2006年6月に駐車違反の取り締まりが改められた。放置違反金制度が導入され、駐車違反の取り締まり民間委託が開始された。同時に二輪の取り締まりも強化され、二輪車に取り締まりステッカーが貼られている光景を目にすることも珍しくなくなった。昨年の本コラムでは、駐車場が公私ともに整備されている四輪とは、二輪の駐輪場事情はまったく異なるという状況を述べたが、それからさらに約1年が経過した。状況は改善したのだろうか。

パーク24の運営するバイクタイムズ浜松町店

国土交通省では具体的な動きはなし

自動二輪駐車場事情を探るため、まずは駐車場などをまとめる総本山、国土交通省に取材をしようとした。最初に問い合わせをしたのは道路局街路事業課だが、今回の取材趣旨を話したところ、駐車場の設営などには、法整備を行なう街路事業課、道路の使い方を定める地方道環境課、さらにパーキングスペースを管理する警察庁などがあり、全体で摺り合わせをするミーティングなどは行なわれてはいるものの、ひとつの部署で全体は把握できないとのこと。また、国が主体となって具体的な対策に乗り出していないため、なかなか二輪駐車場を整備できないという事情もあるという。今回問い合わせをしたいくつかの部署でも、二輪駐車場の不足は認識してはいても、「実際の対策については各自治体などにまかしています。もっと増えるといいと思うんですけどね」とまるっきり他人事のようだ。

また、道路の使い方は、地方道環境課が管轄しているというので問い合わせてみたところ、パーキングメーターは警察庁の管轄だが、それ以外の道路の使用に関してはこちらで取り扱うという。地方道環境課によれば、歩道にある程度のスペースがあれば、歩道に隣接する商店などが申請することで、歩道を占有して駐輪場とすることも可能だというのだが、各店舗が自分で申請を行なわければいけない。また、バイクに乗ったまま歩道に侵入するのは違反行為だが、こうした商店が費用を負担すれば、道路側に二輪駐車スペースを作ることも可能だとはいう。しかし、現実問題として民間の商店が費用を負担して歩道に工事を行ない、こういった駐車スペースを作るとは考えにくいだろう。

警察の取り締まり数は激増

平成18年度の法改正以来、クルマだけでなく自動二輪の取り締まりも大幅に強化された。それまでは自動二輪車に駐車違反の標章(いわゆるワッカ)が取り付けられるのを見るのは珍しかったが、民間委託が開始されたこともあり、特に都心部などでは駐車違反車両に取り付けられる確認商標がついた二輪車を見ることも珍しくなくなった。

警察庁に過去5年間の取り締まり件数を問い合わせたところ以下のとおりとなった。なお、平成18年は6月から法改正されているため、18年5月以前は駐停車違反取り締まり件数、6月以降は、民間委託分を含む確認商標(いわゆるステッカー)の取付件数となっている。「取り締り件数」と「確認商標取付件数」は厳密には別物だが、一般市民にとってはどちらも罰金に結びつくものだ。この件数を見ると、平成18年度は5月までの取り締まり件数6万8,699件に加え、6月以降の23万4,380を合わせて30万近い車両が駐車違反として取り締まられていることがわかる。平成19年度に至っては52万件と2次関数的な激増となっている。

平成14年~19年、自動二輪車・原付の取り締まり件数推移

一方で、警察庁ではパーキングメーターの管理も行っている。実際の敷設は各都道府県や自治体レベルとなっているが、大元を管轄しているのは警察庁だ。パーキングメーターは一般的にはクルマのみが利用できると思っている人も多いようだが、実は自動二輪車や原動機付き自転車、つまり小型のスクーターでも駐輪できる。しかし、いくらスペースが広いといっても、1つのメーターに対して駐車できるのは1台のみとなっている。

全国には平成19年3月31日の時点で2万2,013基のパーキングメーターが設置されているという。自動二輪の車体は小さくパーキングメーターで感知できない場合もあるため、平成18年度の法改正以来、警察庁は自動二輪等にも対応したパーキングチケット発給設備を設定できるように規定を見直したとしている。しかし実際に警察庁主導でパーキングメーターを改良、もしくは二輪を想定して増設するという動きは今のところないという。

結局のところ警察は、「駐めたくても駐車場がない」という現実について「対処する」とだけ言っておき、警察の管轄下にあるパーキングメーターを増やしてはいない。それなのに取り締まりだけ強化している。"制裁金見当てで取り締っているるのではないか"という声も耳にするが、至極まっとうな意見のように思えてくる。

