健康診断、受けていますか。受けたものの二次健診の指示を放置していたり、「まだ元気だし」と現実逃避していたりしている人、いるのでは。クリニック院長でありながら、産業医としても活動する木村至信氏(以下、キムシノ氏)に話を伺いました。

  • 乳がんの正しい知識を持っていますか?

乳がん、子宮がん検査の内容

女性特有の疾患である、乳がん、子宮頚(けい)がん、子宮がんなど。乳がんは日本人女性のおよそ11人に1人、子宮頚がんはおよそ73人に1人、子宮がんはおよそ60人に1人がかかるといわれています。

芸能人などがこれらのがんを公表したり、啓発したりすることも増え、認知度は高まっています。歌手の宇多田ヒカルさんは以前、マンモグラフィを受けるにあたり、「豊胸してるとマンモできないらしい。おっぱい大きくなっても乳がん検診できなくなるとか代償がデカ過ぎる」とツイッターに投稿し、話題になっていました。

国は、乳がんにかかる人が増える40歳以上の女性に対する乳がん検診を勧め、自治体が行う検査を無料か少ない負担額で受けられるようになっています。

以前に実施されていた「視診(目で見る診断方法)」と「触診(触る診断方法)」を廃止し、マンモグラフィ(乳房を板で圧迫し伸ばした状態でエックス線撮影する診断方法)での検査が主流になっています。乳がん検査には、エコー(乳房に超音波を当てる検査)もあります。

子宮がんは、子宮頸部(子宮の入り口)にできる子宮頸がんと、子宮体部(子宮の奥)にできる「子宮体がん」に分けられます。検診の内容は、問診、視診、内診、細胞をこすり取って行う細胞診などです。

マンモグラフィとエコー、子宮頚がん細胞診は必須

平成28年に実施された「国民生活基礎調査」によると、女性における乳がん、子宮頸がん検診を含めた5つのがん検診の受診率は3~4割台で、特に子宮頸がん、乳がんについては検診受診率が先進国の中で低い現状があります。

  • 女性の子宮頸がん検診受診割合(20~69歳) 出典:厚生労働省「低い日本の検診受診率」より

  • 女性の乳がん検診受診割合(50~69歳) 出典:厚生労働省「低い日本の検診受診率」より

確かに、「気になる症状があるけれど、問診や検査が怖い」などの理由から、受診をためらう人もいそうです。

キムシノ氏は、「婦人科系の病気は、他人事ではありません。ただ、症状が出ないうちに、定期的な健康診断などにより早期発見し、治療できれば大事に至らないこともあります。若い女性で将来、妊娠を望む場合、悪影響が出る病気の恐れもあるので定期的な検査は重要です。

健康診断時は、マンモグラフィとエコー、子宮頚がん細胞診は必ず受診しましょう。会社の健康診断時に、初期の乳がんを発見することが意外とありますよ! 今は乳房を取らなくても治る時代ですが、早期発見が肝心です。ごく小さなしこりにも気づくような熟練した乳がん専門医もいらっしゃいます。専門医による検査が重要ですね」と訴えます。

これらの検査は、健康診断時に費用は会社負担で行ってくれるところが増えました。また、市区町村では、「40歳以上は年1回無料」などという内容で実施するところもあるので、調べてみましょう。

女性の身体はデリケート

ライフスタイルや環境の変化などにより、ホルモンバランスが乱れると、心身に大きな影響を及ぼします。「少子化や晩婚化により出産回数が減り、生理の回数が増加していることが婦人科系トラブルの原因である」という説もあります。年齢を重ねると、婦人科系の病気を抱える人が周囲に増えてきます。

キムシノ氏「会社の健康診断では、命に関わる子宮頚がん、子宮がん、乳がんの三つを見つけるためにあります。私は大丈夫などと決めつけずに、これらの病気の兆候や検査の方法などについて調べ、予備知識を持っておくとよいでしょう。婦人科には、患者さんと同じ性別の女医が必要ですが、意外と少ないという現状があります。ただ、探せば看護師や医師を含め、スタッフは全員女性という施設もあるのです」。

若い頃は生理不順、働き盛り世代では乳がんなどの疾患、それから更年期障害と、女性こそ健康第一。そのためにも、健康診断時にはマンモグラフィとエコーをプラスし、病気の早期発見に努めましょう。

取材協力:木村至信(きむら・しのぶ)

横浜市の馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・産業医・医学博士。テレビやラジオのレギュラー番組を持つタレントでもあり、「木村至信BAND」でメジャーデビューする女医シンガーの一面も。