函館本線山線をいく

「北斗星」で札幌方面へ向かった前回。今回は長万部駅で「北斗星」を下車し、小樽行き普通列車に乗り換えるところから。乗り換えるといっても、「北斗星」はここから室蘭本線に入り、函館からの函館本線はこちらの方。が、普通列車のみの区間だ。この9時8分発を乗り過ごすと、次は12時19分までしか列車は通らない。小樽駅には9時台の列車に乗ると12時42分に着くといい、3時間34分のちょっとした旅がまた始まるのである。

長万部駅の次が二股駅。ここは駅舎というか待合室が貨車を改造して造られている。その次の蕨岱駅は車掌車を改造した待合室。北海道は、貨車や車掌車を改造した待合室をもつ駅が多いのだ。待合室といっても駅舎はないので、事実上の駅舎。長万部駅からの函館本線は「山線」と呼ばれるように、山間を走っていく。雪を頂く羊蹄山やニセコアンヌリが車窓から楽しめ、行楽気分に酔いしれる。

長万部に着いた「北斗星」

二股駅。待合室は貨車改造

倶知安(くっちゃん)を過ぎ、だんだんと車内は混んでくる。ニッカウヰスキーで有名な余市駅では、多くの乗客が乗り込んできた。私の対面に座ったのは、フレンチカンカン帽をかぶった2人のお嬢さん。高校生ぐらいだろうか。おそろいの帽子に、おそろいのデニムのジャケットと花柄ワンピース。そしてこれまたおそろいのバッグの中には、大きなコテが入っている。コテっていうと男性の読者はピンとこないかもしれないが、巻き髪セットをするアイテムのことである。いま注目の佐々木希さん似と岸本セシルさん似のお嬢さん2人組みでが目の前にいるのである。で、そのお嬢さんたちは、「(カンカン帽の)格好恥ずかしくね~?」と言い合いながら、小樽に行ったらどこいこうかと相談している。列車は海を左手に山野を走り、終点小樽駅へと到着した。

車窓からは雪を頂く羊蹄山が楽しめる

約20年ぶりに小樽の保存鉄道を見に行く

小樽に行きたかったのは、小樽で保存されている鉄道車両を見たかったからだ。小樽駅からタクシーで10分ほど行った旧手宮線・手宮駅の敷地内に「小樽市総合博物館」があり、多くの機関車や車両が展示されている。実は、1990年か91年に訪れたときには、「北海道鉄道記念館」という名前でJR北海道が運営していた。後、1992年に一旦閉館。事業主体が小樽市に変わり、改装後、展示内容に海運までも加えて「小樽交通記念館」として1996年に再出発した。しかし、小樽交通記念館は2006年にまたもや閉館。その後、この施設を利用するかたちで、小樽市博物館、小樽市青少年科学技術館を統合し、新たに「小樽市総合博物館」として出発したというわけである。

約20年前に訪れたときは閑散としていており、C55やC12がホーム横に停まっていたのを覚えている。今回は、訪れたのが連休中ということで親子連れで賑わっていた。特に人気だったのが、アイアンホース号。これは、1996年に小樽交通記念館が開館する際、アメリカから輸入した蒸気機関車。北海道の蒸気機関車と関係が深いH.K.ポーター社が1909年に製造したものだ。石炭でなく重油で走り、軌道は日本の1014mmより狭い914mm。

アイアンホース号

キ270

かわいい客車に大勢の親子が乗り、アイアンホース号は博物館内を走る。博物館内には2基の転車台があって、アイアンホース号はこれらの転車台を使って向きを変える。

キ718。この車両をはじめ、展示車両は傷みが多い

この小樽市総合博物館は、様々な車両を目にすることができるのが特徴。中でも北国だけあって除雪車両が数多く展示されている。また、日本銀行が現金輸送に使った車両マニ30、北海道向けに造られ、1両の車内に旅客座席、郵便室、荷物室があるキハユニ25、寒冷地向けのレールバスキハ03など、珍しいものが多い。さらに、明治時代の機関庫が保存されているなど見どころ満載である。

レールバス

しずか号

ところで、2010年6月1日に小樽市総合博物館公式ガイドブック『鉄道と歩んだ街小樽』(編集・制作・発行: ウィルダネス)という冊子が刊行された。アイアンホース号やしずか号などの展示車両を解説しているのはもちろんのこと、小樽や北海道の鉄道の歴史がわかりやすく書かれており、参考になる。

ジオラマも精密

動画
転車台の光景

小樽廃線ものがたり

南小樽と手宮駅を結ぶ手宮線は1985年秋に廃止になった。約25年経った今もその跡がしっかりと残っている。線路もいまだにしっかりとあり、「とまれ見よ」という警告板の残る踏切や転轍機が往時をしのばせる。水仙が咲く廃線あとを見ながら、さて、どこに行こうかと考えはじめた。「ま、とりあえず寿司屋に行こう」と駅の方面に歩いていくのであった。

今もなお「止まれ見よ」という踏み切りが残る

約25年も経ったとはいえ、さび付いた線路がいまだ残る