もともと、ホワイトナイト(白馬の騎士)は、おとぎ話の中で登場する、主人公を危機的状況から救ってくれる頼もしい存在です。また、ビジネスの世界でも、M&A(買収・合併)で、買収される企業にとって友好的な第三者(企業)のことを、ホワイトナイトと呼びます。

  • 「ホワイトナイト」とは?(画像はイメージ)

ホワイトナイトの登場

そして、相場の世界でも、自分の心の中にホワイトナイトは存在します。

それは、どういうことかと申しますと、ポジションがアゲンスト(不利)になったとき、一発逆転となるようなニュースや経済指標の発表などが出ることを期待することが、ホワイトナイトの登場を願っているということです。

しかし、相場の世界において、ホワイトナイトの登場を願ったその時点で、既に勝負に負けています。つまり、自分ではどうにもならないところまで追い詰められ、ホワイトナイトの登場という神頼みにすがろうとすること自体が、相場の深みにはまってしまっていることを意味しています。

そこまでアゲンストになる過程で、いくらでもいったん手仕舞って、損失を最小限にとどめるチャンスはあったと思います。しかし、そこで小さな損失を出すことをためらったばかりに、大きな含み損を抱えることになりがちです。

したがって、まずは、自分の相場の見方が間違っていれば、躊躇なくやめることが大事です。

もし追い詰められるような事態に陥り、心の中に、ホワイトナイトの登場を願うようになっていれば、それは手仕舞いのサインと心得て、痛みは伴いますがいったん勇気ある撤退をすることが大切です。

スピード感のある敗戦処理

トレーディングに限らず、いろいろなことで言えることですが、早くダメージから回復しようとするためには、痛みが伴うものです。

トレーディングで言えば、アゲンストのポジションを投げるという痛みが伴いますが、早めに損切ることで深手を負わずに済めば、回復にそれほどの時間を要しません。

これが、目先の損失が確定することを避けようとしてポジションを持ち続ければ、もちろん相場が持ち直すこともないわけではありませんが、しかし多くの場合、キズを広げることになります。

日本のバブル崩壊後20年以上の停滞はある意味、損失の確定ができなかったことによるのではないかと思います。

米国がすべて良いとは申しませんが、痛みを伴ってでもポジションを投げるという、いわばスクラップアンドビルド(ぶっ壊して建て直す)の意識は強く、私がニューヨークにいた頃も、シティバンクが潰れるという見方が強まり、シティーの株価が急落したことがありました。

そのとき、シティバンクは、不良債権の償却や本社ビルの売却などを前倒しに行い、なんと翌年には急回復しました。

このことからもわかりますように、スピード感のある敗戦処理かどうかによって、その後の立ち直りの早さに大きな違いが出てきますので、トレーダーである以上は、スピード感を持って対応することが大切です。

そして、休む

負けたら、あえてトレードせずに、気分転換を図ることも大事だと思います。相場を休むとなれば、これも徹底的に休まないといけません。

頭の中をカラッポにすることで煮詰まった頭をほぐすのですから、中途半端に、チラチラとレートの動きを追うことはやめ、すっぱり相場のことは忘れてしまうぐらいでちょうど良いと思います。

そのためには、スポーツで汗を流すもよし、音楽を聴くもよし、風呂につかるもよし、要は一点に集中させていた神経をほぐすようなことをすることだと思います。

そして、気力が戻ってくれば、自然とポジションを持とうという気持ちが湧いてきます。こうしたメリハリをつけることも、相場と付き合っていくためには、大変大事なことです。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら