健康診断、受けていますか。受けたものの二次検査の指示を放置していたり、「まだ元気だし」と現実逃避していたりしている人、いるのでは。クリニック院長でありながら、産業医としても活動する木村至信氏(以下、キムシノ氏)に話を伺いました。
バリウムより胃カメラ、胃に優しい鎮痛剤
「中年になってからのほうが生きることが楽しくなったが、血液検査の結果を受け取る時には若い頃に戻りたい」といった投稿がツイッターで注目を集めていました。
確かに、若い頃は特別なことをしなくても病気一つしない人もいるでしょう。ところが、30代、40代、50代……と年を重ねるごとに細胞や臓器などで変化が起こり、身体は経年変化するのです。また、筋力も低下し、運動量が減り、体の衰えを実感する人も増えていきます。
「長寿の家系なので、一生健康なはず」などと思っている人も、過信して健康診断をおろそかにしてはいけません。深刻な事態になってから気付いては遅すぎるのです。
――先生、健康診断を気にしているのはシニア世代ですよね。20代などの若い人は、まだ大丈夫?
キムシノ氏「 若年者も肝機能には注意を払ってほしいですね。若いうちは肝機能の数値を指摘されても無視してしがちですが、そこから脂肪肝、胆石に発展することもあります。二次健診を勧められたら、検査結果を持って必ず行きましょう。投薬や治療に進まないとしても、『これから気を付けよう!』と、意識を改めることが大事です。食生活の指導を受けられるなら、ぜひ受けてください」。
――最近、「肝臓は沈黙の臓器」なんて、よく聞くようになりました。
キムシノ氏 「はい、その通りです。肝臓は悪くなっても気付きにくいので、飲酒の習慣に関わらず要注意です。通常、太っている方のほうが肝臓に脂肪がたまる脂肪肝などになりやすく、肝機能が悪くなるものですが、痩せているのに肝機能が悪い方、高脂血症の方がいます。
それから、胃の健康にも注意しましょう。頭痛や生理痛などで日常的に鎮痛剤を飲む人は、胃に負担がかかりがちです。その結果、炎症や潰瘍が起きることもあります。医師や薬剤師に相談して、胃への負担が少ない薬を選ぶようにしましょう」。
――健康診断で病気を早期発見する方法はありますか?
キムシノ氏 「健康診断で胃の検査といえばバリウムを飲むもの、というイメージを持っている方もいるでしょう。が、『バリウムでは詳しいことまで分からない』ということが明らかになってきました。だから、内視鏡検査、通称"胃カメラ"の検査を1年に1度受けましょう。特に、スキルス性胃がんは進行が早く若年に多いので、早めに見つけて治療すべきです」。
貧血や便秘に病気が潜んでいるかも
やはり、若い頃から年1回の健康診断を習慣付けることは重要ですね。その他、「まだまだ若いから大丈夫」などと思っている人のために、怖い話を交えてアドバイスをもらいました。
キムシノ氏 「最近の若い人は、仕事が忙しく、偏食や過労などにより、身体に負担がかかりがちです。若い人、さらに女性だけでなく男性にも貧血がみられます。
私が見たのは、若干の貧血があり、さらにガスが溜まるような慢性化した便秘症の方です。健康診断の結果、二次健診を勧められましたが、多忙のため放置していたところ、ある日激痛が起こり、救急車に乗ることになりました。搬送先の病院で、癒着性腸炎で緊急オペをし、一年在宅勤務や通院でやっと職場復帰なさいました。まだ便の心配もあるなど、予断を許さない状況です」。
貧血や便秘は軽視せず、他の症状や健康診断の結果を総合的にみるべきです。あなたは大丈夫?
取材協力:木村至信(きむら・しのぶ)
横浜市の馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・産業医・医学博士。テレビやラジオのレギュラー番組を持つタレントでもあり、「木村至信BAND」でメジャーデビューする女医シンガーの一面も。