トヨタ自動車が先日、新型「クラウン」を発表しました。発売予定のボディタイプは「セダン」「クロスオーバー」「スポーツ」「エステート」の4タイプ。ずらりと並んだ4種類のクラウンを見て「なんて多いんだ!」と驚いたのですが、モータージャーナリストの内田俊一さんによれば、過去のクラウンにも多様なボディを持つ“ご先祖様”がいたそうです。
2代目「クラウン」を振り返る
トヨタのフラッグシップセダンともいえるクラウンがデビューしたのは1955年。その当時の乗用車市場は大半がタクシーだったことから、トヨタもタクシー車を想定してクラウンを開発した。その結果、堅牢なシャシーや観音開きのドアが採用された。
2代目クラウンは1962年にデビュー。初代が築いてきた高級車路線を継承しつつ、ボディサイズは5ナンバー枠を目いっぱいに使い切り、より低く、より幅広く、より長いクルマになって登場した。まるでアメリカンコンパクトカーのようなデザインをまとい、なおかつ大型化した理由は、1959年ごろから矢継ぎ早に登場してきたクルマたち、特に日産自動車「セドリック」やプリンス自動車工業「グロリア」にシェアを奪われ始めた結果として、伸びやかなデザインが採用されたためでもある。初代に比べると大幅にモダナイズされた印象だ。
ここであえて2代目クラウンを取り上げるのには理由がある。16代目となる新型クラウンと同じく、2代目クラウンも多彩なボディタイプを持つクルマだったのだ。
2代目クラウンには「セダン」、「カスタム」(ステーションワゴン)、「バン」(商用車)、「ピックアップ」に加え、8気筒エンジンを搭載してボディをワイド化した「エイト」というボディタイプまであった。クラウンカスタムの派生車だったバンと荷台を持つピックアップは「マスターライン」と名付けられていたが、デザインを見ればまさにクラウンそのもの。より細かく見ると、ピックアップにはシングルピックとダブルピックがあるので、厳密には6つのボディバリエーションになる。
先程、2代目クラウンが想定したのは「アメリカンコンパクトカーのようなデザイン」だと書いたが、特にカスタム・バンは、まるで当時のアメリカのステーションワゴンのような雰囲気だ。リアゲートは下にヒンジがあり、手前に開くタイプだった。その上にあるウインドウは外からキー穴にキーを差し込むことで、電動で上下できる仕組み。利便性にも気を配った1台だったことがわかる。
このようにクラウンは、初期の頃でもユーザーニーズを横目に見ながらさまざまなボディタイプを展開していたのである。