ここ最近、鉄道好きが登場するドラマや漫画が人気を集めたり、埼玉・大宮にある「鉄道博物館」が連日の大盛況だったりと、鉄道ブームともいえる現象が起きている。しかし鉄道好き、つまりは鉄ちゃんたちをひと括りにするのは少々乱暴で、"乗り鉄"は列車に乗るのが好きな鉄ちゃん、"撮り鉄"は鉄道写真撮影に楽しみを見出している鉄ちゃんで、この他にも様々な楽しみ方をしている鉄ちゃんたちがいるのだ。鉄ちゃんたちは実に個性豊かなのである。

かくいう私の楽しみ方は、鉄道の旅や廃線めぐり、鉄道にまつわる映画……etc.と幅広い。この企画では、鉄道の魅力を様々な視点からお伝えしていきたいと思う。読者の方の中には、この企画のタイトルがなぜ「『猫街鉄道放浪記』か」という点に疑問を持っている方もいるかもしれないが、それはおいおい話していくとして、まずは、今ちょっとした話題になっている寝台特急の旅のお話から始めるとしよう。

教訓その1 飲み過ぎて最終に乗り遅れるな。特に寝台!

「寝台」。この言葉だけで、鉄ちゃんたちはワクワクする。近年、寝台列車も少なくなり、寝台の希少価値があがっているような気がする。最近では、鉄道専門誌だけではなく一般誌の特集にも、寝台が取り上げられている。夜行バスより高く、飛行機よりも場合によっては高い。コストパフォーマンスだけを考えれば選択しないであろう寝台。だけど、乗ってみたいんだな、これが!

さて、今回紹介するのは「なは・あかつき」。首都圏にお住まいの方にはあまりなじみがないかもしれないが、なは・あかつきは関西圏と九州圏を結ぶ寝台特急のこと。もともと「なは」と「あかつき」は別の列車だったが、2005年から京都-鳥栖間で、「なは」「あかつき」という2つの寝台列車が併結運転されるようになった。簡単にいいますと……「リストラ」であります。悲しいぃ~。

鳥栖を出ると、なはは熊本まで、あかつきは長崎まで向かう。ちなみに2000年~2005年の間、あかつきは今はなき「彗星」と併結運転されていた。そして、そして、遂に……2008年3月のダイヤ改正で、あかつき、なはともに廃止となるようだ。ということは、関西圏と九州圏を結ぶ寝台特急がすべて廃止されることになるのである!!(ただし、首都圏-九州圏を走る寝台特急は残る)。

博多市のけやき通り。なんて美しい街。ここで「ブックオカ」という本のイベントが開かれた

私がなは・あかつきに乗ったのは2007年の秋。九州の博多(福岡市)から大阪方面に帰る際に利用した。福岡では「ブックオカ」という本の催しが開かれていて、打ち合わせも兼ねて上福したのだ。ちなみにブックオカとは、「福岡を本の街に」というスローガンのもと、福岡市内の書店や古書店、出版社、カフェなどが「本の魅力」を伝えるために1カ月にわたって開催するイベントのことである。なぜか夜、ブックオカの打ち上げに合流して呑んだくれていた私は、「もうそろそろですよ」と、実行委員のIさんに見送られてタクシーで博多駅に向かったのを覚えている。「確かまだ最終の寝台に間に合うはずだ」と思って博多駅のみどりの窓口に行くと、「すみません。間に合いません。発券できません」と係員が言う。

「えっ! 現在22時29分。発車まで、あと2分(実際のところ1分33秒)あるじゃないか!!」と思ったが、ここは潔く白旗をあげて断念。係員は、「寝台だと、17時○分のがありますよ」とすすめてくれたが、それは明日のでしょ。寝台に乗るために1日余分に博多に滞在することもできないし、でもこのままじゃあ寝台の記事が書けないし……。情けなか~。

教訓2 ものごとは決して諦めるな

「私はどこに行ったらいいの? 私は一体誰? 」とボーッとして駅構内を彷徨う。放浪者その1です。新幹線の発着電光掲示板を見ても、小倉行きしかない。今晩泊まる場所もない。しかし!! そんなヒュルルーな状態の私に救いの手が。在来線の電光掲示板を見上げると、「なは・あかつき 27分遅れ」という文字! 現在、22時39分。「ということは、もしかして! 」と走ってみどりの窓口に行き、先ほどとは違うスタッフがいる"さっきの隣の窓口"に駆け込んだ。「すみません! あかつき、27分遅れてますよね。乗りたいんですけど! 普通のB寝台とれませんか!?」と強引にお願いする。係員は「え! 」と言いながらも電話をかけて、遅延を確認後に発券してくれた。ありがたか~。この時、22時43分。

人生塞翁が馬。寝台特急が遅れたために、乗ることができた。なんていうことだ

22時58分、赤い電気機関車ED76に引っ張られて寝台特急なは・あかつきがホームに入ってくる。写真を撮ろうとしたら、すぐに発車のベルが。ここで乗り遅れたら、おおたわけものなので、車内に滑り込んだ。寝台特急なは・あかつきは定刻を約30分遅れて、博多駅から京都駅に向けて発車したのだ。

「なは・あかつき」には寝台用客車だけではなく、普通車も連結されている。いわゆる「レガーシート車」

懐かしさ満点! 開放式B寝台

開放式B寝台。上段・下段の寝台車だが、5号車では上段に寝ている人は1人もいなかった

これまで数々の寝台列車に乗ってきた経験はあるが、私は開放式B寝台しか乗ったことがない。だって、他のは高いんだから。今回乗ったのは5号車。「スハネフ15」と書かれている。これはいわゆる14系客車の15形寝台車ということです。ドアがたたんで閉じられるのが快感である。5号車の乗車率は約40%ぐらいだろうか。ぶらぶらと他の客車を見て歩いていると、乗車率1割以下の客車もある。この状況が寝台の現状を物語っている気がする……。そして、その時はこのなは・あかつきが2008年3月14日でなくなってしまうことに気付いていない私だった……。

上段に行くにははしごを昇る

通路の横に進行方向と垂直にベッドが並ぶという構造。ヨーロッパのコンパートメントに似ているが、ベッドと通路の間に仕切りがない、というのがミソ(!?)