もうすぐ廃止になる路線や列車を訪ねることには独特の感傷があり、「お葬式」と呼ぶ鉄ちゃんもいます。しかし、場合によっては混雑で満足に撮影できないばかりか、列車の安全運行に支障をきたす恐れもあり、鉄ちゃんのモラルが問われる場でもあります。今回は、引退する列車との上手なお別れの仕方について解説します(鉄道名や駅名などの設定は架空です)。

ついにデジタル一眼レフカメラを購入したテツヤくん。何を撮っても楽しいですが、やっぱり鉄道が撮りたくてマイコミ鉄道沿線をドライブしていると、どうもいつもより鉄ちゃんの数が多いことに気が付きました。ベテラン鉄ちゃんに尋ねてみると、「150系が9月に引退するんだよ。マイコミ支線も9月で廃止になるしね」と驚きの事実が! (マイコミ支線の廃止については次回解説)。でも、「やっと名前を覚えた150系とお別れするのは寂しいけど、まだ3カ月も時間があるから今日は撮らなくてもいいや」と、列車が来たのにあじさいを撮るテツヤくんでした……。

実は、この3カ月前くらいの段階で撮影、乗車などを存分にしておくのが、上手な列車とのお別れなのです。先日引退した寝台急行「銀河」を例にすると、引退の噂が濃厚になったのが1年ほど前、そしてスクープされたのが4カ月前、正式に発表されたのが3カ月半前でした。マスコミが大々的に扱い始めたのは、最終運転日まで2カ月を切った頃から。報道されると見物客、乗客がどっと増え、一気に撮影がしづらくなります。また、「前から一度撮ってみたかった」というような鉄ちゃんが仕事を休んででも駆けつけるようにもなります。

引退間際にならないと感傷に浸れないかと思いきや、実際は切羽詰まった人たちで混雑し、感傷どころではなかったりもするのです。列車が最後まで安全な定時運行を守れるよう、撮影と感傷はしっかり分けて考えて早め早めに行動しましょうね。

テツヤくんが撮影をしていると、最初はポツポツと降っていた雨がだんだん強くなってきました。新品のカメラを濡らしたくないので、古いコンパクトカメラで撮影することに。いつものように、やってきた列車に向かって一枚……とシャッターを切ったその瞬間、なんとフラッシュが光ってしまいました。

フラッシュ撮影禁止というのは、鉄道撮影で最も守らなければならないルールの1つ。テツヤくんは自分のミスに唖然とするばかりです。このような単純なミスは、カメラをかえたときに起こりがち。複数のカメラを持ったときには、必ず設定の確認が必要です。特に、取り扱いが簡単なカメラほど、うっかりミスも起こりやすいのです。梅雨時は、天気が悪いだけでも自動発光してしまいます。撮影の前に、フラッシュの設定は必ず発光禁止にしましょうね。

ミニ情報
鉄ちゃん御用達の書店・東京編
余裕のある「お別れ」のためには、噂の段階で列車の引退を嗅ぎ付けたいもの。それには、鉄道関連の雑誌やムックを読むのが一番です。そこ>で、鉄ちゃん御用達の書店を2軒紹介します。神田神保町の「書泉グランデ」と、「東京駅一番街」の「栄松堂書店」です。「鉄道の本ってこんなにあったのか! 」と、驚くほどの品揃えですよ。