ちなみに、パーキングメーター以外の二輪車の駐車場については財団法人駐車場整備推進機構が担当している。この財団法人の事業内容をみると、「都市交通・駐車問題懇談会を開催するなど、自主研究の充実に努め、駐車場整備や駐車施策に関する積極的な調査研究事業を実施しています」とされており、特に二輪のみに限定して活動しているわけではない。同機構では現在15カ所の駐車場を持っており、そのうち1カ所は2007年9月に上野にオープンした二輪専用駐車場。そのほか14カ所あるうちの8カ所は自走式駐車場(クルマやバイクを自分で運転して駐車する方式の駐車場。立体駐車場ではないもの)で、現在4カ所がバイク対応済み。年内には残りの4カ所も対応するとしている。

しかし、財団法人駐車場推進機構は、道路特定財源の使途を巡って各方面から非難を浴びたのは記憶に新しい。そうした経緯があり、同財団は2009年度中の解散が決定しており、現在新たな駐車場の整備の予定はないという。また、解散後は現在同機構が管理する全15件の駐車場は国に移管される予定とされている。

民間コインパーキングではまだこれから

時間貸しのコインパーキング「タイムズ」を手掛けるパーク24では、自動二輪対応の駐車場も展開しており、現在、時間貸しと月極を含めて全国で18カ所の二輪駐車場を営業している。全国で18カ所というと少なく感じるが、駐車場が敷設しにくい要因として、バイクの規格がさまざまなため駐車場施設としての機材調達が難しいのだという。また、経営収支の問題もある。駐車後に自動的にフラップがせり上がるクルマ用の駐車場とは異なり、二輪車ではユーザーがタイヤ留めを差し込まなければ課金がスタートしないため、簡単に不正駐車が可能である。また、公共の二輪駐車料金が格安のため、それに対抗できる料金設定が難しいのだという。また、駐車場から目的地まで歩いていくのが当たり前なクルマのユーザーに比べ、バイクでは目的地前に横付けしたいというライダーの心理や、クルマとは違い有料駐車場に駐車するという習慣がないため、なかなか普及しないのではないかとのこと。

とはいえ、同社では商業施設などの駐車スペースも手掛けているが、現在二輪駐車場の要望は多く、ニーズが多いのは認識しているという。同社は2007年3月に発足した東京都自動二輪車駐車場整備促進検討会のオブザーバーも勤めるなど、今後さらに二輪駐車場を増やしていきたいとしている。

同社では平成3年からコインパーキング事業を展開しているが、平成3年当時にはクルマのコインパーキングも普及するのか疑問の声があったという。しかし、現在ではコインパーキングはどこでも見られるようになり一般化した。バイクの駐輪場も普及までにはまだもうすこし時間がかかりそうだ。

今回、比較的大手の駐車場関連企業数社に対してバイク用駐車場の展開について質問したが、パーク24以外は現在二輪車に対応しておらず、今後も積極的に展開する予定はないとのこと。コインパーキングでは、余った土地の有効活用を目的としているケースが多いため、駐車方法や料金体制も確定していない二輪駐車場は商売にならないという判断のようだ。

現状はまだ厳しい

今回の取材を通し、多少は増えていると思った民間パーキングスペースも、想像しているより大幅に少なかったのは残念だ。しかし、大型の商業施設などでは徐々に二輪車用スペースも増えていることは確かである。

唯一の収穫は、パーキングメーターが自動二輪車や原付で使用できると判明したことだった。駐車場の少なさに困っているのなら、胸をはってパーキングスペースを利用しよう。クルマが多く駐まっているところでバイクは駐めにくいという心理が働くかもしれないが、コインパーキングなど、ほかにも駐車できるスペースがあるクルマに比べ、バイクには駐車できるスペースはないのだから、まったく気にする必要はない。もちろん料金はちゃんと支払おう。

民間の駐車場については情報を把握しきれなかった。もっと探せば二輪専用スペースが新設・増設されているケースも考えられる。また、NMCA 日本二輪車協会のホームページでは、まだ数は少ないながら、民間のバイク駐車場の案内が掲載されている。あからじめ駐車できるスペースの目安をつけてから行けば安心だ。

本来二輪車は、スペース効率が高く、CO2排出も少ない非常に優れた乗り物である。その利便性を維持するためにも、バイク専用の駐車場拡充を期待したい。

平 雅彦(WINDY Co.)