2017年も、あと残り少なくなりました。今回は、今年のドル/円の注目点についてお話したいと思います。
まず、2016年の11月に米大統領選が行われドル/円、2017年の注目点 author=ストラテジスト 水上紀行 lead=2017年も、あと残り少なくなりました。今年のドル/円の注目点についてお話したいと思います。
2017年も、あと残り少なくなりました。今回は、今年のドル/円の注目点についてお話したいと思います。
まず、2016年の11月に米大統領選が行われ、トランプ氏が当選しました。市場の予想では、「トランプ氏当選ならドル売り」と言われていましたが、蓋を開けてみたらドルの急上昇となりました。
その結果、2017年の年初、118円台をつけましたが、それを高値に反落し、その後はおおよそ108円から115円の7円幅のレンジ相場が年内続きました。ドル/円は、一般的に年間20円ぐらいのレンジになることが多いことを考えると、いかに限られたレンジ幅に収まったかということになります。
なぜそこまで狭いレンジとなったのか、言い換えれば、なぜ変動幅が限られたかということを考えますと、ふたつの要因があります。
変動幅が限られたふたつの要因とは
ひとつは、ビッドコイン・フィーバーです。
先日新聞で報じられましたが、ビットコイン取引全体の4割が日本からだということです。一見、慎重と思われる日本人ですが、ここぞというときには一気に突っ込むところがあります。なぜなら、FXでも、ピーク時、世界の個人の為替取引の6割が日本人だったからです。
したがって今年の為替の値幅が狭い理由として、全てではないにしても、結構なボリュームで、FXからビッドコイン取引への投資資金のシフトがあったことを否定できないものと考えています。
そして、もうひとつの要因は通貨当局にあると個人的には考えています。2016年と2017年の大きな違いは、あれだけ2016年に少しでも円高になると、財務省・日銀が「投機的であれば、しかるべき対応を取る」と繰り返し発言しましたが、2017年になると一回もそうした発言は聞かれなくなりました。
それは、トランプ米大統領に配慮してのことと考えられます。しかし、だからと言って、当局が円高阻止を放棄したわけではなかったと思います。それは、今年よく耳にした噂から推測しています。
つまり、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を始め、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、国家公務員共済(KKR)のような共済といった公的な運用機関が、ドルが下がると執拗にドル買いをしてきたと言われています。
多分公的な運用機関は財務省・日銀から代理介入とも言える外債購入の強い要請があったのではないかと思われます。特に110円割れからは、公的運用機関の買いは相当出たもようです。
こうして下を抑えられているのならもっと上がるべきですが、114円、115円が、相当重いことも事実でした。
これについては、うがった考え方をすれば、いくら運用機関と言えども野放図にドルを買い続けることはできないため、上がればしっかり売り戻してきているのではないかということです。そうでもなければとっくに115円は突破していると思います。
つまり、下も上も抑えられた状態で、上記の週足のチャートでわかりますように、きれいに下限の水準、上限の水準ができているのではないかと思われます。ということは、今後も、この公的な運用機関が売り買いを繰り返す限りレンジは続くことになるものと考えられます。
しかし、こうした一定の値幅で上げ下げするレンジ相場の過程の中でも、最終的に値幅が狭くなってくることは、実は大変重要な意味があります。
それは、乱高下から始まったレンジ相場が最終的に収束すると、その次は新たなトレンド相場を開始することが示されるということです。
その意味では、来年、一転して大相場になる可能性は否定できません。来年の相場のカギを握るのは、日銀ではないかと見ています。他の主要国が利上げあるいは量的緩和の縮小を表明する中、日銀はまだ動いていません。
しかし、好調なGDP、人手不足、平均時給の上昇など、日本の景気は明らかに好転してきています。日銀が動き出したら、円高への動きは一気に強まるものと見ています。