毎年年末に、識者と呼ばれる人たちによる来年の相場見通しが出ます。私自身も見通しを書くよう依頼されることがありますので、一応識者のはしくれにいます。
さて、この年末の翌年見通しをご覧になるときに特に注目しておくべきことがあります。それは、識者たちの見通しが、上げか下げかどちらか一方に大きく偏っていないかどうかということです。いずれかに大きく偏っていると、相場はかなりの確率で逆に進むことが多いと過去の傾向からも言えます。
今年の年末の場合、識者の来年見通しが出そろうのはまだこれからです。それだけに、これから出てくる見通しが集まるのをじっくりと待ちましょう
識者の見通しの見るポイントは、見方の偏りです。もし識者の見通しに極端な偏りがあると、相場は逆に進みやすいと言えます。
これが示すところは、正にマーケットのセンチメントの偏りそのものであり、実際にもマーケットの大勢のポジションが大きく一方に偏るためだと思われます。
来年の相場はどうなる?
「相場は、連れを作らず」という言葉があります。 大勢の見方が上げか下げかに偏れば偏るほど、大人数の連れを作っていると考えて良いと思います。
大勢意見と聞けば、ホッとするかもしれません。しかし、それは実は、大きなリスクがはらんでいることを忘れてはならないと思います。
なお、確かに現時点で識者の見通しは、定かではありませんが、最新のシカゴIMMポジションである12月5日のポジションによりますと、円のネットショート(円売り)が11万4千枚を超えて高水準です。しかも、先週金曜に当たる12月8日も円安傾向で終わっていますので、センチメント的には円安になっていると思われます。
昨年の11月の米大統領選でトランプ氏が大統領に選ばれたことで、当初円高とマーケットはコンセンサスされましたが、実際には円安となり、今年の年初の段階では一部では135円の円安を予想する識者もいました。しかし、その後ドル/円は年間通して、7~8円程度のレンジ相場となり低迷しました。
そしてまた今、円安に向かい始めているのを見て、円安派が再び台頭してきてもおかしくはありません。ただし、昨年と今年の相場の大きな違いを指摘しておかなくてはならないということです。
昨年は、多少でも円高に相場が振れると、直ちに財務省・日銀・金融庁が緊急会合を開き円高牽制発言を繰り返しました。しかし、今年は1回たりとも牽制発言は出ていません。なぜなら、介入を嫌うトランプ米大統領への配慮と思われます。
そのかわり、あくまでも噂ではありますが、GPIF、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、KKRなど三大共済といった公的運用機関によるドルの押し目買いがちょくちょく出ていたもようです。つまり、代理介入がなされていたものと見ています。
しかし、そうした不自然な買い支えは、今年のような極端に狭いレンジ相場を生んだり、また、今後、逆に極端な乱高下相場を生んだりすることになりかねないと思っています。
それらのことから、私自身としては、目先多少の円安はあるかもしれませんが、それ以上に大きな円高リスクを常に相場ははらんでいると考えています。
なお、もうひとつ申し上げておきたいことは、年初の見通しでも何でもいいのですが、それで相場はどうだと言っても、どうにもなりません。なぜなら相場は生き物ですから、新しい要素を加え、既存の要素の一部を捨て、どんどん変化しています。
したがって、一回言ったからそのまま相場は進む、というのは現実的ではなく、定期的に見直していかなくてはなりません。しかも、見つかった変化には自らを合わせていく姿勢が必要だと思います。
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