連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
団体信用生命保険は、住宅ローンを借りるときに加入する生命保険
住宅ローンを借りるとき、多くの人は団体信用生命保険(以下、団信)に加入します。一般的に、民間の住宅ローンでは団信に加入できない不健康な人はローンを借りることができません(なお、「フラット35」は団信加入が任意となっています)。
団信は、住宅ローンの返済中に契約者が死亡した場合に死亡保険金が金融機関に直接支払われ、ローンが完済される仕組みになっています。団信があるおかげで、遺族は住宅ローンの返済負担から免れることができ、金融機関も貸し倒れリスクを避けることができます。
団信の保障範囲はもともと、「死亡」と「高度障害」でした。「高度障害」とは、経済的死亡とも言われる状態のことで、両目失明、両腕切断、下半身の永久麻痺などの状態のことです。民間の住宅ローンでは、従来は金融機関が保険料を負担し、ローンを借りる契約者は保険料を支払わなくても団信に加入することができます。
保障範囲を拡大した「特定疾病保障特約付き団信」
住宅ローンを返済している人にとって、リスクは死亡と高度障害だけではありません。死亡しなくても、高度障害状態にならなくても、働けずに住宅ローンの返済ができなくなるケースはあります。例えば、脳卒中で麻痺が残った場合や、がんにかかって治療が長引く場合などです。
従来の団信ではカバーしきれないこのような領域を保障範囲に含めることができるように、2005年頃から提供され始めたのが特定疾病保障特約付き団信です。
現在では多くの金融機関が特定疾病保障特約付き団信を提供しています。金融機関によって、がん、急性心筋梗塞、脳卒中を対象にした「三大疾病保障特約」、高血圧症、糖尿病、肝硬変なども加えた「8大疾病特約」「9大疾病特約」などを提供しています。特約部分は有料で、付加する場合は、保険料を別途支払うケースや、0.2%~0.3%程度上乗せされた金利で住宅ローンの返済をするケースがあります。
ちなみに借入額3,000万円、返済期間30年、金利1.5%、元利均等返済方式で住宅ローンを借りるときに、特定疾病特約付き団信に加入して金利が0.2%アップの1.7%になる場合、104万円多く支払うことになります。
介護特約、疾病特約が付きで無料の団信を提供している銀行は?
新生銀行と住信SBIネット銀行は、疾病特約や介護特約を付加しても、保険料を銀行が負担し、"保険料0円"をウリにして団信を提供しています。
新生銀行は、「安心保障付団信」といい、公的介護保険制度の要介護度3以上、または、保険会社所定の要介護状態と診断確定した場合に、以後のローンの返済が不要になります。
住信SBIネット銀行の「ネット専用住宅ローン」では、精神障害を除くすべての病気・ケガで働けなくなったら月々の返済額を保障し、働けないまま12カ月経過すると以後のローン返済が不要になります。女性に関しては、更に「ガン診断給付金特約」が無料で付いています。
住宅ローンは、低い水準の金利が長く続いていることもあり、金利による商品の差別化が難しくなっています。そのため、機能強化した団信を保険料無料で提供するなど、附帯サービスによって差別化を図ろうとする金融機関が出てきています。
今後住宅ローンを選ぶときには、従来の「金利」と「コスト」を基本に据えつつも、附帯サービスも比較、検討対象に加えて決めた方がいいでしょう。
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執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。
「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)
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