昔から「やればできる!」って、よく言われますよね。「うちの子は"やればできる子"だから、そのうちに……」なんて親バカですが、私も自分の子どもにそんな淡い期待を抱いていた時期もありました。最近は、元高校球児の芸人さんが「やればできる!」と連呼されていますが、実は私自身、その言葉を素直に受けとることができません。というのも、私も元高校球児でしたが、いつも1回戦負けの弱小野球部だったからです。高校野球に限って言えば、「やればできる!」っていうのは、試合に勝つという成功体験を持っている人の言葉かなぁ~と思ってしまいます。
でも、このコラムのタイトル、「いま、できる、こと」からもわかるように、私の心持ちとしては、資産形成は誰でも「やればできる!」と思っています。そして、私自身も現役世代であり、「長期・積立・分散投資」の成功体験もあります。こんな風に考えると、私も元高校球児の芸人さんとあまり変わりませんね。私が野球のことで「やればできるって言われても……」と少し斜(はす)に構えるのと同じように、私から資産形成のことで「やればできる!」と言われた人の中には、閉口している人もいるかも知れません。「やればできる!」と「やってみる!」との間には大きな溝がある、ということなのでしょう。
この溝を埋めるにはどうすればいいのか? 最近読んだ本の中から、資産形成で「やればできる!」と言われた人の「やってみる!」を後押しする考え方を少しご紹介してみましょう。
■「5分だけやったらやめよう」と高を括る(※1)
・やろうと思っても「面倒くさい」「しんどそう」「明日にしよう」……と、後ろ向きな気持ちが湧くと思います。そんなときに「5分だけやったらやめよう」と高を括るのです。
・つまり、成功のハードルをとにかく下げておくことが大事なのです。それは、「できない自分を認める」ということでもあります。
「やればできる!」と言われ、後ろ向きな気持ちになった人でも、「ちょっとやったらやめよう」と考えれば、一歩踏み出せそうじゃないですか? 資産形成だと「つみたてNISA」がいいかも知れませんね。すぐに売ってやめることもできますので。
■英国企業年金、NESTが提供する商品の特徴(※2)
・一般に投資理論の世界では、若い人は十分な収益を求めてリスクを取るべきだとするわけです。
・しかしNESTでは、若年層向けの5年程度を想定した「基盤づくりフェーズ」は、あえて無理なリスクを取らず、物価上昇率程度の収益率を目指すとしています。
日本のNISAは英国のISA(個人貯蓄口座)を参考にしたものですが、他にも見習うべき点がありそうです。「若いならリスクを取るべき」と言われるが故に躊躇してしまう人も多いのではないでしょうか。そんな人には「企業型DC」や「iDeCo」を利用して、最初は預金だけで基盤をつくる、という考え方があることも伝えたいですね。「やればできる!」と言われて閉じていた口が、「おっ!」と開くヒントになれば幸いです。
(※1)出所:藤野 英人『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)
(※2)出所:野尻 哲史『脱老後難民 「英国流」資産形成アイデアに学ぶ』(日本経済新聞出版社)、NEST(National Employment Savings Trust)は英国企業年金制度の年金プロバイダー