ある日突然、家族から借金があることを告白されたらどうしますか? 筆者は、役所からの赤色の督促状を手にした母からその告白を受けました。それから約1年半、なんとか半分以上の返済を終えてきました。まだ完済はできていませんが、同じような失敗をする方が少なくなることを願い、筆者の体験をお伝えしたいと思います。
借金のある家計の実態
まずは当時の状況をご説明します。
〇母(50代・個人事業主)・筆者(20代後半・正社員)・弟(20代・正社員)
・筆者は仕事に忙しく、給与(約15万円)の管理を母に任せていた
・弟は別会計。母に生活費として毎月23,000円を渡していた
・貯金はなし
・数社より借り入れがあり、合計で約200万円
赤字家計の原因とは……
目立った浪費や思いがけない緊急の出費があったわけではなく、普通に生活をしていたはずの我が家になぜ借金が? と最初に思ってしまいましたが、単純に「収入<支出」となっているまま長い間生活していたのでした。では、なぜ支出が収入を超えてしまったのか? いくつか理由がありました。
(1)母の収入が減っていた
母がキャッシングをするきっかけが、個人事業主である母の収入が約半分に減ったことです。お金について話をする機会のないまま、何か欲しいモノがあるとき、母の地元への帰省などでまとまったお金が必要なときに「お金がない」と言い出せず、クレジットカードやキャッシングでまかなうようになったそうです。どんどん膨らむ借入金額に不安もあったそうですが、筆者や弟に話をすると借金を作ったことを怒られると思い込み、いつまでも打ち明けられなかったと告白時に話していました。
(2)必要経費だと思っていた大きな出費
筆者の前職はネイリストでした。当時は職場までの片道2時間を電車で通勤しており、会社から支給される通勤費以外にも費用をかけていました。また、練習用の道具など自己負担が多く、スキルアップのための多額の出費がありました。
・駅までの交通手段が車のため駅前駐車場代:5,000円/月
・通勤電車内で混雑を避けるため指定席を確保:約14,000円/月
・乗車前のコンビニ利用:約5,000円/月
・練習用の道具等を自己負担:約20,000~40,000円
・遠方の会議に出席するための宿泊代などは自己負担
とうとう督促状が届いて「お金のことでもう悩みたくない」という母の思いを聞き、母を1人で追い詰めてしまったことを申し訳なく思いました。また、筆者が自分の給与すら母に預けっぱなしで、家計に無関心なまま甘えていたことを自覚しました。そこで、疲れを感じていた母に代わり、筆者が家計を管理することを決意したのです。金額が大きいため時間はかかることを覚悟して、赤字家計からの脱出を目指しました。
借金完済に向けて、まずは1歩踏み出す!
家計管理を始める少し前に、筆者は視力と体調を崩してしまったことが原因でネイリストを続けられず転職しています。収入がいきなりアップとはいかないものの、今までのような出費がなくなっていました。そこで、家計を見直し、「収入<支出」を「収入>支出」に変え、さらに、支出をより小さくするために次のように行動しました。
(1)返済の優先順位を決める
最優先は、借り入れをなくすことです。借り入れを返済しないと、利息が高いため返済額が膨らみ続け、いつまでも家計を圧迫します。利息の高いものから返済できるように、優先順位をつけた返済の計画を立てました。
我が家の場合、まずはカード会社A・B・C、次にフリーローン、年金保険料・税金(滞納金含む)、未払いの生命保険料の順でした。
(2)モノの買い方の見つめ直し、浪費癖をなくす
数カ月分のレシートを集め調べてわかった、日常の買い物の中でしていた浪費もありました。それは、1,000円以下のものはよく考えずに複数でも買ってしまうことでした。
・100均だからと、目についたものを買う
・特売品など、いつもより安くなっていると反応してしまう
・1つで足りるのにストックもまとめて買う
コンビニやドラッグストア、100均など一度の金額が小さくても、月の合計を計算してみると意外と大きな金額になっていることが多かったです。今は、予算を決め、目的を持って買い物に出かけるようにしています。欲しいと思ったモノでも買う前に一呼吸おき、「本当に今、必要なもの?」と考えることを習慣にしています。
(3)使いすぎてしまうクレジットカードを封印!
当時は引き落とし日が違う4枚のクレジットカードを母が利用しており、引き落とし日が来ると現金がなくなり、足りない分をキャッシングするという悪循環になっていました。
手元にあるお金以上の買い物ができるというクレジットカードの特性を理解して利用できていなかったのです。この悪循環を断ち切るため、現金管理スタイルへ変更しました。お金が入ったら、まず払うべき金額をそれぞれの引き落とし口座に分け、残りのお金で予算を立て生活をしています。
(4)失敗から学んだこと……つい使ってしまう癖をやめる「お金の見えない化」
現金で管理する生活に慣れ、返済にも少しずつ目途がついてくると、手元のお金に余裕を感じることもあります。すると、おとなしくなっていたはずの浪費癖がムズムズしてきたのです。筆者はここで数回失敗しています。
「追加で返済に充てられるはずのお金を使う」「手元にあるから使って良いお金と思ってしまう」のを防ぐために行った方法が「お金の見えない化」です。お金に余裕ができたと思ったら、すぐに臨時出費用の口座に入れるようにしました。
以上が、筆者が支出を小さくし、赤字家計を改善した方法です。どれも難しくなく、途中で挫折せず長期的に努力できるようになりました。1日でも早く借金を完済し、次はしっかりと蓄える家計を目指したいと思います。
1人では抱えきれないお金の問題。頼れる人は……?
「お金の相談なんて誰にしていいのかわからず、ずっと1人で抱えてきた」
母が借金の告白をしたときの言葉です。自分の家計やお金のことを他人に話すのはためらってしまいますが、もしも誰にも相談できずに1人で頑張っている方がいるなら、抱えきれなくなる前に勇気を出して相談してみてはいかがでしょうか?
著者:yuki
自身の体調を崩したことをきっかけに、働けなくなったときのお金の不安を持つ。病状安定後、今まで関心のなかったお金に対する知識をつけるためFPの資格を取得。合格から約半年後、母親からキャッシングなどによる借金を告白され、家計のやりくりを母親からバトンタッチ。 この経験で実感した『お金の知識の大切さ』を伝えることを中心に活動予定。マイライフエフピー認定ライター
イラスト=オオノマサフミ