ハーレーダビッドソンは、車両購入前の免許取得から購入サポート、各種のイベント開催など、バイクライフのトータルサポートに力を入れている。特に女性ライダーに対するサポートは、他のメーカーでは考えられないほど充実しているという。今回"女性による女性のための体験試乗会"と銘打たれた「レディース デビュー ライド」に参加してみた。
女性に嬉しい細やかな気遣いの数々
レディース デビュー ライドは、2006年から始まった、ハーレー主催の体験試乗会。今年で3回目を迎えるこのイベントは、ハーレーに憧れていても"大きくて重い"というイメージが強く、乗る前から諦めている女性が多いことから、実際に乗って不安を解消してもらうために開催されたもの。男性の目があると恥ずかしいと感じる人も多いらしく、初年度は女性限定のイベントであった。しかし、カップルや家族連れでハーレーを楽しむ人も多いため、昨年からは男性の入場も認められるようになったらしい。しかし、試乗をはじめとする各種の催しは、すべて女性を前提にしたものとなっている。
私もバイクに乗る女性の1人。「女だからできない」と言い訳はしたくないと思っているが、やはり身体的に不利な部分があることは否定できない。「レディース デビュー ライド」では「立ちゴケ」や「車体の引き起こし」など、多くの女性が抱く不安を要素を少しでも解消するために、プログラムが組まれている。また、女性が質問しやすいようにスタッフも女性が圧倒的に多くなっている。まさに"女性による女性のための試乗会"なのだ。
設備に関しても、髪や化粧を直すためのメイク室や、トイレの入り口にトラクターを置いて、出入りが目立たないように工夫がなされていた。通常、仮設トイレは汚いというイメージがあるが、入ってみると熱が籠もらないように工夫されており、便座拭き用ウエットシートも備えるなどの細かい配慮がされていた。そのほかにも、大型免許の教習所相談やライディング装備の売店、フードブース、無料ドリンクが設置された休憩所、子ども用のゲームアトラクションなどがあった。特設会場はまるでハーレーのテーマパークのようで、女性だけでなく家族連れでも楽しめるようになっている。
日本市場の2007年度のハーレー・ダビッドソン購入者は、女性が約8.5%だという。しかしアメリカ市場では女性購入者が約12%を占めているので、日本の女性購入者数も、まだまだ伸びていくと見込んでいるとのこと。
安心して大きなハーレーに乗れるサポート体勢
今回、用意された試乗車はビューエル ライトニング(XB 12Scg)、スポーツスター 1200ロー(XL 1200L)、スポーツスター 1200ナイトスター(XL 1200N)、ダイナ・ローライダー(FXDL)、ソフテイル・カスタム(FXSTC9)、ソフテイル・デラックス(FLSTN)、ストリードグライド(FLHX)、ナイトロッド(VRSCD)の全8モデル。女性向けのイベントにおいて、比較的排気量の小さなスポーツスター883を置いてないことから、「大きなハーレーでも安心して乗れますよ」と言われているような気がした。通常の試乗のほかに、運転が不安な人のために、女性スタッフとマンツーマンで運転教習が行なえる専用コースも用意されていた。
試乗は、特設コースをスタッフの先導で2周走ることができる。乗りたい車両の列に並べば、何度でも乗ることができるので購入を考えている人にはとても嬉しい機会だろう。以前、ショップで試乗したことがあるのだが、その時は公道だった。会場内に設置された専用コースと公道では安心感がまるで違う。歩行者や他の車両がいたり、信号で発進停止をしなければならないため、慣れないバイクで走行するのは正直怖い。しかも"重たくて大きい"というイメージを抱いているならなおさらだ。専用コースであれば、転倒しても後続車に轢かれる心配もなく、立ちゴケしてもスタッフがいるため運転に余裕が持てる。ただ、順番待ちの来場者や、大勢のスタッフから見られている(見守られている)という緊張はあるが、そこはイベントとして楽しめれば気にならなくなるだろう。
まず私が試乗したのは、スリムな車体のスポーツスター 1200ナイトスター。スポーツスターはハーレーの中でも、さほど大きくないイメージだったが、跨ってみるとやはり大きかった。ただ、足つき性はかなり良かった。次に、水冷Vツインエンジンを搭載した新しいタイプのナイトロッドに試乗してみた。スタッフの人によると、油圧クラッチを採用しているため、若干通常のハーレーとは乗り味に違いがあるとのこと。個人的には、重心が低いことやエンジンが滑らかということもあり、スポーツスター 1200ナイトスターより乗りやすいと思った。外見が滑らかな曲線を基調としているため、ハーレー特有のゴツイ力強さなどは抑えられていて、女性らしいフォルムだろう。
スポーツスターとナイトロッドに乗ることができたので「なんだ、私でも乗れるじゃん」と調子づいて、最後に一番大きいツーリングスタイルのストリートグライドに挑戦してみることに。跨ってみると、クラッチやブレーキの位置もかなりギリギリ。まぁ、何とかなるかなと思ってアクセルを回してギアを入れたところでバランスを崩して、立ちゴケしそうになってしまった(笑)。しかし、立ちゴケしそうになった瞬間、スタッフが5人くらい駆けつけてくれてくれた。きっとスタッフの素早い対応がなければ転倒していただろう。
レポート:加藤真貴子(WINDY Co.)