するのは「ダシ」の風味。だから「インスタント味噌汁」を忍ばせることをお勧めする。ホテルの部屋でマグカップで飲むインスタント味噌汁ほど、飽食で疲れた胃袋と心にしみるものはない。
■膝ポンその2:定食に「カレー」を添えてくる店がある
そう、唐揚げ定食とかトンカツ定食のトレイにカレーの入った皿が添えられるのだ。まずはその写真を見ていただこう。
これもまた、「それって唐揚げカレーやカツカレーをバラバラにしただけじゃん!」という指摘が来るかもしれない。
だが考えてみてほしい。カツや唐揚げがカレーの上に乗っているカツカレーや唐揚げカレーの場合、それらをよけて「カレーライス」と食べるか、全部合わせて「カツカレー」として食べる二択しかない。
ところが上の写真のような「カレー添え」だとそれらに加えて「唐揚げ+ごはん」または「トンカツ+ごはん」という第3のパターンも楽しめる。
「カツカレーや唐揚げカレー」の場合、トンカツや唐揚げが入ろうが、基本的に最初から最後まで「カレー味」を食べるのに対して、こちらは「まずはトンカツや唐揚げを白米とともに味わい、後半はカレーを交えて味変」もできれば、「食事の3分の2くらいまでは〈トンカツや唐揚げと白米〉と〈カレーと白米〉を交互に味わい、最後の3分の1で全部合わせた〈カツカレー〉へと昇華させて華やかなフィナーレを飾る」ということも可能。ほらっ、カレーを別途添えるようにしただけで、こんなに一回の食事が豊かになるのである。
■膝ポンその3:「焼きチーズ カツカレー」がある
これは日本で出す店がないわけではないようだが……。要はカツカレーの上にピザ用シュレッドチーズを乗せて、炙りサーモンとか炙りしめさばをつくるときに使うバーナーで炙って焦げ目をつける。これが絶品だ。
当然「オーストラリアのジャパニーズカレー」のデフォルトとして、カツカレーである。
ちなみに「焼きチーズカレー」のレシピは日本では「耐熱皿に入れてオーブンで約5分」というパターンが多いようだが、オーストラリア風の「バーナーで炙る」ほうが圧倒的に調理時間を短縮できるという利点があると思う。
以上、オーストラリアの進化系カレーを見てきた。これらの中には「見よう見真似」とか「記憶違い」から生まれたものもあるかもしれない。だが動物の進化だって他の常識的な個体とは異なる突然変異が引き金になる。これからもそんな進化を楽しみたい。





