ユーロ/ドルは、昨年の10月後半以来、下は1.1200はつかず、また上は1.1600はつかないというレンジ相場を続けてきました。

コンプライアンスの厳しくなったマーケット状況では、これは値動きから察せられるあくまでも億側ではありますが、現在のようなオプションが絡んでいると見ています。

そのオプションのことを、ダブル・ノータッチ・オプションと言います。

  • EUR/USD 日足(ダブル・ノータッチ・オプション)

その仕組みを今回の場合で申し上げますと、上限を1.1600、下限を1.1200と決め、一定の期間内に、上限も下限もタッチしない(つかない)と利益ががっぽりと懐に入ってくるというオプションです。

なお、期間内にレンジがついてしまうと、その権利は消滅してしまいます。

余談ですが、それでは、レンジがタッチしないように、レンジを遠くに離せば良いではないかというご意見もあるかと思いますが、そうすると、このオブションを購入するオプション料が高くなってしまい割が合わなくなってしまいます。

このオプションを、あるビッグプレーヤーで好んで大量にやるところがあり、上限下限をつけさせないようにするため、上限に相場が接近すると、猛烈な勢いで売って防戦し、下限に相場が接近すると、猛烈な勢いで買って防戦します。

これが、功を奏したというべきか、いずれしても、ここ4カ月間レンジはブレイクしませんでした。しかし、ここにきてドル買いユーロ売りが強まり、もしかすると、この1.1200~1.1600のレンジが下にブレイクする可能性があります。

ファンダメンタルズ的に言えば、ヨーロッパは、ブレグジット、イタリアの財政危機、ドイツ・フランスの政治・経済問題など問題山積で、ユーロは売られるはずですが、このダブル・ノータッチ・オプソションで、急落を免れていたところがありました。

これまで4カ月間、上も下も防戦され、マーケットは沈滞ムードが漂っていただけに、1.1200テスト(試し)は、マーケットの関心を集めています。

今回は、欧米投資家がユーロ/ドルを売ってきている形跡があります。

欧米の投資家の新年度は1月であり、それから新年度の方針を決め、実際に方針を行動に移すのは、2月になってからになることが一般的です。

今年の場合、2月4日から、欧米投資家は本格的にユーロ/ドルを売ってきているもようです。

  • ユーロ/ドル 日足

1.1300割れまでは、順調に下げて来ましたが、1.1300以下は、ダブル・ノータッチ・オプションの防戦買いが出ているもようで、足踏み状態となっています。

しかし、ブレグジットも3月29日に期限を迎えることを考えると、欧米投資家がリスクを回避しようとユーロ売り方針で行動に出てきている可能性は高く、ダブル・ノータッチ・オブションの防戦買いを潰すだけのフロー(資金の流れ)が、今後も出る可能性が十分あると考えます。

もし、ブレイクしたら、心理的には1.1000のサポートがありますが、それを突破できれば、2017年4月に窓の開いた1.0800前後を目指すことになると思われます。

  • ユーロ/ドル 週足(1.0800前後の窓)

ただし、ブレイクに失敗すれば、1.1500近辺までの反発もありえるとは思いますが、先にも申し上げましたように、現在のヨーロッパを覆うリスクの大きさは、ビッグプレーヤーのダブル・ノータッチ・オプションで抑え切れるものではないと思われ、結局はユーロ安に向かうものと見ています。

いずれにしましても、1.1200手前は激しい攻防戦になるものと見ています。

こうした状況での戦略ですが、1.1200手前では買いがまだ湧いてくるものと思われますので、そこで揉まれるのは避けて、1.1200が割れてから、ストップエントリー、つまり、逆指値の売りでショートを作るというのも一案だと思います。

ただし、大底を叩くリスクはありますので、十分リスクをご理解頂いた上で、ご検討ください。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら