結婚、出産、友達づきあい、休日の過ごし方――。みんなが当たり前にしている「普通」が私にはうらやましかった。家族のために、自分をがまんしてきた人へ、「きょうだい児」の人生を描いたコミックエッセイ。社会福祉士資格をもち、福祉の現場での実務経験を持つ著者が、きょうだい児当事者への取材をもとに構成したセミフィクション作品です。

『妹なんか生まれてこなければよかったのに きょうだい児が自分を取り戻す物語』(うみこ/飛鳥新社)より、一部を抜粋してご紹介します。

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⇒✅『妹なんか生まれてこなければよかったのに』を1話からまとめ読み!

■きょうだい児とは?

障害のある兄弟姉妹がいる人を指す言葉で、障害のある兄弟姉妹とともに育てられながら、一方でケアを期待されるなど、障害のある兄弟姉妹や親との関係、また家庭外の社会での経験など、さまざまな場面でその影響を受けることが多いと言われています。

※本作は、障害のある方々への差別や偏見を助長することを意図したものではありません。全ての人の人権が尊重される社会の実現を願い、そのなかで見えにくくなりがちな“きょうだい児”に光を当てることを目的として制作しました。(書籍より抜粋)

このつづきは、『妹なんか生まれてこなければよかったのに きょうだい児が自分を取り戻す物語』にてお楽しみください!

⇒✅『妹なんか生まれてこなければよかったのに』を1話からまとめ読み!


■監修者のメッセージ(Sibkoto|シブコト障害者のきょうだいのためのサイト共同運営者 白井俊行 松本理沙 藤木和子)

私達も、この物語の主人公と同じように、障害のある兄弟姉妹がいる「きょうだい児」の立場です。兄弟姉妹への感情は、障害があってもなくても、好き・嫌いと揺れ動くことがあるでしょう。ただ、きょうだい児は、障害の特性・親との関係・周囲の人間関係や生まれ育った環境、社会などとの関係によってその振れ幅が大きくなりがちです。良好な関係を築く場合もあれば、それが難しい場合もあります。

きょうだい児について伝える時、私達もこの振れ幅のどの側面を伝えるべきかを悩みます。障害のある兄弟姉妹とともに人生を歩みたいと思うのも、別々の人生を歩みたいと思うのも、そのどちらも正しいからです。現に、私達3人もそれぞれ、この物語に登場するきょうだい児たちに共感する部分もあれば、自分は違うと感じる部分もあります。

きょうだい児は親ではありません。きょうだい児が障害のある兄弟姉妹の世話をしなければいけない義務も法律上ありません。本来、それは親、ひいては社会の役割で、兄弟姉妹は互いに独立した存在です。その上で、障害のある兄弟姉妹とどれだけ関わるかはきょうだい児本人にしか決められません。

この物語の主人公のように、障害のある兄弟姉妹や親との関係に悩む人は少なくありません。幼少期からのさまざまな出来事の積み重ねがあって、障害のある兄弟姉妹なんか生まれてこなければと思ってしまうことに苦しむ人もいるかもしれません。自分の人生に前向きになれない時もあるかもしれません。それでもどうかきょうだい児自身の気持ちや選択を、人生を否定せず、自分自身を大切にしてほしいと思います。

『妹なんか生まれてこなければよかったのに きょうだい児が自分を取り戻す物語』(うみこ/飛鳥新社)

透子は、大学時代からつきあっている婚約者・洸平がいる。しかし、両家顔合わせの日、洸平の母から反対に遭い、婚約破棄となってしまう。その理由は、透子の妹・桃乃にあった。
知的障害があり、トイレ・食事・入浴など、 生活のすべてに介助を必要な妹・桃乃、妹の世話を一手に担う母、療育に無関心な父。
本作は、社会福祉士資格をもち、福祉の現場での実務経験を持つ著者が、きょうだい児当事者への取材をもとに構成したセミフィクション作品です。